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リアとリンは床を離れ、いつものように一緒に朝食を摂った。リンは食事が終わると、リアに尋ねた。
「今日は何か予定がありますか、リア?」
リアは、リンに何となく真剣な雰囲気を感じた。リアは答えた。
「大丈夫です」
「それでは、今日は湖に舟を浮かべて話しませんか?」
「はい、分かりました」
リアは頷いた。
リアとリンは城を出ると、城の前の湖に小舟が近づいた。二人は舟に乗った。静かに進む舟は、西大陸の方へと近付いた。リアはその行き先に慌てた。
「リン、このまま行くと、聖杯城の異空間から出てしまいますよ」
リンは穏やかに笑った。舟はピタリと止まった。
「リア、私は時々異空間の境界まで舟を進めて、そこで舟を風に任せる散歩をするのです。闇の中で川の上で眠ることと同じです。もしリアがこの先を進みたかったら、リアは聖杯城の管理者の魔術で舟を進めて下さい。私はリアに任せます」
リアはリンが何を言おうとしているのか、よく分からなかった。ただ、重たい信頼を告げられていることが分かった。
「リン、僕はリンの気持ちを受け取ると、優越感を覚えてしまいます。いつも、『お師匠なら良いです』と言ってくれる言葉は、一人だけ特別なのだと思ってしまいます」
リアは俯いた。リンは真剣な眼差しでリアを見つめた。
「私はそれが望みです。私はリアへの愛慕をどうしたら伝えられるのでしょう?」
リアはリンが腹を割る話を望んでいることを感じた。舟はゆらゆらと小さく揺れた。リンは続けた。
「リアはどうしていつも私への気持ちを控えようとするのですか? 話を聞かせて頂けませんか?」
リアはリンの気持ちが温かいことを感じた。リアはその温かさをこそばゆく思い、身を預けることにした。
「リン、僕はリンが二千年間離れていた時、リンとの関係が変わることがないと思いながら、僕が何か悪いことをして嫌いになったのかと思い、心が沈むことを繰り返しました。リンはリアルを選んで、もう近づくことができない所へ行ってしまったと思っていました。僕も結婚とはどういう物か分かっていなくて、他人が触れられなくて、触れてはいけない神聖な関係だと考えていました。
二千年間、もしリンに会うことができても、僕がリンを好きでいるままだと、伴侶を持つリンに迷惑をかけてしまうので、リンと距離を空けなければならないと覚悟をしていました。僕はリンと友人のままでも、リンと会えるだけで満足しなければならないと決めていました。
でも逆に、リンが僕と恋人だった頃を忘れていなければ、リンにとってリアルが唯一だった隠棲の時を上書きして、自分もリンが好きであることを我慢しなくていいと欲を夢見ることを繰り返しました。恥ずかしいですね。二千年間、リンと恋人だった頃の睦みあう夢を何度も見ていました。夢でリンに会える日は、嬉しくて寂しかったです。できたら、リンも僕が夢に現れてくれていたらなぁと思っていました。僕がリンの大切な人だったらいいのにと願っていました。もっと正直に言うと、リンは恋人を複数持つことは大丈夫なのですが、僕との繋がりは特別であったらと心の隅で望んでいました。リンが西大陸にいた時代に、リアルが現れた時、すっかりリンの恋人はリアルだと世の中でささやかれてしまい、リンが遠くに感じていました。そこから嫉妬と切なさと遠慮が始まりました。
リンとリアルの絆は、立ち入れなさを感じて辛くもあり、その絆に立ち入って奪いたい感情も沸き起こりました。唯一の伴侶リアルからリンの愛情を貰う競争心と優越感がありました。これはもしかしたら、これからも続くかもしれません。すみません。
だから、リアルと同等の権利を認めてくれた時は驚きました。リンとの関係はもっと嫉妬と優越感のどろどろとした感情で繋がることを覚悟していたので、今はどう心を整理すれば良いか少し呆気にとられています。
今はリンが僕のことを想っていてくれることが分かって、それ以上を望まなくても良いと思います。でも、ふとリアルにリンの全てを取られてしまう不安がよぎってしまいます。僕はリンが僕との恋人関係を始めた時に言ってくれたように、心地良い繋がりをずっと続けたいです」
リアは心の内を明かすと怖くなった。リンがどんな反応を示すか分からなかった。自分の気持ちが、相手の心を冷やすことを恐れた。リンは一言「抱きしめても良いですか」とリアに聞いた。リアは俯いて小さく頷いた。リンは静かにリアを抱擁した。波が止まり、風は止んだ。空間が止まり、時間が止まったようだった。二人は互いの温かさに触れ、優しい居心地を覚えた。リンは言った。
「私を怖がらないで下さい。ずっとそばにいます。私に愛情を注がせて下さい」
リンの言葉はリアの心をくすぐった。
リンは体を離すと、リアの気持ちに答えた。




