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【痛みの帝王】 〜65歳で全ての激痛を経験した男、異世界で“痛みを操る”チートを得て成り上がる〜  作者: ボルトコボルト


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第28話 幻肢痛の治癒──領主の息子と痛みの帝王

 翌朝。


 宿の前に出ようとしていたドロルたちのもとへ、商人と従者が慌てた様子で駆け込んできた。


「ドロル様……! 窮奇様……! シルク様、サリー様……!」


 商人は息を切らしながら頭を下げた。


「領主様の息子アラン様……命が助かりました!

 治療薬が間に合ったのです!」


 シルクは胸を撫で下ろした。

「よかった……本当に……」


 サリーも涙ぐみながら笑った。

「間に合ったんだね……」


 商人は続けた。


「アラン様が、ぜひ皆様にお礼をしたいと……

 屋敷にお招きしたいと仰っております。

 いかがでしょうか……?」


 ドロルは即座に顔をしかめた。


「面倒事は御免だよ。断ってくれ」


 商人は困ったように眉を寄せた。


「そうですか……アラン様は左足を失われており……

 ないはずの足が痛むと……、ドロル様達に会えば、少しは気も落ち着くかも⋯⋯」


 ドロルの脳裏に、痛みの名称と症状が浮かんだ。


「……幻肢痛。失ったはずの手足がまだそこにあるように感じられ、その幻の手足に痛みや痺れを覚える現象。電気が走るようなピリピリした痛み、針で刺されるような痛み、万力で締め付けられるような激しい感覚などがある⋯⋯」


 ドロルのスキル「ペイン」はあらゆる痛みを知る。


 商人が驚いた顔で頷く。


「はい……まさにそれです。

 症状の説明も、医師が言うことと同じで……」


 ドロルは静かに言った。


「治せるよ。

 ……仕方ない、行こう」


 シルクとサリーは驚きつつも頷いた。

 窮奇は満足そうに鼻を鳴らした。


「主殿の力が役に立つな」


 ***


 街の中心にある領主の屋敷は、豪奢で威厳に満ちていた。

 高い塀、重厚な門、整備された庭園──

 迷宮都市の領主の屋敷に匹敵するほどの規模だった。


 門をくぐると、厳戒体制の兵士たちが並んでいる。

 昨日の兵士たちとは違い、礼儀正しく、緊張感を持った者たちばかりだ。


「こちらへどうぞ」

 従者に案内され、応接室へ通される。


 豪華なソファ、磨かれた床、壁には絵画。

 窮奇は部屋の広さに少しだけ興味を示し、翼を軽く広げた。


 しばらく待つと──

 杖をついた青年が現れた。


「……来てくれて、ありがとう」


 青年は痛みを堪えるように眉を顰めていた。

 左足は膝から先がなく、包帯が巻かれている。


「アラン様です」

 従者が紹介する。


「ドロルです」

 ドロルは頭を下げる。


 アランは窮奇を見て目を丸くした。


「せ、聖獣……!? 本物……?」


 窮奇は誇らしげに胸を張った。

「儂は窮奇。主殿の眷属だ」


 アランは驚きながらもソファに座り、ドロルたちにも座るよう促した。


「本当に……治療薬を守ってくれてありがとう。

 これが礼だ」


 アランは金貨の入った袋をドロルに手渡した。

 ずっしりと重い。


 ドロルは受け取りながら静かに言った。


「……幻肢痛、治せるよ」


 アランは目を見開いた。


「え……?

 医師にも治せないと言われたんだ……

 本当に……?」


 ドロルは頷いた。


「ペイン」


 その瞬間──

 アランの表情が変わった。


「……え?

 痛みが……ない……!

 ない……! 本当に……!」


 アランは涙をこぼしながら、ドロルの手を両手で握った。


「ありがとう……!

 本当に……ありがとう……!」


 シルクとサリーも笑顔になり、窮奇は満足そうに鼻を鳴らした。


 アランは涙を拭きながら言った。


「君の力は……本当にすごい。

 迷宮都市へ戻るなら、僕も同行させてほしい。

 僕たちも護衛して欲しい」


 ドロルはシルクとサリーを見る。

 二人は頷いた。


 シルクは心の中で思った。

(領主の息子の頼み……拒否できるわけがない)


 アランは続けた。


「ドロル、君については敬語は不要だ。

 僕は君に助けられた。

 友人として接してほしい」


 ドロルは少し困った顔をしながらも頷いた。


「……分かったよ、アラン」


 アランは嬉しそうに笑った。


 こうして──

 ドロルたちはアランとその護衛隊と共に、迷宮都市へ戻ることになった。

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