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【痛みの帝王】 〜65歳で全ての激痛を経験した男、異世界で“痛みを操る”チートを得て成り上がる〜  作者: ボルトコボルト


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第26話 森の断罪Ⅱ──五倍の痛みと崩れ落ちる権威

 森の空気は、焚き火の明かりに照らされながらも張り詰めていた。


 武装した兵士たちが野営地を取り囲み、リーダーの男は下卑た笑みを浮かべていた。


「ガキが剣なんか握ってんじゃねぇよ」

 リーダーはドロルを指差し、鼻で笑った。


「聖獣使い? 笑わせんな。

 お前みたいなヒョロいガキが、俺たち兵士様に勝てると思ってんのか?」


 兵士たちも下品な笑い声を上げる。


「腰抜けじゃねぇか!」

「剣もろくに振れねぇだろ!」

「聖獣の威を借りるだけの雑魚だな!」


 シルクは怒りで震えながらも、ドロルの前に立とうとした。

 サリーも唇を噛みしめ、杖を握りしめている。


 しかし──

 ドロルは平然としていた。


「……とても真っ当な兵士には見えないな」


 その静かな言葉に、兵士たちは一瞬だけ眉をひそめた。

 だがすぐに、リーダーが怒鳴り声を上げる。


「やれ! ガキから殺せ!」


 兵士たちが一斉に突進してくる。

 剣が光り、鎧が軋む音が森に響いた。


 ドロルは静かに息を吸った。


「食中毒……ボツリヌス菌。

 ──痛みは二倍だ」


「ペイン」


 兵士たちの身体が一斉に硬直した。


「ぐっ……!? な、なんだ……!」

「体が……動かねぇ……!」

「息が……でき……っ……!」


 ドロルは淡々と説明した。


「ボツリヌス菌はね、神経を麻痺させる。

 呼吸が苦しくなり、筋肉が動かなくなる。

 視界がぼやけて、立つこともできなくなる」


 兵士たちは次々と地面に倒れ、痙攣しながら苦しみ始めた。


「ひっ……ひぃ……!」

「助け……助けてくれ……!」

「息が……息が……!」


 その惨めで無様な姿に、シルクとサリーは息を呑んだ。


 商人と御者は恐怖で震え、窮奇は冷たい目で兵士たちを見下ろしている。


 リーダーは腰を抜かし、尻もちをついた。


「な……なんだよこれ……!

 魔法か!? 呪いか!?

 やめろ……やめてくれ……!」


 涙と鼻水を垂らしながら、必死に命乞いを始める。


「た、助けてくれ……!

 俺は悪くねぇ……!

 命令されただけなんだ……!」


 ドロルはゆっくりと歩み寄った。

 新しい剣を腰に差したまま、静かにリーダーを見下ろす。


「……あんたは許せないね」


 リーダーは震えながら首を振った。

「ち、違う……違うんだ……!

 俺は……俺は……!」


 ドロルは静かに言った。


「出産!⋯⋯五倍だ」


「ペイン」


 リーダーの身体が跳ね上がった。


「ぎゃああああああああああああああああ!!」


 森に響き渡る絶叫。

 兵士たちが恐怖で後ずさり、シルクとサリーは震えながら見守る。


 ドロルは淡々と説明した。


「出産の痛みはね、骨盤が広がり、筋肉が裂けるほどの痛みだ。人によっては気絶するほど強い。

 ……元々出産の痛みは知らないけど、痛みは五倍だからね。想像もできないよ」


 リーダーは地面に転がり、股関節を押さえて、足を開きながら、のたうち回った。


「やめ……やめてくれ……!

 死ぬ……死ぬぅ……!

 助け……助けて……!」


 涙、涎、鼻水、汗。

 すべてが混ざり、地面に広がっていく。


 兵士たちは痛みで震え、誰も近づけない。

 商人は荷物を抱きしめ、御者は膝をついて震えている。


 シルクは震えながらも、ドロルの背中を見つめた。

 サリーは涙をこぼしながら、必死に息を整えている。


 窮奇は不敵な笑みを浮かべ、翼をゆっくりと広げた。


「主殿。

 この者たちは、己の悪行が跳ね返っただけだ。

 儂は主殿の判断を支持する」


 森の空気は、静かに震えていた。

 五十の影は崩れ落ち、権威は粉々に砕け散った。


 そして──

 夜はまだ終わらない。

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