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勇者パーティと魔王軍でのバイトを掛け持ちしていたら、いつの間にか最強になっていた件  作者: エース皇命


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第5話 同じ学園の美少女にストーカーされている件

 アイシス誘拐事件から数日が経過した。


 授業が終わると、すぐさまレブルは学外に飛び出し、バイト先である勇者パーティのもとへと向かう。


 週に数回、彼は放課後に勇者パーティの補助(サポート)要員としてお金を稼いでいた。

 正式なメンバーでもないのに、モンスターの討伐報酬はほとんどレブルがもらっている。


 報酬はどうしてもレブルがもらってくれ、と首領(リーダー)のホークが言い張るからだった。


「後ろをつけてるのはわかってるよ」


 今日は冒険者ギルドでの待ち合わせだ。


 ホークのパーティは、モンスターの討伐依頼を受けるため、時折冒険者ギルドにも顔を出している。


 ギルドへの道中、レブルは突然立ち止まった。

 後ろを振り返ることはない。


「気づいてたのね」


「バレバレだったよ」


「そ、そんなはずないわ」


 レブルの後をつけていたのは、数日前に助けられたアイシスだ。


 アイシスの尾行は完璧なものとは言えず、周囲から怪しまれるほどバレバレのものだった。


 レブルでなかったとしても簡単に気づくことができただろう。


 顔を赤く染め、機嫌を悪くするアイシス。

 バレたならしかたないと、堂々とレブルの隣に並ぶ。


「わたしも一緒に行くから」


「僕が今からどこに行くのか知ってるのかい?」


「……知らない」


「だろうね」


 あの誘拐事件から、ずっとこの調子だ。


 アイシスにとって、これまでのレブルは手の届く距離にいる強力な好敵手(ライバル)だった。


 同じ学術学園の優等生。

 定期テストの結果でレブルの点数を上回ったことはないが、努力を続ければいつかは勝てる存在だと思っていた。


 しかし、先日見せた、あの強さ。


 レブルはただ頭がいいだけの少年ではなかったのだ。


 剣士顔負けの剣捌きに、格闘家顔負けの体術。

 王都最強の盗賊たちをボコボコにできるだけのパワー。


 誘拐された時、あれだけレブルが冷静だったのは、あの盗賊団に負けないだけの実力があったからなのかもしれないと、アイシスは考える。


 実際のところはチンピラと勘違いしていただけだが。


「これからバイト先に行くだけだよ」


「そういえばバイトしてるって言ってたわね。あの後もバイトに行ったの?」


「あの後?」


「わたしを王都(ここ)に送った後のこと」


「ああ、あれは別のバイト先だよ。ふたつのバイトを掛け持ちしてるんだ」


 ――ふたつのバイトを掛け持ち? そんなにお金に余裕がないのかしら……。


 ビクトリア学術学園は王国で1番の学術学園だ。

 高度な教育を受けられる代わりに、高額な学費を払わなければならない。


 だから学生は貴族などの金銭的に余裕のある者たちがほとんどだ。


 だが、レブルは貴族ではなく平民出身。成績優秀なため、学費はほとんど免除されているはずだが――。


「あんた、お金がないの?」


 本気で心配するような瞳でレブルを見つめるアイシス。


「お金ならわたしが――」


「君の親のお金だろう?」


「そうだけど……」


「僕の心配はいいよ。バイトは楽しいし」


 さらっとアイシスの言葉を流し、優しく微笑みながら手を振る。

 その動きは別れを告げる時の手の動きだった。


「話せて良かったよ、アイシス。僕は急いでるから、また学校で」


「ちょっと! 逃がさないわよ!」


 制服の袖をグッと引っ張り、逃げようとするレブルを引き留めるアイシス。


「この前にも聞いたけど、あんた、本当は何者なの?」


「そう言われても……僕はただの学生だよ」


「じゃあなんであんなに強いのよ?」


「チンピラを倒せるだけの護身術は身につけてるんだ」


 王都最強の盗賊団を一方的にボコボコにできる護身術。


 そんな言葉では片づけられないレブルの実力。

 無論、護身術と言われてアイシスが納得するわけがない。


「あの剣の腕は? どう説明するつもり?」


師匠(マスター)に教わったんだよ。あとはバ先でもよく使うし――」


「いろいろ聞きたいことはあるけど……バイトで剣を使うってどういうこと?」


「勇者パーティのバイトだよ。たまにパーティに入れてもらってるんだ」


「……はぁ? 勇者パーティ!?」


「そうだよ。今からその勇者パーティでのバイトだから、そろそろ行かせてもらうね」


「まだ話は――」


 風が吹く。


 それがレブルの高速移動によって発生した風であることを理解したのは、しばらくたってからのことだった。


 ――勇者パーティでバイト……? 聞いたことないわよ、そんなの。




 レブルがアイシスに絡まれる少し前。


 冒険者ギルドにはホークの勇者パーティに所属するシャドウとナディアが先に到着していた。


 首領(リーダー)のホーク、魔術師のカリーナ、弓矢使いのホーネットは不在だ。

 まだ集合時間よりも随分早い時間なので、ギルドに来ていなくてもおかしくはない。


「他のメンバーより先にあたしをここに呼び出すってことは、作戦の決行が近づいてるってことね」


「ああ、今日は都合がいい」


 早速酒を注文し、グイッと躊躇なく飲み始めるナディア。


 落ち着いた茶髪のショートヘアに、栗色の瞳。

 クールな顔立ちから同性からも人気のある彼女は、パーティの治癒師だ。


「エキストラも雇ってある。準備は万全だ」


 ナディアに向かって不敵な笑みを浮かべたのは、パーティの剣士であるシャドウ。


 彼とナディアには大きな共通点があった。


 ふたりとも、ホークのことを(した)っており、レブルのことを嫌っている。


 これがこのふたりの共通点だ。

 特にレブルへの嫌悪感は、ここ最近でさらに強くなってきている。その嫌悪感の根底にあるのは、レブルに対する嫉妬だった。


「ついに来たんだ、この時が。これでもう、あのガキが俺たちの前に現れることはない」






《キャラクター紹介》

・名前:アイシス・フィリシン

・性別:女

・年齢:17歳

・種族:ヒューマン

・身長:154cm


 ビクトリア学術学園の学生で、レブルの同級生。定期テストでは毎回レブルに敗北を喫している。

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