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第二十一話

 ライラのテレパシーのお陰で、僕とまなは、会話を楽しむことができていた。

 時々、ライラを困らせて、からかうのが僕の日課だった。

 

 そんなある日の朝、テレビから信じられないニュースが流れてきた。

 シュリが――逮捕された?

 一瞬で頭の中が真っ白になった。

 ――どういうことなんだ? つい先日、ここで話をしていたじゃないか。

   国家反逆罪? 

   まな、シュリが捕まった、どうしたらいいんだ!


 まなは、テレビのニュースを見ているが、何も理解していないようだった。

 ニュースでは、シュリがオリジン装置を地球で起動させることを初めから計画し、ラマナ代表からそのことで特別視され、アカシックレコードの次の代表に抜擢されたのではないかとの報道だった。国家反逆罪、死刑もありうると報道していた。

「ダメだ!」

 喉が焼けるように痛んだが、それでも確かに声だった。

「シンジュ?」

「ダメだ!」

 その時、目の前が急に眩しくなり、呼吸が荒くなって胸を押さえた。

「シンジュ!」

 まなは、僕の手を握って、顔を覗き込んでいる。

「先生を呼ぶわ。どこが苦しいの?」

 ――苦しい、胸が……

 すぐに医師が駆けつけた。

「血圧が急上昇したようですが、もう落ち着かれましたよ。しばらくは、彼から離れずにしっかり様子を見て下さい。カプセルの中で過ごされていたので、筋肉量もさほど落ちていませんが、少しずつリハビリをしていきましょう。ひとまずよかったですね」

 そう言うと、医師は部屋を出て行った。


「シンジュ、どう? 何か話せる?」

「……まな」

「ゆっくりでいいわよ」

 ――ゆっくりもしていられないんだ。

「……大変だ」

「何?」

「大変なことが起きた」

「えっ、何が起きたの?」

 まなは、僕の体を触りながら、

「どこか痛い?」

「いや違う」

 まなは、僕の目をじっと見つめた。そして僕は、ゆっくりと話した。

「シュリが逮捕された」

「えっ?」

「シュリを助けないと」

「シンジュ、夢をみたんでしょう?」

「違う、さっきのニュースだ」

「えっ、嘘でしょう。どうしたらいいの?」

「ライラを……」

「わかった、ライラを呼ぶわ」


 数分後にライラが到着した。

「ライラ、大変なの」

「まなさん、こっちも大変で、今日はあまり時間がとれないの」

「シュリが捕まったの」

「えっ、知っていたの」

「シュリを助けたい……」

 僕は、声を振り絞ってそう言った。

「シンジュ、話せるようになったのね」

 ライラは、僕の顔を覗き込んだ。

「シンジュ、私もラマナとシュリのことで、走り回っているところなの」

「何があったんだ?」

「地球で、ラマナが書いた本の中に、魂の覚醒方法が書かれていたとして、地球を牛耳っている奴らが、ラマナを殺そうと企んだのよ。それで、シュリが代わりに撃たれて」

「えっ、清田さんが撃たれたの?」

 まなも知らなかったようで、びっくりしていた。

「でも、すぐに治ったからそれは大丈夫。それで、奴らから地球を守るために、オリジン装置を日本で探し出して起動させたのよ。オリジン装置は、元々美しき星のものだから、勝手に地球を守るために使って、美しき星に損害を与えたということらしいの。私たちもその捜索に参加したから、アディルは今、警察から事情をきかれているかもしれないの。私は、今から地球に行ってラマナを守るわ」

 息もつかずに話すライラの様子から、事態の深刻さが伝わってきた。

「そういうことだったのか……」

 ライラは、急いで出て行った。

 まなに読んでもらった『美しき星』を手に取った。

 まだ、視界がぼやけていた。

「シンジュ、大丈夫? 目が疲れるんじゃない?」

「ああ、このくらいは大丈夫だよ」

 何度も目頭を押さえては、読み進めた。

 この本は、3000年程前に、美しき星で起きた事件と、地球の過去、そして高度な技術を持つ何者かについて書かれていた。

 あの時、僕たちが経験した例の組織と同じなのではないか?

 

