第19話 筆記対決では予想通り無双してしまった件
控え室の扉が開き、代表選手6人が戦場に入場する。
まずは剣術学園の生徒ふたり――ブルバードとイナズマが客席からの大歓声を浴びた。
イナズマが客席の女子にウィンクすると、キャーという悲鳴が巻き起こる。
それを聞いたイナズマは満足したように笑みをこぼした。
「あいつ、ムカつくわね。調子乗ってるのはどっちよ」
「結構かっこいいし、モテるのもしかたないんじゃないかな」
「レブルは優しすぎるのよ。ていうか、あんなヤツよりレブルの方が何億倍もかっこいいし――ッ」
つい本音が出てしまったことに気づき、焦るアイシス。
立ち直るまで時間がかかった。
次に入場するのは、魔術学園の少女ふたりだ。
銀髪のシルフィが優しく笑顔を送ると、客席に座っていた男子生徒及び女子生徒が発狂する。
どうやら性別を問わず人気があるようだ。
「この後に入場させるなんて、運営も意地悪よね」
アイシスはまったく乗り気ではなかった。
どうせブーイングとかされるんだろう。
そう思って、嫌な気分のまま戦場に足を踏み入れた。
『キャー! レブル~! こっち向いて~!』
『レブルかっこいい!』
『レブル、頼むから勝ってくれ!』
向けられるのはブーイングではなく、同じ学術学園の生徒からの歓声。
他の学園の生徒はというと、レブルの美少年としてのルックスに興味を持っているようだ。自分の学園の代表以上に声を上げている女子生徒もいた。
――レブルってモテるのよね……。
学年1位の秀才でありながら、調子に乗ることなく謙虚に学園生活を送るレブル。
ルックスも爽やかで、男子生徒にも女子生徒にも優しく接している。確かに、これでモテないはずがないのだ。
恋のライバルは思っていた以上に多いのではないかと、内心ヒヤヒヤするアイシス。
レブルとの接点が他より多いという点で勝った気でいたが、少しでも気を抜いたら別の美少女に奪われてしまうかもしれない。
それに、この大会はレブルが大活躍する場だ。
もし本当に優勝してしまったら、余計にモテることは間違いない。
――優勝してほしいけど……してほしくない……。
複雑な気持ちが、アイシスの中で蠢いていた。
剣術学園の学長から大会の開会が宣言された。
このたった6人の生徒の戦いで、会場全体が盛り上がる。
最初に行われるのは筆記試験だが、実はもう昨日のうちに受験を済ませて結果待ちだ。
今からその結果発表が行われることになっている。
学術学園のレブルとアイシスは、ここで1位と2位を独占しなければ恥である。
「では、昨日行われた筆記試験結果を発表します」
アナウンス係の生徒が緊張した様子で台本を読み上げる。ちなみに、彼女は学術学園の生徒だ。
「まずは6位の発表です。第6位、剣術学園代表、ブルバード・マーヴェン。10科目合計680点」
7割に満たない合計点に、学術学園及び魔術学園からブーイングが巻き起こる。
ブルバードはそんな客席の生徒たちを睨みつけた。
だが、その行為のせいで余計にブーイングを食らうことになる。
「続いて5位の発表に移ります。第5位、魔術学園代表、オーラ・ベルソ。合計769点」
6位と5位で100点近くの差。
これはまずいのではないかという、剣術学園側の焦り。
「そして第4位、魔術学園代表、シルフィ・ブラウエン。合計835点」
魔術学園の生徒から大歓声が巻き起こる。
とりあえずシルフィという名前に反応して盛り上がっていた。
しかし、ここでアイシスの顔が歪む。
「あいつ、思ってたより筆記もできるみたいね」
「実力があるのはいいことだね」
少し離れたところで、不敵な笑みを浮かべるイナズマ。
アイシスにもわかっている。
今回の試験で8割以上を取るのはなかなか難しい。
だからこそ、イナズマが実力のある生徒だと認めるしかなかった。
「第3位は剣術学園のイナズマ・ストライカー。合計890点。なんと3位で9割近く取ってきました!」
純粋な感心のどよめきが全体に広がる。
学術学園の生徒でもないのに、筆記でそこまで高い点数を取ってくるなど、アイシスにも意外だった。
「第2位は学術学園の筆記女王、アイシス・フィリシン。なんと合計968点。さすがです!」
アナウンス係が学術学園の生徒だからか、やや贔屓気味だ。
とはいえ、アイシスが凄いのは誰にも否定できない。
しかし、2位のアイシスでこの点数となると……。
「第1位の発表です。もうわかりきっていますが、レブル・コスキート!」
ここまでで最高の歓声が上がる。
魔術学園の生徒たちは素直に称賛の拍手を送っていた。
剣術学園の生徒はなるべく拍手を送らないように自制しているようだったが、何名かの女子生徒が歓声を上げていた。
「合計点数はなんと、994点! 満点に近い点数を叩き出してきました!」
完璧に近い点数。
これには他の学園の代表生徒も全員がレブルに拍手を送る。
イナズマも面白そうな笑みを浮かべ、レブルを称賛していた。ちなみに、アイシスの時はノーリアクションだった。
「さすがは学術学園の生徒ですわね。お見事でしたわ」
「ありがとう」
華のある笑顔で近寄ってきたのは、魔術学園のシルフィだ。
シルフィに差し出された手を握るレブル。
「この借りは魔術対決で返させていただきます」
「そうだね」
素直にレブルを称賛するシルフィであったが、その瞳の奥には彼への対抗心の炎が燃えていた。
圧倒的な結果を見せつけられ、俄然やる気になったということだろう。
「レブルっていったか。やるな、あんた。これでこのメスガキの最下位が確定したぞ」
横から投げられるイナズマの挑発。
レブルに対してはむしろ称賛に近いものだったが、アイシスに対しては挑発でしかない。
「あいつ、やっぱりぶっ殺してやるわ」
「口が悪いよ、アイシス」
確かにアイシスへの挑発は酷いと感じつつ、レブルは冷静に彼女の暴走を抑え込んだ。




