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リアルはケーキを食べ終わると、何げない雰囲気でリンに尋ねた。
「リアとの関係はどう?」
「聞きたい、のですか?」
リンの鋭い眼がリアルを見つめた。真意を確かめるように。リアルは視線の鋭さを受け流した。
「そうね。野暮かも知れないけど、私は知っておくのも悪くはないと思うわ。『チェス』が始まったら、城の中は三人になるかもしれないのだから」
リンは眉を寄せて息を吐いた。リアルは、リンは相手にもう一人の伴侶の影を見せないことを知っていた。それは西大陸にいた頃から同じだった。器用である。それがリンの愛情の示し方だった。リアルはそろそろそれを崩しても良いと判断した。リンは答えた。
「リアルが良いと言うなら言いましょう。しかし、私はリアルを失うのは嫌なのですが、それでも良いのですね」
「いいわ。夫婦でしょ?」
「夫婦にも色々あります。全てを話すのが夫婦とも限らないでしょう」
「そうね。でも私は話を聞いて乗り越えるくらいはできそうだと思っているわ。それだけ長い付き合いのつもりよ」
リンはリアルの気の強さに負け、閉ざした情報を開いた。
「リアルを傷付けたくないことを前置きして言います。私はリアと愛し合っています。私が浮かれ過ぎているのでしょう。よく不安を伝えられたりしています。私はそれを含めてリアが可愛くて仕方がありません。まだ結婚生活は短いですが、今と同じようにずっとリアを大切にしたいです」
「そう。お熱なのね」
「リアルとの熱も冷めていません」
リンはリアルのさらりとこぼした言葉に、毅然と返した。
「そうね。知っているわ」
「リアルはかけがえのないパートナーです」
リンは念を押すように、強く言った。
リンは、リアルに話したように、リアにも同じようにリアルのことを話すのはまだ時期が早いと思っていた。リアの二千年間で深まったリンとリアルの関係への拒絶感は大きかった。リアはいつでもリンがまた出奔してしまうことを恐れていた。リンはリアと接する時は、できるだけリアルのことは触れなくて済むように過ごしていきたかった。
リンの思惑を読んで、リアルは言った。
「それでも三人で暮らすことになるなら、リアも慣れるんじゃないかしら」
「リアルは平気なのですか?」
「私? そうね、慣れなかったら居酒屋で愚痴をこぼすか、帽子屋に直談判するわ」
リンは、リアルが言葉ほどに強くないことを知っていた。リンは眉を寄せ眼を細めた。リアルは紅茶を飲み干した。
「帽子屋は私とリアには、これからのことを考えるとどんな距離でいてほしいの?」
「それぞれが顔を会わせなくても過ごせることです。私は二人と結婚しましたが、リアルとリアは結婚した訳ではないので」
リンも紅茶のカップを空にした。
「そうね。分かったわ。さあ、食べ終わったなら、リンも洗い物を手伝って」
リンはカップを置き、二人はリアルの台所へ行った。




