第6話 パーティメンバー2名から嫌われている件
「お待たせしました」
レブルが冒険者ギルドに着いたのは、集合時間の5分ほど前だった。
午後4時に集合するとのことだったが、この時間になってもホークとカリーナ、ホーネットは来ていない。
一方、レブルを嫌っているシャドウとナディアは先に来て、酒を飲んでいた。
なんだか気まずいなと思いつつ、レブルはふたりに挨拶する。
「いつもより遅かったな。てっきり来ないかと思ったぜ」
「街中でストーカーに絡まれていたもので」
シャドウの発言には嫌味が込められていた。
レブルはその嫌味をしっかり感じ取っていたが、面倒なことに発展しないよう笑顔で流す。
「ホークさんたちはまだ来てないんですね」
「政府から頼まれた任務があるとか言ってたなぁ。まあそのうち来るだろ」
さっきからレブルの対応をしているのはシャドウだけ。
無造作に伸ばした銀髪に、琥珀色の瞳。
左目には眼帯をしている。
不機嫌な表情でレブルの質問に答えるシャドウに対し、ナディアは黙って酒を飲んでいた。仕事の前でも酒を飲むのが、ナディアの日課だ。
「悪い、少し遅れた」
片手を上げながら申し訳なさそうにギルドに入ってきたのは、パーティの首領、ホーク・ペレス。
今世紀最強の槍使いとも言われている、王都でも高名な勇者だ。
「レブルちゃーん、待った~?」
「いや、そんなに」
「もう~、レブルちゃんったら可愛いんだから」
ホークの後ろから勢いよくレブルに突撃してくる美女がいる。
魔術師のカリーナだ。
レブルを溺愛している。
完全に弟扱いされているレブル。
「……」
弓矢使いのホーネットは、そんなレブルたちの様子を後方から静かに眺めていた。彼は基本、無口である。
「よし、全員揃ったことだし、面白そうな依頼でも受けるか」
「首領、待ってください」
「ん? どうしたシャドウ?」
「実は俺とナディアは先に来てたので、面白そうな依頼を選んでおいたんです」
「そうか! シャドウが面白そうって言うくらいなら、期待できるな」
シャドウは勝ち誇った笑みを隠しながら、ホークに依頼の紙を見せる。
その紙に書かれていた依頼は、ギルドから公式に出されているものではなかった。
シャドウが偽造した、本物そっくりの依頼用紙だった。
だが、本物か偽物かなど、ギルドに直接確かめてみなければわからない。シャドウを信頼しているホークは、あっさりとその依頼を受けることを承諾した。
「それにしても、ダークウルフ3体の討伐か。比較的温厚な種族だと聞いてたから、ギルドから討伐依頼が出るなんて珍しいな」
ホークの素直な一言に、冷や汗を流すシャドウ。
実際のところ、ダークウルフは温厚な魔獣だ。
魔獣とはいえど、ペットとして飼っている農民も多い。
飼い主に従順なところもあり、知能も高いので、自分の家畜の番犬として飼っているのだ。
そして、シャドウが雇ったエキストラというのは、ダークウルフを飼っている農民たちである。
あくまでダークウルフは陽動のためだ。ホークたちに討伐させるつもりはない。
「緊急な依頼らしいので、早く行きましょう。襲われている人だっているかもしれない」
「そうだな。その正義感、嫌いじゃないぞ」
豪快に笑うホーク。
その姿を見て、シャドウもナディアも嬉しくなる。
ふたりはホークのことが大好きだからだ。
特にナディアは、異性としてホークに恋している。いつかはホークと結婚したいと、本気で思っていた。
視線を合わせ、頷き合う。
シャドウの考えた作戦は、ナディアもしっかりと把握している。
あとは他メンバー及び獲物のレブルを嵌めるだけだ。
正式メンバー5人+臨時メンバーのレブルで、城塞都市ビクトリアを出て森へ向かう。
「馬車ではここまでしか行けないみたいだな」
「ここからは歩いていくしかないみたいです」
ホークの呟きに、シャドウが答える。
これも彼の作戦通りだ。
馬車で全員仲良く移動していては、レブルを引き離すことができない。
6人は馬車から降りて徒歩で目的地へと向かう。
歩いているのは森の中だ。
整備されていない道なので、足場は不安定である。
「それにしてもこの地図、わかりにくいなぁ」
ホークがぼやく。
彼が手にしているのは、シャドウから受け取った目的地までの地図だ。
「この地図、方角が定まってないぞ」
「確かにそうですね。これは……二手に分かれて目的地を探すしか、方法はないような――」
「いや、さすがにそれは危険だろう。みんな強いかもしれないが、森には規格外のモンスターがいるかもしれないし――」
「大丈夫ですって。首領はカリーナとホーネットと一緒に東に向かってください。俺はナディアとレブルを連れて北に向かいます」
シャドウの提案に、ナディアが力強く頷く。
「シャドウもたまにはいいこと言うじゃない」
「だろ?」
「少なくとも、あたしは賛成」
すんなり受け入れたナディアを見て、ホークが渋い表情を見せた。
ホーネットは何も言わないが、いつもホークの指示に黙って従う。
だから彼の意見はホーク次第だと考えていいだろう。
しかし、問題はカリーナだ。
「私はレブルちゃんと行きたいわ。レブルちゃんも、お姉ちゃんと一緒に行きたいっていう目をしてるもの」
レブル大好き人間であるカリーナが、そう簡単にレブルと離れることを受け入れてくれるはずがない。
シャドウはナディアに目配せする。
「カリーナ、今は仕事中なの。自分勝手な発言は慎んで」
「……」
23歳のナディアは、魔術学園を首席で卒業したエリートであり、カリーナの先輩だ。
カリーナはそんなナディアに逆らったり意見したりすることができない。
今回の作戦は完璧である。厄介なカリーナも、ナディアの力で封じることができるだから。
言い返すことができないカリーナを見て、シャドウは薄気味悪い笑みを浮かべた。その様子は誰にも見られていない――はずだが、レブルにはしっかりと見えていた。
――なんか嫌な予感がするなぁ……。
自分がシャドウとナディアに嫌われていることはよくわかっている。
理由は知らないが、なんとなく気に食わないんだろうと納得していた。
レブル本人はわかっていても、ホークやカリーナはそんなことまで知らない。二手に分かれるというこの案が、レブルを始末するためのものだと、気づくはずもない。
「レブルはどうなんだ? これでいいと思うか?」
最後の確認という形で、ホークがレブルに聞く。
シャドウは他のメンバーに見えないよう、脅すような瞳でレブルを見た。
それを見て、レブルは全てを悟る。
「いいと思いますよ、これで」
――僕、明日まで生きられないかもなぁ。
《キャラクター紹介》
・名前:カリーナ・リストン
・性別:女
・年齢:18歳
・種族:ヒューマン
・身長:162cm
勇者パーティの魔術師であり、年下のレブルのことを溺愛している。超がつくほどの変態で、レブルにセクハラばかりしている。




