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星壊のブネリョトル  作者: 百合百合
骨星のドゥパリ
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5.


「あのね?都市の下に町があるでしょ?そう、そこ。そこに行ってくれれば、ドラゴン便があってね、都市へと普通に来れたの。それを何?なんで、ドラゴンを撃ち落として、此処に来るかなぁ。」


机を爪で叩く音が、部屋に木霊する。紺色の軍服。私の目の前の男は苛立ちながら、その薄汚れた制服の袖を捲る。


「聞いてる?いい?女のドラゴンを一人育て上げるのに、金百キロはいる。」

「……生きてるじゃん。」


目を伏せて、呟くように言えば、男が舌打ちする。


「人間を運ぶようにお願いする。人間を運ぶように命令する。後者のドラゴンは、もう番が見つからない。若くて美しい子なんだ、引くては数多だった。」

「それは申し訳ないと思っています。反省しています。」


頭を下げるも、感触が良くない。取り調べ部屋は、どうにも湿気ていて、肺にカビができそうで、あたり長居したくはない。

ドラゴンに乗って、都市に着いた瞬間に、警官が二人待ち構えており、有無を言わさずに此処へと連れてこられた。

体感としては一時間。


「反省してるように見えてないから話が伸びている。……まぁ、いい。損害分の金は持っているようだし、それだけの力を持つ者に暴れられても困る。……理性はあるようだしな。」


男はそう言うと、私のリュックから、ぱんぱんの金が詰まった袋を没収する。


「二度とこんなことするなよ。」


私は、背中を叩かれて都市へと放たれる。

レヘルちゃんは早めに出されたようで、私を待っていた。彼女は顔をパッと明るくして、笑顔になると石畳を蹴って私に駆け寄る。

私が無事なのを安堵して、息を吐く。

彼女の背後には一つの塔。石造りで、苔むした塔には、荷物を抱えた人が吸い込まれるように入っていく。石畳の道は塔から伸びて、家や店は全てが煉瓦造り。

空を見上げれば、ドラゴン達が飛び、今にも落ちて来そうな他の大地の欠片。


「……何にせよ、拘禁刑にならなくて良かった。」

「ほんとだよ、ブネちゃん。ドラゴンさんを撃ち落として都市に来るんじゃなかったね。」

「今に思えば、当然も当然のこと。浮かれてたね、私たち。」

「というか、馬鹿なだけな気がするけど。」


私は目を伏せて、自嘲気味に笑う。視野狭窄で、向こう見ず。物事を俯瞰するのが、不得意だと良く分かる。


「ま、いいじゃん。それに、最悪は全部壊して逃げればいいんだから。」

「あ、その思想は駄目だよ。敵しか作らないから。」

「……ブネちゃんに、正論言われても受け入れ難いんだよね。」

「酷い。」

「酷くない。」


にへっと、笑うとレヘルちゃん。


「これからどうする?一文なしだから、野宿なんだけど。」

「野宿でもいいけど、何も食べれないのはキツいね。」


レヘルちゃんが、パン屋を見つめながら言った。小麦のいい匂いが漂って、空っぽの胃がぴくりと動くと、何か入れろと訴える。


「誰か殺して、財布でも奪う?」

「……ブネちゃん。」

「冗談だよ、冗談。……微かにマジだけど。」


通行人が幾人も通り過ぎていく。服装はシンプルだったり、重装だったりするものの、総じて鞭を腰に常備している。剣や斧を背に、狩人然とする男たちに、私は声をかける。


「お兄さん方。荒事が金になるのなら、その伝手を教えてほしい。お金が無くてね、このままだと他人を害することになってしまう。」

「……怖いこと言うエルフの嬢ちゃんだな。」


男たちの一人。小柄で髭を蓄えたドワーフが、僅かに私から距離を取る。


「オルキス。そんな警戒するな。エルフの嬢ちゃん方。金を稼ぐなら、普通に働いた方がいいが、どうにも即金の都合があるんだろ?」


リーダー風の、双剣を腰に佩く男が、私たちに微笑を浮かべて、その目を細める。


「そうです。」

「なら、冒険者だな。」 

「そうなんだろうけど、こんなとこに魔物なんているの?」


私を天を指差す。


「普段ならいないが、今は話が違う。--空の覇者が、後継者の為に反亡橋そなつばしを解放した。冒険者が、多いのはその為だ。」


私はレヘルちゃんと顔を見合わせて首を傾げる。


「……何それ。」

「宇宙へと続く一本の橋だ。上下左右に捩れて分裂する橋には、怪鳥や化け物が棲みついている。」

「そんな橋、解放しない方がいいじゃん。」

「後継者が、星遺物を手に入れる為だ。眉唾物だが、橋の果てにあるらしい。空の覇者としては、それを息子が得て、自分を超えて欲しいんだろう。親心ってやつだな。ま、それのおかげで俺らは稼げる。」

「魔物が狩れるから?」

「そうだ。一般開放してるからな。星遺物に興味はないが、レアな魔物には興味がある。与夏鳥に、晦狗鳥。高く売れるのがわんさかだ。」


男は目を輝かせて言う。話の内容はどうでも良いが、どうやら金にはなるらしい。


「んで、冒険者にはどうやったらなれるの?」

「あれになるとかない。魔物を狩って、ギルドに持っていけばいいだけだ。それができれば、君も立派な冒険者という寸法よ。」

「なるほど。というか、それの何処の冒険要素があるの。」

「未開の地に、魔物を倒しにいくんだ。充分、冒険だろ。」

 

男はそう言って、朗らかに笑った。


「ありがとう、お兄さん。私たちは、その橋に行ってみるよ。」

「一緒に行くか?俺らも今から行くところなんだ。」


男がそう言うと、他の男たちが瞠目して、そのリーダー格の男を睨む。


「リーダー!」

「いいだろ?旅は道連れ、世は情け。さ、行くぞ。二人とも着いてこい。自己紹介は喋りながらでも良いだろう。」


私たちはお兄さんに着いていく。リーダー格の双剣使いの名は、ソラス。斧使いのドワーフが、オルキス。盾を持ったログ。ヒーラーのハヤ。そして、補助のボルテージ。五人一組の冒険者チーム。磨かれた装備には幾つもの小さい傷があり、それがベテランの風貌を醸し出していた。

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