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リアは城の居間の黒い長椅子に座っていた。リンはリアが帰ってきていたことを訝しがった。帰城の挨拶をまだしていない。リアはリンに気付くとにこりと笑った。リンは吸い寄せられるようにリアの隣に座った。リンは抱きしめ、口付けして、リアを愛でたいのに、体が動かなかった。リンは落ち着くと、リアは微笑みながら挨拶をした。
「久しぶりな感じがしますね。まだ三日しか経っていないはずですよね」
「お師匠、これは……」
「夢、みたいですね。リンは以前、たまに夢で訪うと言ってくれましたが、本当に来てくれたのですね」
リアははにかみながら答えた。リンはリアの言葉で、これが夢かと気付いた。夢の割には実感がある。まるで夢で想い人と心を繋いだようだった。リンは夢なら長く続いて覚めないで欲しいと願った。
リンは思うように動けないながら、いつもの魔術でカフェラテのグラスを二つ出した。グラスはスムーズに現れた。一つをリアに渡した。リアは「ありがとうございます」とお礼を言って、飲み物を口にした。
「美味しいですね、リン。リンの味を口にできて嬉しいです」
「お師匠は、今どこにいるのですか?」
リンは自分も落ち着いて一口飲み、リアに尋ねた。
「僕は本を執筆している方に顔を合わせた後、今、西大陸のアイルラザンに足を伸ばしています。港町で、今年のチェスに使われる大きな船を見ました。リンも、チェスが始まったら、夢で舟が戦っている所を見ると思います。リンの創ったチェスが今でも続いているのは、楽しいですね」
「リア、今年のチェスのことで、話したいことがあります」
リアは落ち着いて微笑んだ。
「そうですか。僕が城に帰ったら聞きますね。ここではたぶん忘れてしまうと思います」
リンはまた夢であることを忘れていたことに気付き、再び落ち着いた。
リンはリアの椅子に置いた手を目にした。自分の手を重ねてみようとした。手は動き、リアの手の温かさが感じられた。リアは頬を染めたようだった。リンは手を握ろうとした。しかし手に力が入らず、思うように動かなかった。リンは夢だから仕方が無いと思いながら、リアの手の熱だけ大切に受け取った。リンは夢ということで、本音をこぼした。
「私はリアの帰城を待ち望んでいます。寂しさを覚えています。早く帰ってきて下さい、リア」
リアはにこりとしながら顔に陰を作った。
「僕もです。すっかりリンと一緒にいることに慣れて、離れている寂しさを思い出しました。リンの時間を独り占めできたらなぁと欲が深くなりました。僕の仕事はまだ続きますが、たまに夢で顔を見せてくれたら嬉しいです」
「またリアの夢を訪いましょう……」
リンは夢から覚めた。隣にはリアルが眠っていた。
リンは以前リアが朝起きた時に、友人と仲を深める夢を見たことを謝っていたことを思い出した。夢は心地良く、ばつの悪さがあった。まだリアルは目が覚めていなかった。リンはしばし、リアの夢の名残に心をひたすことを自分に許した。




