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勇者パーティと魔王軍でのバイトを掛け持ちしていたら、いつの間にか最強になっていた件  作者: エース皇命


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第9話 エルフの美人師匠からも溺愛されている件

「ついに……ついにやったわ!」


「おめでとう、アイシス」


 期末試験の結果発表。

 掲示板にある自分の名前を見て、飛び跳ねながら喜ぶアイシス。


 ついに彼女は、試験の総合成績で1位を獲ることができたのだ。


 10科目のうち、7科目でレブルに敗れているが、他の3科目で満点を取ってレブルを突き放したことにより、なんとか総合で1位を奪い取った。


 嬉しそうなアイシスを見て、笑顔で拍手を送るレブル。


 だが、そんなレブルの行動も、アイシスには余裕のアピールに映った。


「もしかして、手を抜いたとかじゃないでしょうね?」


「まさか。僕も試験の成績は死活問題なんだ。今回はなんとか2位に落ち着いた良かったよ」


 レブルは高い成績を収めることで学費がある程度免除されている。


 だからこそ、試験というのは彼にとって大勝負だ。

 特に試験前の2週間は、夜遅くまで試験勉強に励んでいる。


「今回1位じゃなかったから、学費の免除額が減るとか……そういうわけではないのよね?」


 死活問題という言葉(ワード)を聞いて、急に不安になったのか。

 アイシスは遠慮がちに質問する。


「それはないよ。条件は学年上位3位以内に入ることだから」


「良かったぁ……って、別にあんたの学費を心配してるとかいうわけじゃ――」


「わかってるよ」


 穏やかな笑みで流すレブル。

 彼の優しさから来る微笑みだったのかもしれないが、アイシスにはまたもこれが余裕アピールに映る。


 せっかく1位を奪い取ったというのに、そこまで嬉しくなくなってしまった。


「今回の結果が悔しいなら、次の定期試験ではまた1位を奪還することね」


「そうさせてもらおうかな」


 プイッと背を向け、アイシスはレブルのもとを去っていった。


 講義室に残されたレブルは、彼女がいなくなったことを確認すると、途方もなく大きな溜め息をつく。


「ダメだ。学費が上がる」


 学年上位3位以内に入る条件。

 これは嘘だ。


 実際は学年1位を獲らなければこれまでのように学費のほぼ全額免除はもらえない。無論、2位という成績なので、学費の75%程度は免除してもらえることになっているが。


 ――勇者パーティのバイトがなくなったことは痛いなぁ。


 数日前、彼はシャドウとナディアに()められ、もう勇者パーティに参加できなくなった。


 実質、理不尽な追放だ。


 本来シャドウらに対して怒り、復讐心を抱くべきなのだろうが、レブルの中にそんな黒い感情は生まれていない。


 レブルは自分のことを実力不足だと感じていた。

 ホークやカリーナは自分を過剰評価していると、本気で思っていた。


 だから、勇者パーティを追放されてほっとしたのかもしれないと、レブルは考える。自分には荷が重かったのだ。勇者パーティでの仕事は。


師匠(マスター)に相談してみようかな」


 あまり頼りたくはないが、こうなってしまっては迅速に稼ぎ口を増やさなくてはならない。


 魔王軍でのシフトを増やすのは……心身に相当な負荷がかかる。


 ――師匠(マスター)も、こんな情けない僕に呆れるだろうなぁ……。


 自分を嘲笑いながら、レブルは席を立った。




「レ、レブル? もしかして、また私と暮らしたくて戻ってきたのか?」


「いや、そういうわけではなくて――」


「無論、構わない。実はレブルが出ていってから調子が悪いというか……一緒のベッドで眠らないと気が済まないというか……ん? 今、違うと言ったか?」


 静かに頷くレブル。


 それを見た瞬間、彼の師匠は顔を紅潮させ、慌てて視線を逸らした。


「……そ、そうか」


 レブルが来ているのは、5年ほど前まで暮らしていた王都中心部の一軒家。


 それなりに豪華な造りになっていて、余裕で10人程度は住むことができるだろう。

 だが、今ここにはレブルの師匠、ベルタ・クリスタンテがひとりで暮らしている。


 ベルタはエルフの国出身のハイエルフで、ここ王都では数少ないSランク冒険者として知られていた。


 さすがはエルフ族と称賛される圧倒的美貌。

 整った顔立ちに、通った鼻、ツリ目がちの金眼。そして彼女のトレードマークといえば、背中まで綺麗に伸びた金髪だ。


 女性にしては長身の170センチ。

 弟子のレブルよりも背が高い。


師匠(マスター)、また僕と暮らしたいんですか?」


「い、いつ私がそんなことを……いや、正直に言おう。暮らしたい! 暮らしたいとも! 私はレブルが一緒に暮らしてくれるのなら、なんでもする!」


「そこまで……」


 どうやら家に押しかけたのはそこまで迷惑ではなかったようだ。

 ひとまずレブルは安心する。


 だが、話が徐々に変な方向に広がろうとしているので、早めに本題を伝えた方がいいのかもしれない。


「実はいろいろあってお金に困っているので、新しいバイト先を紹介してくれないかと――」


「お金に困っている? それなら、私と一緒に暮らせば解決だ」


師匠(マスター)の厚意にこれ以上甘えるわけには……」


 レブルにとって、ベルタは命の恩人であり、生きる上で必要なことを全て教えてくれた先生であり、戦い方を教えてくれた師匠だ。


 5年前にこの家を出てひとり暮らしを始めたのも、ベルタにこれ以上の迷惑をかけないため。


 彼女は迷惑などではないと一緒に暮らし続けることを提案したが、レブルの気持ちを尊重して独り立ちさせたのだ。


 数ヶ月に1回程度帰ってきてはいるが、徐々にその頻度も低くなってきている。


「わかった。私としてはレブルが離れていってしまうことが寂しくてしょうがないが……」


 歯を食いしばり、美しい顔をほんの少しだけ崩す。無論その程度で損なわれる美貌ではない。


「新しいバイト先か……しかし、ただでさえ過酷な勇者パーティでの仕事に加え、新しいバイトを掛け持ちするなど……」


 ベルタはレブルが勇者パーティでバイトしていることは知っているが、魔王軍からも雇われていることを知らなかった。


 それはレブルが誰にも話していないからである。

 誰よりも信頼しているベルタであったとしても、魔王軍で働いていることがバレればいろいろと問題が起こってしまう可能性を考慮してのことだ。


「実は勇者パーティを追放されたので、新しいバイト先を探してるんです」


「……は? 追放?」


 双眸を細めて聞き返すベルタ。


 彼女はレブルの実力を誰よりもよく知っている。彼が勇者パーティの連中よりも強いと確信しているくらいだ。


「いろいろあって……」


「いろいろとはなんだ! やはり私の家に住もう! むしろ住んでほしい! レブルを抱き枕にしないと眠れないんだ!」

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