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勇者パーティと魔王軍でのバイトを掛け持ちしていたら、いつの間にか最強になっていた件  作者: エース皇命


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第8話 殺されたはずなのに普通に生きている件

 シャドウとナディアは去った。


 20メートルもの深さの穴に落とされ、(ふた)までされてしまったレブル。


 哀れな金髪の少年は、ほっと一息ついていた。


「良かったぁ」


 彼にとって、落とし穴に落とされれることなど大したことはない。

 蓋をされても、下から思いっきり殴り飛ばしてしまえばいいだけだ。


 ――自分で勝手に逃げろってことだよね。


 レブルにとって、シャドウたちの作戦は甘かった。


 常人であれば絶望し、助けが来ることをただ待つだけかもしれない。だが、レブルは異常者だ。


 本人に自覚はないものの、体力も魔力も勇者並みである。


 レブルはシャドウの落とし穴作戦を、慈悲だと受け取った。

 攻撃して直接殺すこともできただろうに、穴に落として餓死もしくは窒息死を演出しようとしたからだ。


 ――この程度で死ぬわけないのに、演技が上手いなぁ。


 一気に飛び上がり、岩を吹き飛ばす。


 そしてそのまま上昇し、地上に降臨した。


「5分ぶりの地上だね」


 そう呟いて、そのまま王都に向かって歩き始める。

 レブルは方向感覚も優れていた。


 師匠(マスター)との森の中での訓練の賜物である。


 ――シャドウさんもナディアさんも、僕がまたパーティに参加することは望まないだろうなぁ。


 バイトをひとつ失ってしまったと考え、次のバイトについて考える。

 魔王軍でのバイトに専念するのもアリだと思ったが、魔王軍は時間の融通が利かないことが多く、どっぷり浸かることになるのは気が進まない。


 ――次は魔術師のお手伝いバイトでもしようかな。


 レブルは生きていなければ考えることのできない「未来」のことを想像しながら、呑気に王都の家まで帰っていった。




「ナディア! どうしたんだ?」


「レブルが! レブルが……!」


 ナディアは女優だった。


 顔を青白くさせながら、レブルの身に起こった架空の悲劇を説明し始める。


 ホークたちはダークウルフを飼っている農家と穏やかに食事をしており、シャドウの雇ったエキストラはしっかりと仕事をしていることが受け取れた。


「レブルちゃん……そんな……」


 ナディアの説明を聞きながら、絶望した表情を浮かべるカリーナ。

 彼女はレブルのことを誰よりも愛している(自称)。


 愛する弟分であるレブルが魔獣に殺されたと聞き、大量の涙を流した。


 一方、パーティの首領(リーダー)であるホークは、まったく違う反応を見せた。


「そんなはずはない」


 レブルの死について、絶対に信じようとはしなかったのだ。


 それはいきなり知らされた現実から目を背けようとしているわけではない。


「カリーナ、落ち着いたらどうだ。レブルを殺せる魔獣が、あの森の中にいると思うのか?」


「それは……」


 泣き崩れるカリーナの背中をさすりながら、優しく語りかける。


 それは元気づけるための言葉というわけではなく、純粋な質問だった。

 レブルが魔獣に殺されるはずがない。そんな簡単にやられるようなヒューマンでないことを、ホークはよく知っている。


「シャドウはどうした?」


「まだ魔獣と戦ってるけど……あ、来た」


 魔獣と戦っていたにしては、綺麗な格好だ。

 傷はナディアが治療できるとしても、服装まで綺麗にすることはできない。


 ホークはそれに気づき、無事に帰ってきたふたりに疑いの目を向けた。


 しかし、その疑念を口に出すことはない。もしかしたらふたりの言っていることは本当なのかもしれない。


 その可能性がゼロではない以上、勝手に疑って責めるわけにもいかないのだ。

 パーティのリーダーとして、人間関係に亀裂を生むようなことはしたくない。


「シャドウ、レブルは本当に――」


「あいつは死にました……残念です」


「……そうか」


 シャドウの表情は本当に(つら)そうだった。


 少なくとも、ホークにはそれが演技には見えなかった。


 後悔や怒りを抱えた、複雑な表情(かお)

 シャドウが見せたのは、まさにそんな表情だった。




 レブルを除く勇者パーティの5人は、馬車を停めていたところまで戻ってきていた。


 すっかり日が暮れ、少しずつ暗くなってきている。


「オレはしばらく森に残って、レブルをさがそうかと思う。亡骸(なきがら)だけでも見つけてやりたい」


「私も残ります。レブルちゃんは……まだ生きてるって信じたい……」


 ホークが真剣な表情で宣言し、カリーナもそれに乗っかる。


 無口のホーネットもそれに賛成した。


「もう暗いですし、やめた方がいいですよ」


「レブルは魔獣に食われたの。今頃魔獣の胃の中にいるんじゃない?」


 落とし穴が見つかってしまっては、全てが水の泡。


 証人であるレブルが生きていれば、シャドウたちの悪事もバレてしまう。それだけは避けたかった。


「それなら、オレがその魔獣を始末する」


 こうなるとホークは誰の言うことも聞かない。

 首領(リーダー)であるのだから、そもそも彼の発言力は大きいのだ。


「全員で動きましょう。あの魔獣がいたら、また仲間を失うことになるかもしれない……」


 勝手に動かれ、勝手にレブルを発見されては困る。

 実際のところ、レブルはもう穴から脱出して帰宅しているのだが、そんなことシャドウが知るはずもない。


 シャドウもナディアも、遅くまで森の中に残ることを決めた。




 翌日。


 晴れやかな空に包まれる王都。


 ビクトリア学術学園では、定期テストが始まっていた。


「レブル、今度こそわたしが勝つから!」


 テスト開始前、着席しようとしたレブルを捕まえ、宣戦布告してきたのはアイシスだ。


 いつもの光景に、周囲の生徒も安心の溜め息をつく。


 どうせまたレブルが1位だろう。

 そう誰もが思っているところだが、アイシスにはいつも以上の自信があった。


 ――学業では……学業だけでも勝ってやるんだから……!


 運命のテスト結果を知るのは、まだ数日先である。






《キャラクター紹介》

・名前:ホーク・ペレス

・性別:男

・年齢:27歳

・種族:ヒューマン

・身長:177cm


 王都最強と(うた)われる勇者パーティのリーダーで、最強の槍使いとも言われている。レブルの実力にいち早く気づき、勇者パーティにスカウトした。

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