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勇者パーティと魔王軍でのバイトを掛け持ちしていたら、いつの間にか最強になっていた件  作者: エース皇命


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第17話 元王国騎士団の副団長を剣の構えだけでビビらせた件

 魔界は人間界の地下に広がっているため、規模は人間界と同じくらい大きい。


 そんな魔界をひとつにまとめる支配者――そんな者はおらず、各地で魔王が誕生し、それぞれの魔王が土地を統治している。


 セレスト王国の王都ビクトリア。

 その地下に広がっているのが、魔王ロードキング領だった。


 レブルは師匠(ベルタ)との訓練の際、一度だけ魔界に迷い込んだことがある。


 その時に出会ったのがヴァンパイアのマグナ・ホーフマンだった。


 当時は魔王軍幹部でなかったマグナ。

 そんな彼に魔王ロードキング領統治のためのアイディアを提供し、大量のモンスターを討伐して実力を示したのがレブルである。


 その後もいろいろあって、マグナが幹部に昇格し、レブルは魔王軍のバイト兼アドバイザーという不思議なポジションとして、魔王軍からも頼られる異常(イレギュラー)な人間になってしまったのだ。


「我々ではレブル君の放つ高質力の魔術が使えないものでね。キミの力だけが頼りだ」


「そんなことないですよ。最近いろんな人から過大評価されてるような気がするんですが……なんでですかね?」


「とりあえず、やってくれたまえ」


「わかりました」


 淡々と頷き、領地に迫ってくる醜いモンスターに向けて、一言。


「燃えろ」


 指をパチンと鳴らし、弾けるような音が周囲に響き渡る。


 その音の波動はモンスターの大群へと広がり、やがて――。


「さすがはレブル君。お見事」


「マグナさんって時間には厳しいのに仕事の内容には甘いですよね」


「いや……それはキミの魔術が本当に見事だからだ」


「またまた~」


 モンスターを一斉に覆い尽くす紫の炎。

 一般的な人間では、赤い炎を魔術によって出現させ、ひとつの個体に向かって放出することが限界だ。


 しかし、魔王軍でのバイトを通して、レブルは階級(グレード)が上の紫の炎を呼び出し、大軍を一気に仕留められるほどの規模で魔術を行使することができるようになった。


 魔術を教えたのはマグナだったが、これほどまでの質力が出せるようになったのは、レブルの努力の賜物だろう。


 実際、この威力の魔術を放つことができるのは、マグナの知る限り魔王ロードキングくらい。


 この金髪の小柄な少年は、淡々とした表情で魔王級の魔術を放っているわけだ。


 ――この少年が敵に回らなくて幸運だった……。


 マグナは魔術の行使を終えたレブルを見ながら、ほんの一瞬だけ戦慄した。




「レブル、よく聞きなさい! 今日から、あんたが王都三大合同大会で優勝するための、剣術の特別訓練を行うわよ!」


「なんで急に――」


「わたしは剣術なんてできないの! だからレブルが優勝して周囲をぎゃふんと言わせてやるしかないわ」


「そもそも、ぎゃふんと言わせる必要なんてあるのかい? 僕たちは僕たちにできる精一杯のことをして、最下位にならないように頑張れば――」


「ぬるい! ぬるいわレブル! あんたは優勝できる可能性を秘めてるの! だったらつべこべ言わずに優勝しなさい!」


 ――厳しいな……。


 アイシスは早速、大会に向けて動き出した。


 だが、それは彼女の実力を高める、というものではなく、レブルが確実に優勝するために手を貸す、というものだ。


 放課後、勇者パーティでのバイトがないことを聞き、ビクトリア学術学園の中庭にレブルを呼び出す。


 呼び出しを無視することなく、優勝候補(レブル)は中庭に現れた。

 しかし、表情はそこまで乗り気ではない。


「パパに頼んで、あんたのために剣術の練習相手を用意してあげたわ」


