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夜の食事が終わり、リアルは入浴に行き、リンはリアルの部屋で待っていた。
一人でいる間、ふと今日演奏したピアノの曲が頭に浮かんだ。子守唄のメロディーが、ヴァイオリンの響きに変わった。混線した音色は、心の底からふっと、城にいない旅人のことを呼び出した。リンはそっと寂しさに誘われた。ここはリアルの部屋である。思慕は場違いであった。それでもリンはひととき、リアへの想いにたゆたった。その心をしまおうと思った時、ドアが開いて、緑衣の人が姿を見せた。リンは眼を細めた。
「どういうつもりですか、リアル?」
リアの姿をしたリアルが冷静にリンを見ていた。
「ちょっとした出来心ね。リンが望んでいるのかと思って」
「私はそのままでは、リアルを抱きしめることはできません」
「誰に遠慮をしているの、リン?」
リンは強く言った。
「リアルとリアにです」
「そう。でも、私はリンが誰を想っていても、大丈夫よ。まぁ、このままで抱かれるのは嫌だけど」
リアルはさっと、元の姿に戻った。
「ちょっと知りたかったのよね。これは私が確認したかったことだから、悪く思わないでね」
「リアルは何を知りたかったのですか」
リンは声を落として尋ねた。リアルは軽く、重たいことを答えた。
「帽子屋がリアと会っている時、どういう顔をしているか、ね。これから偶然見かけるより、先に知っていた方が、私はいいと思ったのよ」
リンは言葉を返せなかった。リアルは続けた。
「大丈夫よ、リン。リンが私を裏切らないのは分かっているから。リンも私が裏切らないことは知っているでしょ? 気分は直った?」
リンは、リアルにも三人で同居することに覚悟がいることを知った。リアルは複婚に適応しようとしている、それはリンへの優しさのためだった。リアルはリアとは違って、知っている方が安心する場合があるのだと、リンは確認した。リンは答えた。
「私はリアルの望むやり方に従います」
リアルはワイングラスを二つと赤ワインを現した。
「私の休日は短いわ。晩酌に付き合ってよね」
「ええ」
リンは機嫌を直し、魔術でワインをグラスに注いだ。




