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リンは朝、料理を作ってリアルと食事を共にし、リアルが異界の図書館へ行くのを見送った後、一人で居間で背もたれの心地良い一人がけ椅子に座っていた。うつらうつらとした頭の中で、リアのことが頭に浮かんだ。今は何をしているのだろうとふと思った。それは今日だけでは無かった。リアが旅立ってからは、一人の時にそっと思慕が心に忍び込んだ。今日はリアに施した魔術の跡は消えているので、リアから愛情が届けられることはない。リアが仕事から城に帰るのは予定では後半月だった。長いな、とリンは思った。
リンは足元を意識した。足には、リアと通じることができるアンクレットがある。今撫でたら、リアの仕事の邪魔にはならないか、と思案した。夕方まで待つ方が良い、と頭では思ったが、今伝えたい、という思いの方が強かった。思慕の霧は濃かった。
リンは椅子の背もたれから離れ、左足首に手を触れた。アンクレットを優しく撫でる。魔力がリアに伝わっている感触があった。手のひらでそっと撫でると、指先で銀の輪をなぞった。リンはそれ以上は自制した。リンは、リアに心を伝えることができて、気分が晴れた。
リアは戯曲を作っているバラ族の血を引く劇作家の家に訪れていた。本が完成したらリアの勤める異界の図書館である塔の町で保管するため、本を複製させてもらうことになっていた。今日は進捗の様子を尋ねに来ていた。リアは劇作家の家の客間で主人を待っていると、急に右耳が温かくなった。心に優しさが流れ、耳に意識を向けると、温かな指で耳を撫でられる感覚がやって来た。リアは頬を染めた。そこへ劇作家が現れた。家の主人は、リアの様子を見て尋ねた。
「お待たせしました。司書様、何かありましたでしょうか?」
「すみません。僕の伴侶が寂しがっているみたいです」
リアは嬉しさを滲ませながら答えた。




