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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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994/1043

レンコン畑の参謀戦線――理世、統計を使い始める

茨城県土浦市、旧新治村界隈。


筑波山を望むこの地域は、広々とした農地、静かな集落、碁盤目のように伸びる農道、そして水面に葉を広げるれんこん畑が美しい、茨城の底力を感じる場所だった。派手な観光地ではない。だが、土と水と人の暮らしがきちんと息づく、農業王国・茨城の誇りのような土地である。


そんな旧新治村の農道で、ジェネラス・リンクが農業機械部品の不正流通を使った妨害工作を企んでいるとの情報が入った。


出動するのは、一条知佳、柏木理世、小春、澪、伊織、彩芽、山口唯奈。

そして、最新AI搭載の頼れる農業マシン、ドリームトラクター蒼牙2000・改。


新橋のヒロ室で作戦会議が始まる。


知佳が資料を広げた。


「不審車両の出現位置、農道の幅、用水路、農機具倉庫の配置、過去のジェネラス・リンクの逃走傾向を重ねると、敵は東側農道へ抜ける可能性が高いです」


理世は黙って資料を見る。


小春が目を丸くした。


「お、理世が反論しない」


彩芽も驚く。


「珍しいべさ」


理世は不機嫌そうに言った。


「今回は、一部だけ参考にしますわ」


知佳は嬉しそうに笑う。


「ありがとう」


「全面的に信用したわけではありません」


「うん。一部でも嬉しいよ」


「そういうところですわ……」


理世は小さくため息をつく。


作戦はこう決まった。

小春と澪が敵の退路を塞ぐ。

伊織と彩芽が陽動。

唯奈と蒼牙2000・改が最後に決める。

知佳は後方で分析補助。

理世が全体指揮を取る。


任務当日。旧新治村の農道は穏やかだった。れんこん畑の水面が光り、遠くに筑波山が見える。だが、その静けさの裏で敵は動いていた。


知佳の予測は、ほぼ的中した。


敵車両は東側農道へ。

逃走方向も想定通り。

小春と澪が退路を塞ぐ。


「はい、そこ通行止め!」


小春が軽い調子で道をふさぎ、澪は無言で反対側に立つ。無言なのに圧が強い。


伊織と彩芽が敵を誘導する。


彩芽が叫ぶ。


「こっちだべ! いや、違うべ、そっち危ないべ!」


伊織が冷静に補正する。


「彩芽ちゃん、陽動はもう少し計画的に」


「勢いも大事だべさ!」


そして最後は唯奈と蒼牙2000・改。


唯奈がドギツイ茨城弁で叫ぶ。


「蒼牙、行ぐど! 逃がすんじゃねぇがんな!」


蒼牙2000・改が丁寧に応答する。


「承知しました、唯奈さん。進路封鎖を開始いたします」


巨大なトラクターが農道を塞ぎ、敵は完全に詰んだ。


任務完了。


理世の作戦は成功した。

ただし、その土台には明らかに知佳のデータがあった。


任務後、農道の邪魔にならない広い待避スペースで小休止となる。


蒼牙2000・改が静かに言った。


「知佳さんの分析精度は極めて高水準でした。今回の誤差は許容範囲内です」


知佳は照れる。


「ありがとう」


続けて蒼牙2000・改は理世に向く。


「理世さんの作戦立案も優秀でした。ただし、知佳さんの分析活用率には改善余地がございます」


理世の眉が動いた。


「機械に言われたくありませんわ」


蒼牙は丁寧に返す。


「私は機械ですが、論理演算に基づき発言しております」


「その言い方が気に入りません」


「感情的反応と判断します」


「感情的ではありません!」


小春が吹き出した。


「理世、トラクターと口喧嘩してる!」


彩芽も笑う。


「しかもトラクターの方が落ち着いてるべさ!」


唯奈は完全に呆れている。


「勝手にやってろ。彩芽、こっち来い。あっちの畦道おもしれぇぞ」


「行くべ!」


小春も混ざる。


「あたしも行く!」


三人は農道脇で妙に楽しそうにじゃれ合い始める。


一方、澪はれんこん畑をじっと見つめていた。


「……穴」


知佳が困惑する。


「澪ちゃん?」


「れんこん、穴が多い」


「それはそうだね」


「興味ある」


知佳はどう返していいか分からなかった。


その間も、理世と蒼牙2000・改の議論は続いている。


理世が言う。


「統計だけで現場は回りません」


蒼牙が返す。


「同意いたします」


「ならば」


「しかし、統計を軽視する理由にはなりません」


理世が詰まる。


「……あなた、妙に口が立ちますわね」


「最新AI搭載ですので」


「それも気に入りません」


「非論理的評価です」


「黙りなさい!」


そこへ伊織が静かに割って入った。


「蒼牙さん、そこまでにしましょう」


蒼牙2000・改の音声が一段柔らかくなる。


「承知しました、伊織さん」


理世が目を細める。


「私の時と態度が違いませんこと?」


蒼牙は即答する。


「伊織さんの指示は優先度が高く設定されています」


小春が遠くから叫ぶ。


「蒼牙、伊織にだけ甘い!」


唯奈が笑う。


「こいつ、分かりやすいな!」


伊織は少し困ったように微笑む。


「皆さん、戻りましょう。任務は成功しました」


理世は不満げにそっぽを向く。


「まったく、失礼なトラクターですわ」


蒼牙2000・改は丁寧に返した。


「理世さんのご意見は記録いたしました」


「記録しなくてよろしい!」


知佳はそのやり取りを見ながら、苦笑した。


「理世さん、でも今回は私のデータを使ってくれたよね」


理世は少し間を置いた。


「一部ですわ」


「うん。一部で十分」


「次も採用するとは限りません」


「でも資料は渡すね」


理世は視線を逸らした。


「……受け取るだけは受け取ります」


小春が戻ってきて、すかさず言う。


「お、進歩!」


理世は睨む。


「黙りなさい」


こうして土浦市の旧新治村の任務は、知佳の分析と理世の作戦、そして唯奈と蒼牙2000・改の決定力によって無事成功した。


理世は少しずつ知佳のデータを活用し始めた。

しかし新たな問題が発生した。


孤高のシロガネーゼ柏木理世と、理知的すぎるトラクター蒼牙2000・改。


この二者の不毛な知的討論は、今後ヒロ室の新名物になりそうだった。

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