第30話 ギルドからもいつの間にか大物認定されていた件
生徒や教師の注目を浴び続けた学園での授業が終わり、放課後。
レブルは早速、勇者パーティのバイトへ向かう。
「レブル君、今日は一緒に帰りませんか?」
目視できないほどのスピードで講義室から出たレブル。
しかし、彼に恋心を寄せるオッティはレブルを校門で待ち構えていた。
彼女と共に研修を受けたシルフィも隣に立っている。
「レブルさんはわたくしと一緒に帰りますの。馬車が迎えにくることになっておりますので、レブルさんも――」
「僕はこれからバイトがあるんだ」
「あら、でしたらわたくしもご一緒しますわ。レブルさんを近くで観察することがわたくしの使命ですもの」
その言葉はあながち間違いではなかった。
シルフィは王都魔術師同盟に入ることになったのだが、初任務がレブルを観察することだったのだ。
観察というよりは監視なのかもしれない。
レブルという少年は規格外だ。
あれだけの魔術の実力をどこで身につけたのか。
本人に自覚がないことも非常に危険である。魔術師同盟でも王国騎士団でも、レブル・コスキートは要注意人物でありながら、スカウト最優先人物であった。
「気持ちは嬉しいけど、お断りさせてもらうよ。バイト先のみんなを僕の都合に巻き込むわけにはいかないからね」
「そうですよ、シルフィさん。レブル君が困ってるじゃないですか。私はシルフィさんみたいにストーカーはしません。だからレブル君、ぜひ私と――」
「急いでるからまた今度ね」
さりげなく爽やか笑顔を披露し、そのまま消えるレブル。
消えるという表現は間違いだが、彼女たちから見たら消えたようなものだ。
目に見えない速度で走り去っていったのだから。
「おっ、レブル大先生!」
遅れてギルドに入ったレブルを歓迎したのは、かつてレブルを殺そうとしたことのあるシャドウだ。
彼はレブルの姿を見た途端笑顔になり、すぐさまレブルに駆け寄った。
もうすっかり大ファンである。
「シャドウさん、今日はいつもより楽しそうですね」
「いやぁ、実はお前を待ってたんだよ」
「そうなんですか?」
確認のために周囲を見回す。
勇者パーティのメンバーは全員揃っていた。
首領のホークはギルドから渡された封筒に視線を向けたまま、真剣な表情で頷いた。
「ギルドから、ある極秘任務の依頼が来た」
「極秘任務……それって、臨時要員の僕に教えてもいいことなんですか?」
「本来であればダメなんだが、今回は特別にギルドから許可が下りている。まあ、それも当然だろうがな」
――全然当然とかじゃないと思うけど……。
困惑するレブル。
臨時的に参加しているだけの自分が、ここまで重要な任務に関与してもいいのか。
普段は気楽に参加しているバイトだが、責任重大となってくれば話は別だ。ホークから何度も正式メンバーとしての勧誘をされながら、断り続けてきた。
勇者パーティの任務や事情にガッツリ関わりすぎることは、レブルの方針に反する。
そう感じた金髪に碧眼の小柄な少年は、何も聞こえないように耳を塞いだ。
「レブルちゃん、何してるの?」
急に耳を塞ぎ始めたレブル。
カリーナはその仕草に思わずキュンとした。
――レブルちゃん、やっぱり可愛いわ……!
行動の理由を聞いてみたものの、完全に聴覚をシャットアウトしてしまったのか、レブルは答えない。
カリーナは優しく彼の手をつかみ、横に引っ張った。
「可愛い」
「僕がそんな大事なこと聞いてもいいのかな?」
「ギルドも私たちも、それを望んでるのよ」
「……」
頑固になるのも良くないと思い、レブルは諦めた表情を作った。
それを見たナディアが舌打ちする。
「あんた、いい加減自分の実力認めたら?」
「実力?」
「とぼけるのもいい加減にしろって言ってんの!」
「僕は別にとぼけてないですよ」
「ちっ」
ナディアはレブルの近くにいるとイライラしがちだ。
ちなみに、もうすでに酒が入っている。
レブルが来るまでの間、カウンター席で3杯のカクテルを飲んでいた。
「ナディアはいい加減レブル大先生に対する態度を改めろ。あと、最近酒の飲みすぎだ」
「あんたは黙ってて」
「俺に対する態度もついでに改めろってんだ」
シャドウとナディアの言い合い。
ちょっとした喧嘩なのかもしれないが、全員慣れているので、止めに入ったりすることはない。
殴り合いに発展しないだけマシである。
ここで、話を戻すためにホークが咳払いをした。
「ギルドからの依頼の件だが……奥にある部屋で詳しく説明したいと思う。レブルもついてきてくれ」
ギルドの奥の部屋は、完全な防音が施された秘密を守るための部屋だ。
ギルドマスターから依頼が直接入る場所でもある。
実際、ホークたちはレブルが来る前にこの部屋に呼び出され、ギルドマスターから詳しい説明を受けていた。
「レブル、これは命令のようなものなんだが……魔王ロードキングを倒しにいく。レブルの参加は絶対だ」
バイトの少年を見つめながら、ホークが言う。
その言葉を聞くと、レブルは固まってしまった。口を開かないまま、時間が過ぎる。
――魔王を倒すって言われても……。
彼が困惑していたのは、魔王討伐の任務がとてつもなく難しく、大規模なことだったからではない。
レブルは魔王軍でもバイトをしている。
そして実際に魔王ロードキングとも面識がある。
つまり、彼にとってはロードキングもバイト先の上司であり、身内なのだ。
――マグナさんにはどうやって説明しよう……?