「え……」


 いつの間にか話が大きくなっている気がするレブル。


 アイシスを止めることは誰にもできない。


「この人はアバルト。元王国騎士団の副団長だった人だから、剣術の腕前は超一流だわ」


「王国騎士団の副団長って……」


「どう? あんたの練習相手にはちょうどいいでしょう?」


「剣術の先生としては適任かもしれないけど、そんな凄い人を巻き込んで――」


「気にしなくていいの! レブルはこの人に剣術を教わって、剣術学園の生徒をボコボコにしてやりなさいよね」


 アバルトと呼ばれた男は、背が高くて体格のいい、いかにも屈強な剣士だった。


 30歳前後のまだまだ若い剣士である。


「アイシスお嬢様に言われてここまで来ましたが……本当に大丈夫でしょうか?」


「何よ。文句でもあるわけ?」


「いえ、しかし……レブル殿は学術(・・)学園の優等生なのですよね? まずは剣術の基礎から教える必要がありますが、大会まで2週間を切った状態で――」


「大丈夫よ。レブルの剣術は凄いんだから」


 誇らしげにレブルを見るアイシス。


 ――確かに基礎はできてるかもしれないけど……騎士団の副団長だった人からすれば、僕の剣術なんてしょぼいものだろうに……。


 レブルの気分はどんどん落ちていく。


「わかりました。できる限りのことは致しましょう」


 アバルトは渋々頷き、剣を抜いた。

 洗練された構えで、レブルと向き合う。


 もう逃げることはできないと感じ、レブルも用意してあった剣を拾って構える。


 その自然体に近いような構えを見て、アバルトは戦慄した。


 ――まさか……この構えは……。


「あの……戦わないんですか?」


「え、いや……」


 全身が小刻みに震えているのがわかる。

 アバルトは確かに、ここ数年感じていなかった、絶対的強者と対峙した感覚を味わっていた。こんなの久しぶりだ。


 あれは4年前、訓練の一環としてSランク冒険者のベルタ・クリスタンテを招き、剣術の稽古をつけてもらった時……ベルタの剣の構えは、今この場でレブルが取っているものと同じだった。


 だが、気を取り直す。


 この少年はたまたま同じような構えをしただけなのではないか。


 そう考えることで、自分の内側に巻き起こった一時的な恐怖をかき消そうとした。


「では、参ります」


 アバルトは足を踏み込み、間合いを詰める。


 単純な動きだが、常人であれば目視できないほどの速さだった。実際、アイシスには何が起こっているのかまったく理解できていない。


 しかし、レブルは違った。


 ゆっくりと、アバルトの動きを目で追っていたのだ。


 動きを完全に見切り、体を斜めにそらす。


 そして剣をくるっと回転させ、アバルトの剣を受け止めた。だがこれは、単に受け止めただけではない。


 回転させた遠心力のおかげで、レブルの剣の方が威力が高かった。

 その威力は凄まじい。人畜無害な少年が放っていいものではない。


 力負けしたアバルトの剣。


 上空に飛ばされ、一瞬見えなくなる。それだけ高くまで飛ばされたということだ。


「は……」


 そして、しばらくすると剣が落ちてきた。

 その剣はアバルトの顔面をかすめ、ちょうど目の前の地面の突き刺さる。


「――ッ」


 膝から崩れ落ちるアバルト。


「え、何が起こったの?」


 慌てて駆け寄るアイシス。

 無論、彼女にとって、今の出来事は一瞬の出来事だ。


「か、帰らせてください……!」


 ハンサムな顔を台無しにするほど怯えた表情を作りながら、アバルトはアイシスに頼み込んだ。






《キャラクター紹介》

・名前:マグナ:ホーフマン

・性別:男

・年齢:24歳

・種族:ヴァンパイア

・身長:182cm


 魔王軍幹部になったばかりの新人で、魔王軍におけるレブルの教官。レブルの血を吸うことが最近の楽しみである。

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