↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/96

26

夕食後、リアはリンを私室へ誘った。


「今日は話し込んで疲れましたね。これから僕の部屋で飲み物を飲んで落ち着きませんか?」


リンは微笑んだ。


「そうしましょう」


二人は食後に飲んでいた白茶を持って、リアの部屋へ行った。二人は部屋に着くと、リアは寝台に座り、リンは隣に並んだ。


「ずっと聞きそびれていましたが、リンは今何才なのですか?」


リアの質問に、リンはゆっくりと説明した。


「私の聖杯城での時間の流れは父の時間軸と同じです。西大陸にいた時、約百年年をとっていますが、姿は二十代で止まっています。聖杯城では、リアと同じように二千年で約五年半時が進みます。しかし体感では、西大陸にいた時と時の進み方は変わっていません。二千才でもありますが、体の年齢は、西大陸にいた時の二十五才に、二千年を足した三十才といった所でしょうか」


「それでは、僕と同じ時の流れなのですか?」


「おそらくその通りでしょう」


リアは顔を綻ばせた。


「一緒に年をとれるのですね」


リンはリアの経てきた別れのことを思った。


「お師匠は同じ時間の流れではない西大陸に住む知己と別れることが多くて悲しい思いを積み重ねているでしょうが、私はリアと共に生きることができます。私はリアを長く置き去りにして他界しないつもりですよ」


「ありがとう、リン」


リアは少女のように純粋に喜色を浮かべた。


「実は二千年前の旅の時に、僕はリンにしたいことがあったのですが、自分の心を隠してしまっていたことがあります。今させて下さい」


リンはリアがいたずらを始める子どものように笑うので、眼を細めた。


「何かありましたか?」


リアは静かにリンの肩に腕を回して抱いた。


「満月の夜、フェアリーチェスの町でリンが僕を信用してフェイさんのことを喜んで語ってくれた時、僕はリンを抱きしめたかったんです」


リアの表に出した愛情表現に、リンは心をリアに預けた。温かい温泉に二人で浸かったように、ぽかぽかと緊張を解いた。リアはささやいた


「一緒に生きられて嬉しいです、リン」


「年を取ってもここに居て下さい、リア。私は離れません」


「もちろんです。聖杯城は僕の家です」


リアは体を離すと、小さくあくびをした。


「今日は疲れましたね」


「また一緒に舟に乗って異空間の境に行きませんか? 私はあの場所が好きなのです。リアとなら一緒にいたいです」


それは自分に命を預ける、という意味を察し、リアはリンの新しい愛情表現に困り、共犯者になったような喜びが少し沸いた。リアはもし嫉妬と独占欲が重たくなったら、この先、舟の上でリンを独占できる暗い喜びを覚えることになるかも知れない、と思った。自分の愛情の攻撃的な二面性に注意し、それも仕方ないと認めた。リンの愛情表現は、断れない甘美さがあった。


「リンは西大陸に戻りたいのですか?」


リアは暗い気持ちを追い払い、真っ当な質問をした。リンは眼を細めて微笑んだ。


「アーサ様が生きていた頃は、お仕えし続けて、子孫を見守る役目をしたかったです。今はリアと共に旅をしたいです。私は境界を越えるように試すことが昔から好きでした。消えることを望み、消えないでいることに満足感を得たいのです」


リンは旅していた時によく闇の中で休んでいたので、リアは何となくリンの消えることを望んでいる、というのが分かった。リアは毅然と言った。


「僕はリンの望みであっても、リンが消えてしまうことからは守りたいです」


リンは口元を綻ばせた。


「そうですね、リア。リアは私のそばにいて、静かに見守ってくれました。リアは闇の中で、私を繋ぎ止めてくれる方です」


リンはリアの手に手を重ねた。


「私に魔力の使い方を教えて下さった時からそうでした。『アルビノの魔術師』の名が世間から良い人として伝わったのは、リアがお師匠になって下さったからです」


「リン、僕はリンがいなくなってしまうことを恐れています」


リアは再びリンをゆっくりと抱きしめた。リンの服を掴む時のように、リンが離れないように腕に力を込めた。リンはリアの背に手を回し、背を撫でた。


「本当はリンが心の隙間が空かないようにしたいのですが、僕はリンの消滅願望に寄り添います」


リンは手をリアの頭に移し、髪を撫でた。


「その時は、舟の上で口付けをしたいのですが、宜しいですか? 私は愛する人に私の存在を溶かして欲しいのです」


リアはその意味を想像した。舟が少しでも前へ進めばリンは消える。その状態で睦みあうことを求められていた。リアはリンに応えた。


「ひととき僕に命を預けられても、僕はリンを大切にしながら愛情に応えます。リンが望むことは、僕も一緒にします」


リンは笑みをこぼした。赤い目は細められ、暗く輝いた。リンは一言言葉を置いた。


「約束ですよ」


リンはリアの首筋に顔を寄せ、耳の下に唇を付けた。

pixivにR18の続きがあります。


闇の中

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=29209803

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。