 アディルとライラが来るまでの数日間の間に、僕は、リハビリを頑張っていた。何歩か歩くだけで息が上がる。

 少しずつ体を動かして、家の中を一人でも歩けるところまで回復していた。

「シンジュ、あまり一度にしない方がいいわ」

 まなは、いつも僕に気を使ってくれたが、シュリを救うために、早く動ける体を取り戻したかった。


 次の日の夕方

「シンジュ、意識が戻ったのか!」

 扉をノックしながら、アディルが大声で叫んでいる。

 僕は、自分の足で歩いて玄関の扉を開けた。

「シンジュ、よく頑張ったな」

 アディルは、僕の太もものあたりに抱き着いてそう言った。

「アディル、久しぶりだな。こんなに小さくなって、アディルおじさんと呼んでいたのがうそのようだ」

「ああ、すっかり若返っただろ」

「それで、シンジュ、シュリを助ける方法でもあるのか?」

「ああ、まずは座って話そう」

 僕は、この方法が上手くいくかどうか、やってみなければわからなかったが、この星の人の情熱にかけてみようと思った。

「それで、どうするんだ?」

「デモをやるんだ」

「デモってなんだ?」

 ライラが代わりに答えてくれた。

「アディル、デモっていうのはね。大勢が集まって行進して街の人々に訴えるの。日本でも時々やっていたわ。政府の政策のこととかに大声で反対するのよ」

 ライラは、身振り手振りを加えて説明してくれた。

「美しき星は、いままで穏やかで問題が起こらなかった星だ。だから反対意見を言うことがなかったし、反対意見を言えるなんて思ってもいないだろう」

「ああ、この星で、問題が起こることなんて滅多にないからな」

「だから、デモという方法をみんな知らないんだ。でも、問題が起きたら声を上げるのが大切なんだよ」

「それで、どうやったらいいんだ?」

「まず、十人でも、二十人でも集められないか?」

「そうだな。十人くらいなら、アカシックレコードのオフィスに行けば、すぐに集められるよ」

「まずは、その十人でデモをしよう。徐々に人を増やしていって、メディアを動かすんだ。僕も一緒に説明しに行くよ」

「わかった。明日、九時にここに迎えにくるよ」

 そう言って彼らと別れた。

 僕はデモの場所や、訴える内容についてメモをしていた。

 すると急に、目の前が真っ白になったのだ。

 ――あっ、また倒れるのか

 そう思った瞬間、目の前に走馬灯のような映像が流れた。

 僕は、大勢の民衆の前で、大きな声で何かを訴えている。

 それは今の自分ではない、どこか別の時間の自分のようだった。

「私一人が犠牲になれば済む話だ。彼らを解放しろ」

「そういう運命なんだ……」

 ハッとして、目を開けた。とてもリアルな映像だった、あれは、一体何だったのだろうか……

 まなが僕に駆け寄って

「シンジュ、今、世界が真っ白になったわよね? 何か変なものを見たの」

「まなもか?」

「シンジュも?」

「ああ」

「何なの? まるで走馬灯のような映像だったわ」

「まなは何を見たんだ?」

「幼いころの映像。だけど、日本じゃないの。まるでこの星のようだった。その時の名前もはっきりと聞いたわ『さくら』って。でもこの星で、そんな名前の人いないでしょ?」

「いや、いるよ」

 彼女は、目を丸くして、驚いていた。


 翌日、アカシックレコード保管庫のオフィス

 ここに集まったのは、記録者12名とアディルとライラ。

 僕は、この人たちに、デモについて説明を開始した。

 人通りが多い場所でのデモとシュリたちが収監されている場所でのデモ、そしてメディア周辺でのデモを中心に行うことにした。どんどん仲間を増やしたいので、デモの場所の告知をしっかり行うことにした。

 その日の夕方、再び同じ現象が起こった。

 目の前が真っ白になり、走馬灯を見た。その映像は、昔の日本の様子で、私たち美しき星の人々が、日本人と共に仲良く暮らしていた映像だった。

 僕の側にいたまなも、同じく走馬灯を見ていた。僕と同じように、昔の日本で、違う言語を持つ者たちが共に暮らし、技術などを交換し合っていた。そんな映像だったようだ。


 翌日、僕たちは、人が大勢集まる場所に行き、デモ行進をした。

 用意した旗には『ラマナ・シュリは、私たちの英雄だ』と書いた。

 誰もやったことのない行動に、わずかな恐れが胸をよぎった。

 最初に声を出したのは、なんとライラだった。

 拡声器を使って「ラマナは、星を守った」

「シュリは、星を守った」

「直ちに釈放せよ!」

「罪のない者に罪をきせるな!」

 ライラの声は、とても小さな少女の声とは思えなかった。

 守ろうとする強い意志が、そのまま響いてくるようだった。

 その声を聞いた瞬間、僕は初めて、ライラがただの少女ではないと確信した。まるで、心の奥に直接語りかけてくるようだった。

 最初は一人、ためらいがちに声を上げた。

それに呼応するように、もう一人、また一人と声が重なっていった。

  

 町ゆく人は、僕たちの行動を見て、立ち止まり困惑した表情を浮かべた。

 そんな中、一人二人が、僕たちの作ったチラシを手に取り、自分たちもチラシを配りたいと申し出てくれたのだ。

 仲間は少しずつ増えてきていた。


 僕は、やはりまだ2時間が限界だった。後は、アディルに任せて一度家に戻ることにした。

 家に戻ると、まなが両手を広げて僕を迎え入れた。

 僕たちは抱き合い、軽く唇を交わした。

 それだけで、張り詰めていたものが少しほどけた気がした。

「シンジュ、大丈夫だった?」

「二時間が限界だな。足がもうパンパンで上がらなくなったから戻ってきたんだ」

「すぐにカプセルに入る?」

「いや、大丈夫だ」

「無理はしないでね」

「うん、わかっている」

 僕は、必ずシュリを救うと決めていた。そのために、もっと人を集める方法を考え続けた。

毎日更新予定


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