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勇者パーティと魔王軍でのバイトを掛け持ちしていたら、いつの間にか最強になっていた件  作者: エース皇命


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第10話 転生したら美女エルフの抱き枕になるかもしれない件

 ベルタはレブルを帰さなかった。

 夜まで家に引き留めた挙句、もう暗くなったから泊まっていった方がいいと念を押して。


「ほんとにこれでいいんですかね」


「大歓迎だ。私の抱き枕になってくれ」


 普段はクールでかっこいいエルフ美女。


 そんな彼女が、レブルの前ではすっかり力が抜けてふにゃふにゃになっている。


 強い力で抱きしめられながら、眠りにつく。

 Sランク冒険者のベルタにこれだけ強く抱きしめられながら寝るのは、常人にとっては拷問だろう。


 エルフの美女から抱きしめられているというと聞こえはいいが、実際は全身をきつく縛られているようなもの。


 その先にあるのは死である。


 レブルだからこそ、彼女の抱擁に耐えられるのだ。


 甘く濃厚で満たされるような香りが、レブルの鼻に入っていく。

 風呂上がりのベルタの肌はすべすべで、スリムな体は引き締まっているのに柔らかい。


「しかしなぜ、勇者パーティを追放されたんだ?」


 耳元で優しく問うベルタ。


 最初は気を遣って深くまで触れないようにしていたが、自分の愛する弟子がバイトをクビになったと聞いて、気にならないはずがない。


 レブルに非がないことなど、最初からわかっている。


「実は――」


 レブルはベルタに抱きしめられながら、シャドウとナディアとの件を丁寧に説明した。


 シャドウは自分があっさりパーティにスカウトされたことが気に食わなかったため、自分に殺意を抱いたのはしかたないことなのかもしれない、と。

 自分を殺そうとした人間に対して優しすぎる説明だった。


「そんなことが……」


 レブルをより強く抱きながら、怒りを見せるベルタ。


 その怒りの矛先は無論、シャドウとナディアだ。


 ベルタは王都ビクトリアで数少ないSランク冒険者として名を知られている。

 シャドウとナディアもまた、最強の槍使いホークが率いるパーティのメンバーとして知られていた。


 お互い名前くらいは知っている程度の関係でしかないが、弟子のレブルがこれだけ理不尽な目に遭っていれば、師匠として黙ってはいられない。


「レブル、そのふたりは私が殺す。また勇者パーティでのバイトができるように――」


「大丈夫です」


「しかし――」


「あの勇者パーティは、僕にはレベルが高すぎたんです。自分の実力に見合ったバイト先を見つけますよ」


「何を言っている? レブルは他の誰よりも強い」


「またまた、師匠(マスター)は優しいですね」


「いやこれは本気で――」


 レブルの変に悟ったような表情を見て、溜め息をつくベルタ。


 彼は人の言うことを聞かない。

 自分の実力に関する話には特に。


 いつになったらレブルは自分の高すぎる力を自覚するのか。それは誰にもわからない。


「勇者パーティの件は、もういいんです。師匠(マスター)には何か稼げるバイトを紹介してほしいと思って――」


「稼げるバイトならある。私の抱き枕になって一晩寝るだけで、10万ユニットやろう」


 ベルタは本気で言ったのだが、レブルは冗談を言っていると受け取って相手にしてくれなかった。


 苦笑いで流しつつ、真剣な瞳でベルタを見続けている。


「……確かにコネはいくつかあるが……やはりレブルは勇者パーティでのバイトを続けるべきだ。正式なメンバーとして雇われてもいい」


「それは――」


「シャドウとかいうクズとナディアとかいうゴミはともかく、他の連中はレブルのことを心配しているはずだ。まずは彼らに自分が生きていることを伝えた方がいいだろう」


「でも、そしたら僕がシャドウさんに追放された意味が――」


「馬鹿か、お前は。私は弟子が理不尽に殺されかけたことがまず気に入らない。私のためだと思って、また勇者パーティに顔を出してくれないか?」


「……」


 しばしの沈黙。


 しばらく考えた後、レブルは小さく溜め息をつき、表情を緩めた。


「わかりました。まずは明日、シャドウさんと話をしてきます」




「あいつ、死んだのね」


「……ああ」


 邪魔者であるレブルを始末したはずなのに、晴れない表情のシャドウとナディア。


 ふたりは冒険者ギルドのテーブルで、いつものように酒を飲んでいた。

 他のパーティメンバーはいない。


「でも、死体を確認しにいったわけじゃないんでしょ?」


「そうだな」


「それじゃあ、もしかしたらまだ生きてるかも――」


「そんな希望、殺した張本人が言うんじゃねぇ」


「はぁ? 殺したのはあんたでしょ!」


「あいつを蹴って穴に落としたのはお前だ。それに、声がでけぇぞ」


「……」


 レブルを始末すれば、気分は晴れると思っていた。


 それなのに、ふたりの心にはもやがかかってしまったようで、いつまでたっても晴れる気がしない。


 モンスターや魔獣を殺したことはあれど、同じ人を殺したことはないふたり。

 殺しが初めてだったから、ここまで胸が痛むのか。


 否。


 問題は、レブルを殺したことだ。


 確かにシャドウたちはレブルが妬ましかった。

 大した実力もないのに、首領(ホーク)に気に入られ、褒められている姿を見るのが我慢ならなかった。


 しかし、レブルは悪い人間ではない。


 そんなレブルを、シャドウとナディアはふたりで殺してしまったのだ。


「やってから後悔するのって、最悪だな」


「……ほんと、最悪」


 頭をかかえ、酒に溺れる。


 レブルを殺した罪を抱えながら、勇者パーティのメンバーとして生きていく――この先ずっと、この闇を抱えながら生きていかなければならない。


「無理だ」


 そう言って、トイレに駆け込むシャドウ。

 彼はそこで、激しく嘔吐した。


 ナディアはいつもなら豪快に飲み続ける酒を遠ざけ、水を飲んで精神を落ち着けている。


 しばらくして、シャドウがトイレから戻ってきた。顔色は最悪だ。


「自首しよう」


 呼吸を整え、決意を固めるシャドウ。


 ナディアは何も言わなかったが、深く頷いた。


 しかし、その時――。


「その必要はありませんよ」


 どん底に落ちているふたりの後ろから、優しい声がかけられた。






《キャラクター紹介》

・名前:ベルタ・クリスタンテ

・性別:女

・年齢:93歳(エルフ族は長寿なのでこれでも若い)

・種族:エルフ

・身長:170cm


 最強のエルフとしても名高いSランク冒険者の美女。レブルの師匠であり、他の誰よりもレブルのことを知っている自信がある。

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