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【痛みの帝王】 〜65歳で全ての激痛を経験した男、異世界で“痛みを操る”チートを得て成り上がる〜  作者: ボルトコボルト


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第27話 森の余波──痛みの帝王と静寂の行軍

 野営地には、まだ兵士たちの悲鳴が残響していた。


 地面に倒れた兵士たちは、激痛にのたうち回り、涙と汗を流しながら必死に命乞いを続けている。


「た、助けてくれ……!」

「息が……息ができねぇ……!」

「痛い……痛いんだよ……!」


 その声は、森の静寂を破りながらも、どこか弱々しく、惨めだった。


 シルクは震える声でドロルに尋ねた。

「……ねぇ、ドロルさん。

 囲んでいた五十人の兵士たち……今どうなってるの?」


 ドロルは淡々と答えた。

「ここの兵士たちと同じだよ。

 “二倍のボツリヌス菌の食中毒”で、動けずに倒れてる」


 サリーは息を呑んだ。

「五十人全員……?」


「うん。

 痛みは死ぬまで続くからね」


 その言葉に、シルクは絶句した。

 想像したのだ──


 森の奥で、五十人の兵士が苦しみ、倒れ、助けを求める姿を。


 そして、窮奇が静かに言った。


「儂が離れれば、魔獣が寄ってくる。

 血の匂いと叫び声……魔獣が好むものばかりだ」


 サリーは震えながら呟いた。

「……スタンピードにならないかしら」


 窮奇は不敵に笑った。

「その時はその時だ。

 儂は腹一杯喰える」


 商人と御者は恐怖で震え、荷物を抱きしめている。


 ドロルは新しい剣を手に取り、軽く振って重さを確かめた。

 冒険者から奪った剣よりも、リーダーが落とした剣の方が質が良い。


「……こっちの方が良さそうだ」


 腰に差し替え、馬車へ向かう。


「この状況じゃ眠れないし、縄も足りない。

 出発しよう」


 シルクとサリーは頷き、商人も震えながら馬車に乗り込んだ。


 兵士たちの悲鳴を背に、馬車はゆっくりと森を離れていく。


「うわぁぁぁ……助けて……!」

「痛い……痛い……!」

「誰か……誰か……!」


 その声は次第に遠ざかり、森の闇に飲まれていった。


 馬車の中で、シルクが震える声で尋ねた。


「……あの人たち、どうなるの?」


 窮奇は淡々と答えた。


「儂が離れれば魔獣が寄ってくる。

 痛みで動けぬ者たちが、魔獣に襲われぬはずがない」


 ドロルも静かに言った。


「痛みは死ぬまで続くからね」


 シルクは絶句し、サリーは唇を噛みしめた。


「……自業自得だ」

 窮奇が言う。


「自業自得だね」

 ドロルも同じ言葉を重ねた。


 その後の道中は驚くほど静かだった。

 窮奇が並走しているため、魔獣は一度も姿を見せない。

 まるで街道より安全な道を進んでいるかのようだった。


 そして──

 街に到着した。


 中規模の、どこにでもあるような街。

 しかし今の彼らには、どこよりも安心できる場所だった。


 商人とは翌朝、帰りの待ち合わせをすることになり、

 商人は急ぎ治療薬を持って領主の屋敷へ向かった。


 ドロル、シルク、サリーの三人は冒険者ギルドへ向かい、

 護衛依頼で来ていることを告げ、

 道中で起きたことを報告した。


 受付では対応できず、ギルマスへ案内される。


 アンドレの裏切りとドロルのスキルは伏せ、

 窮奇の了承のもと、

「窮奇が兵士を撃退した」と説明した。


 ギルマスは深刻な顔で頷き、

 従魔が泊まれる宿を紹介してくれた。


 宿に向かい、宿泊の予約を済ませ、

 夕食を三人と一匹で取る。


 食事の途中、シルクが静かに尋ねた。


「……トルアの食中毒って、ドロルさんのスキルなの?」


 ドロルは正直に頷いた。


「うん。

 命に別状はないけど……

 護衛中は“二倍の食中毒の痛み”が続く」


 サリーは目を丸くした。


「ずっと……?」


「ずっと」


 シルクは深く息を吐き、

「……あなた、本当にとんでもないスキルを持ってるのね」と呟いた。


 窮奇は満足そうに笑った。


「主殿は痛みの帝王だ」


 その言葉に、ドロルは苦笑いを浮かべた。

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