第12話 勇者パーティに絡まれている姿を見られていた件
シャドウとナディアと和解することができたレブルは、彼らに連れられて勇者パーティの本拠地に移動していた。
シャドウは完全に反省した様子というか、異常なまでにレブルのことを持ち上げている。
「レブル大先生、どうやったらそんなに強くなれるんだ?」
「僕は別に強くなんかないですよ」
「謙遜するなってぇ。とにかく強くなる秘訣を――」
「それは僕の師匠に聞いてください」
面倒になってきたので、ベルタを犠牲にするレブル。
これまでも何度か言及してきた存在ではあるが、こうしてガッツリと話題の中心に出すことはなかった。
「レブルのマスター……そういえば師匠がいる、みたいなこと言ってたな……それで、その師匠ってどんな人なんだ?」
「ベルタ・クリスタンテさんです。名前くらいは聞いたことあるでしょ?」
「ベルタ・クリスタンテ……!? Sランク冒険者の?」
「はい」
「王都じゃ知らない人はいねぇ有名人だぞ? そんな人に戦いを教わってたのか?」
「有名人って……シャドウさんたちも同じくらい有名だと思いますけど」
別に褒めたつもりはなかったが、シャドウが少し照れたような仕草を見せる。
彼は完全にレブルのことを認め、尊敬していた。
実際に彼の実力を体験したわけではないが、ホークたちが彼を評価してチヤホヤすることに納得がいったのだ。そして、罪深き自分たちを許してくれた器の大きさに感動し、一生ついていくと決めたのである。
今、シャドウがレブルに向けるのは尊敬の眼差し。
そして、嫌悪からひっくり返った100パーセントの好意だ。
ナディアはそこまでではないものの、レブルに対する申し訳ない気持ちは本物である。
何よりレブルの強さの秘訣について知りたがっていた。
「だが納得がいってすっきりしたぜ。Sランク冒険者に戦いを教わったら……そりゃあ巨大な岩なんて簡単に吹き飛ばせるわな」
「師匠は僕よりずっと強いんですよ」
「そっかぁ……Sランク冒険者かぁ……」
「でも、シャドウさんたちも冒険者登録をして冒険者になれば、余裕でSランクになれるんじゃないですか?」
「え、そう思う? へへ……」
レブルは謙虚でありながら、相手を立てる発言をよくする。
そのせいで、シャドウは照れっぱなしだ。
だが、もしかしたらそのせいで周囲から過小評価され、自分のことも同じように過小評価してしまっているのではないか。そうシャドウは考えた。
「ヘラヘラ照れてキモいんだけど」
「お前はうるせぇな! もっとレブル大先生を敬えっての!」
「はぁ? あたしが敬ってるのはホークだけだし!」
「そりゃあ確かに首領もすげぇよ。だがレブル大先生は――」
「まあまあ、落ち着いてください。僕とホークさんだと、レベルが全然違いますよ」
――そんなことないと思うがな……。
実際のところ、ホークであってもあの穴から無傷で脱出することは難しいだろう。
これまで近くで彼を見てきたシャドウはそう考えている。
20メートルを超える高さのジャンプに加え、重くて巨大な岩をパンチで吹き飛ばすとは……もしかしたらホークよりも強いのでは、と思い始めているくらいだ。
槍など、武器の扱いではホークの方がずっと上なのかもしれないが、純粋な身体スペックではレブルの方が高いような気がしてくる。
――恐ろしいヤツだぜ……まったく。
レブルの驚異的な強さに改めて戦慄しながらも、シャドウは自然な笑みをこぼした。
――すげぇな、レブル大先生は……。
あれほどまでの嫌悪がここまでの尊敬と好意に変わるなど、誰が想像しただろうか。
レブルは認めないだろうが、シャドウはすっかり彼の弟子になっていた。
――嘘……やっぱり勇者パーティでバイトしてるっていうのは本当だったのね……! それに、大先生って……。
これは偶然ではない。
いつも通り放課後にレブルを尾行していたアイシス。
前回バレバレであることを指摘されていたので、今回は前回よりも距離を取った上で、動きを最小限にして尾行に臨んでいた。
その結果、レブルに気づかれず尾行することに成功。
しかし、彼女が見たのはホークが首領を務める勇者パーティのメンバー、シャドウとナディア。そのふたりと仲良さそうにギルドから出てくるレブルだった。
会話の内容を聞こうと、通行人のふりをして接近する。
すると――。
『レブル大先生、どうやったらそんなに強くなれるんだ?』
『ベルタ・クリスタンテ……!? Sランク冒険者の?』
『お前はうるせぇな! もっとレブル大先生を敬えっての!』
レブルを大先生と慕い、称賛するシャドウ。
王都で知らない者はいないほどの有名人である、Sランク冒険者ベルタがレブルの師匠であるという事実。
とんでもない話の内容に、脳が混乱する。
レブルと会話する際、たまに師匠という言葉が出ることはあった。
そういう人がいるんだなと思う程度に済ませていたが、まさかその師匠がベルタ・クリスタンテのことだったとは、夢にも思わなかった。
それはレブルが一体何者なのか、という疑問を解決する手助けになるというよりは、さらにその疑問を強めてしまう。
アイシスの中で、レブルという学術学園の優等生の謎がさらに深まった。
驚きの連続で固まるアイシス。
だが、このまま固まっていてはレブルに尾行がバレてしまうかもしれない。
そう思い、慌てて尾行を中断し、彼らから離れようとする。
しかし――。
――き、気づかれた……?
レブルが自然な動作で後ろを振り返り、慌てて逃げるアイシスの姿を捉えた。
その表情は、いつもの余裕に溢れたミステリアスな笑み。
ドキッ。
視線が絡み合い、アイシスの胸の中で何かが弾けた。
目が合ったことで、アイシスは悟ってしまう。
レブルは最初から自分の尾行に気づいていた。気づいていながら、あえてここまで泳がせていたのだと。
胸を両手で押さえながら、走り去る。
心臓の鼓動が鳴りやまない。
顔は火照り、真っ赤に色づいていた。
この瞬間、アイシスは気づく。自分がずっと、レブルに特別な感情を抱いていたことに。
そしてその感情とは、「恋」以外の何物でもなかった。
《キャラクター紹介》
・名前:シャドウ・シャイン
・性別:男
・年齢:24歳
・種族:ヒューマン
・身長:173cm
勇者パーティの剣士で、左目に眼帯をしている。最初はレブルのことを嫌っていたが、今ではすっかり尊敬し、大先生と慕っている。




