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勇者パーティと魔王軍でのバイトを掛け持ちしていたら、いつの間にか最強になっていた件  作者: エース皇命


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第20話 威力が強すぎて相手の剣を砕いてしまった件

 レブルが圧倒的な勝利を収めた筆記試験。


 しかし、これはほとんどの生徒にとって予想通りの結果であり、意外性はない。


 剣術学園のイナズマが筆記で9割近く取ってきたこと。

 それが学術学園及び魔術学園の生徒たちにとっては予想外の事態だ。


 そして、次に行われるのは剣術対決。


 トーナメント戦ではなく、総当たり戦だ。


 ただ、同じ学園出身の生徒同士で戦うことはない。


 だからこそ、剣術対決は剣術学園のふたりがポイントを上げる大きなチャンスだった。これは魔術対決における魔術学園のふたりにも当てはまる。


「ここからが勝負よ。とにかく、イナズマにだけは勝ちなさい」


 レブル以上にやる気になっているアイシス。


 彼女の言葉に対して容易に頷くことはできない。

 相手は剣術学園6年生の中で最も剣術ができると判断され、代表に選ばれた生徒だからだ。


「あんたは自分が思っている以上に強いんだから。自信持ちなさいよね」


「やっぱりアイシスは優しいね」


「――ッ。いきなりはズルい……」


 胸がキュッと締めつけられるアイシス。

 レブルの爽やかな笑みのインパクトは大きかった。


「僕もやれるだけのことはやるよ。アイシスがこれだけ応援してくれているわけだし、かっこ悪いところは見せられないからね」


 またしても、大きなダメージ。


 アイシスの心臓はドキドキしっぱなしだ。




「さて、いよいよ始まりました剣術対決。まずは剣術学園代表、この対決の優勝候補でもあるイナズマ・ストライカー。彼はこれから、4名の生徒と連戦しなければなりません」


 順番はくじ引きで決まる。

 今回はたまたまイナズマが最初だった。


 実際のところ、序盤に当たった生徒は連戦しなければならないので、体力的には厳しくなる。


 だが、イナズマの表情は自信で満ち溢れていた。


「最初にイナズマ・ストライカーと戦うのは、魔術学園のシルフィ・ブラウエンです」


 魔術学園のシルフィが、剣を持って登場する。


 戦いの女神のような姿の彼女に、ファンの生徒たちは狂ったような悲鳴を上げた。


 中にはその姿をスケッチしている者もいる。

 完成した絵は、後に高値で取引されることになるだろう。


 一応魔術学園にも、必修科目として剣術がある。


 それは学術学園も同じで、こちらは選択科目にはなるが剣術と魔術があった。


 シルフィの剣を握る姿は剣術の授業でも目撃されているはずだが、そのあまりの麗しさと凛々しさに、会場全体が震えた。


「剣術は苦手ですわ」


 そう言いながら、剣を構える。


 シルフィの構えを見たイナズマは、不敵に笑う。


「隙だらけだな、お嬢様」


 そして、戦いが始まった。


 剣を交えた時間は、僅か一瞬だ。


 会場が盛り上がる前に、シルフィの剣が地面に落ちていた。つまり、イナズマの勝利だ。


 イナズマが勝つことは誰もが疑っていなかっただろうが、一瞬で決着がつくというのは多くの観客にとって予想外だった。


「……あいつ、やるわね」


 控え室からチラッと観戦していたアイシス。

 思わず称賛するような声を漏らしてしまう。


 そうなるのもしかたない。それだけイナズマの剣技は速く、見事だった。


 ――レブル、お願い……こいつだけには負けないで……。




 イナズマはオーラとアイシスも一瞬で倒した。


 アイシスは剣を構えることさえしなかった。

 これまで剣術を学んだことが一切ないからだ。


 学園で剣術を選択していたわけでもない。だからこそ、この大会の選手になったことが不満だったのだ。


 無論、それは魔術も同じである。


 ――このままだとあいつが有利になってしまうわ……。


 もしイナズマがレブルにも勝利すれば、筆記試験の成績と合わせて1位に躍り出てしまう可能性が高い。


 魔術は双方戦いにならないことを考えると、ここで勝つか負けるかで、優勝者がレブルなのかイレブンなのか決まると言っても過言ではない。


「イナズマ・ストライカー、最後の相手は筆記試験圧倒的1位のレブル・コスキート! これまでの戦いを見る限り、当然イレブン選手が勝つでしょうが……レブル選手には少しくらい粘ってほしいところです」


 この状況でレブルの勝利を期待する者などいない。


 イナズマが圧倒的だ。


 というか、剣術学園優等生のイナズマが圧倒的でなくてはならない。筆記試験のレブルがそうであったように。


「お前も負けにきたのか、レブル」


「そういうわけでもないかな」


 碧眼を細めながら、レブルが剣を構える。


 その構えを見て、イナズマは言葉を失った。


 ――隙がない。


 彼が驚いたのは、レブルの構えの隙のなさ。


 どこにも剣を打ち込むスペースがない。レブルを負かすビジョンを思い描くことができない。


 しかし、まだ構えを見ただけだ。

 これだけでうろたえていては、優勝することなどできない。


 イナズマには魔術がほとんど使えなかった。


 よって、筆記で高い点数を取りつつ、この剣術の戦いで全勝する必要があった。


 もしここで負ければ、イナズマの優勝は確実なものではなくなってしまう。


「勝負だ、レブル・コスキート」


 戦闘開始の合図を聞き、一瞬で間合いを詰める。


 そのはずだった。


「――ッ」


「僕の方が速いみたいだ」


 気づけば、レブルが間合いの中にいた。

 そして、剣はすでに振られていた。


 風圧で飛ばされるイナズマ。


 この戦いにおいての勝敗は、完全に戦闘不能になるか、剣を手の届かない範囲に落としてしまったかで決まる。

 よって、遠くに飛ばされたからといっても、まだ戦えるのなら戦闘続行だ。


 レブルが剣を振ったことで生み出した意味のわからない突風と、彼の圧倒的なスピード。


 学術学園の優等生であるレブルが、どうしてこんなに強いのか。


 その疑問が会場にいる全生徒及び教師の間に広がる。


 なんとか両足で着地し、剣を構え直したイナズマ。

 少しでも隙を見せるわけにはいかないので、ろくに準備もせずに前に飛び出す。


 しかし――。


「いない――?」


「ここだよ」


 真後ろから繰り出される剣撃。


 瞬発的に体を捻じ曲げ、なんとか自分の剣で受け止めた。


 だが、レブルの剣を受け止めたのは大きな間違いだった。


「な――ッ」


 強烈な威力に耐えきれず、折れるどころか粉々に砕け散ってしまうイナズマの剣。


 これは誰も予想しなかった結末だろう。

 ダメージを受けたのは体ではない。今は亡きイナズマの剣と、彼の高いプライドである。

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