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勇者パーティと魔王軍でのバイトを掛け持ちしていたら、いつの間にか最強になっていた件  作者: エース皇命


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第37話 エルフの美人師匠が急に大胆なアドリブを入れてきた件

 作戦Cと聞き、ひとりのエルフが現場に乱入してきた。


 その美女とは、レブルの師匠であるベルタ・クリスタンテである。


「待て! 魔王ロードキングは私が始末する!」


 事前の打ち合わせ通り、魔王討伐の乱入者としての配役をこなすベルタ。


 作戦Cとは、ベルタの参戦のことだった。

 もし冷静な話し合いが上手くいかず、レブルが始末する演技も上手くいかなかった場合の最終手段である。


「レブル、戦況はどうなってる?」


「本気で殴ったんですけど、まったく効いてません」


「そうか。それも無理はない。相手は正真正銘の魔王、ロードキングだ。油断はするな」


「はい」


 ベルタがこの場所に来たのは今から数時間前。

 勇者パーティが来るのを待ち伏せしていた。


 だからこそ、自分の出番がやってきたことに少し安心していた。


「ベルタ・クリスタンテ……くっ、ま、まさか、王都最強の冒険者が俺っちを倒しにくるなんてぇ……」


 ――演技が下手なのか、こいつは。


 ベルタもレブルと同じことを思った。


 魔王ロードキングは大根役者である。その事実が発覚した。


「弟子に手を出したのは貴様か? ならば、師匠である私が――」


「手を出されたのは俺っちの方なんだけど」


 急にアドリブを入れてくるロードキング。


 大根役者のくせにアドリブを入れてくるという、最悪の俳優だ。


「そうか……しかし、レブルはこんなに傷ついて……ないな」


師匠(マスター)、魔王をよろしくお願いします」


「わかった。レブルがそう言うのであれば、私は戦う!」


 大跳躍をして、魔王の前に着地したベルタ。


 彼女の得物は槍だ。


 ホークが使う武器も槍だが、ベルタの槍の方が長くて細い。


 槍を振り上げ、穂先を魔王(ロードキング)の顔に向ける。


「これで終わりだ」


 そう言って、槍を振り下ろした。


「……」


 ベルタが槍を突き刺したのは、ロードキングの顔ではなかった。

 彼のすぐ隣の地面だ。


 作戦では、ここで躊躇なくロードキングを突き刺すことになっている。それでも魔王は死なないから問題ない。


 アドリブにしては大胆すぎる変更に、ロードキングもレブルも困惑する。


「ねえ、打ち合わせと違うけど? 大丈夫?」


 小声で聴いてくる魔王も今は無視だ。


「ホーク・ペレス、少し聞いてもらいたいことがある」


「……なんだ?」


「我々はこの魔王と敵対するべきではない。私はそれを伝えにきた」


「……」


 ベルタは元王族(ハイ)エルフの、実力ある冒険者。

 彼女の言葉を無視するわけにはいかない。


 勇者パーティの面々も黙ったまま彼女の話に耳を傾ける。


「魔王にも魔族にも様々なタイプがあり、それぞれに違う個性を持っている。ヒューマンもエルフも、それと同じだ」


 ベルタはエルフの国で暮らしている頃、ずっと外の世界に憧れていた。


 森の外には、ヒューマンやドワーフ、獣人族など、種族による隔たりのない世界が広がっている。

 そう知っていたので、エルフの国にも他種族を受け入れるようにと主張した。


 しかし、その結果として追放され、今に至る。


 セレスト王国はハイエルフとしての地位を剥奪されたベルタを受け入れてくれた。


 どんな種族であれ、どんな人間であれ、受け入れることが最終的な救いに繋がる。


 だから彼女はレブルを拾い、育て上げた。

 この世界は残酷だ。実力や地位で人間の暮らしが決まってしまう。


 弱肉強食の世界。残酷な真実を教えながらも、彼女はレブルに伝え続けた。


 違う者同士がわかり合える世界――それを実現することこそ、元ハイエルフであるベルタ・クリスタンテの野望であると。


 そして彼女は、つい先日、新たな世界を知った。


 弟子のレブルは魔族をも受け入れ、お互いにわかり合うことができていた。


 だとすれば、今彼女がやるべきなのは、魔王ロードキングの質の低い演劇に参加することではない。


 勇者パーティを説得し、ギルドを説得し、王国を説得し――魔王ロードキングの統治下にある魔族たちを受け入れてもらうこと。


 それがベルタの使命だ。


「私は先日、魔界の現状を知った。魔王ロードキングという人物(・・)に出会った。彼は魔族だが、人間との共存を望んでいる」


「まあ、そうだね。テーマパーク作ったら遊びにきてよ」


「この通りだ」


 魔王とベルタの温度差に、苦笑するレブル。


 だが、もしかしたらこの説得は、ホークたちに届くかもしれない。


 そう期待して、レブルは自分のかっこいい師匠(マスター)を見守った。


「……なるほど。少なくとも、その少年に悪意はなさそうだ」


首領(リーダー)、本当にいいんですか? こいつは自分が魔王って言ってるんですよ!」


 納得しかけているホーク。

 そんなパーティの指導者(トップ)に、必死でシャドウは問いかけた。


「魔族と人間が共存できるはずがありません! そしたら……俺の憎しみはどこにぶつければいいんだ!」


「……」


 拳を地面にぶつけ、長年の憎しみを露にする。

 そんなシャドウの怒りや憎しみを感じながら、軽々しく話しかけられる者はいなかった。

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