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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ワシントンはまだ終わらない――クイズ女王・知佳と三人のライバルたち

客席がどよめく。


知佳は照れ隠しのように笑う。


「高槻さん、盛ってます」


「盛ってません。クイズ王は、予測できない相手が一番嫌なんです」


福原アナは満足そうにうなずいた。


「知佳さん、強いんだねぇ。でも時々とんでもない誤答もするよね?」


知佳は急に視線を逸らす。


「それは……」


福原アナが嬉しそうに続ける。


「世界最大の淡水湖で琵琶湖って言ったよね?」


客席大爆笑。


知佳は両手で顔を覆う。


「違うのは分かってたんです!」


涼太が笑う。


「それ、番組中も言ってましたよ」


福原アナがさらに追い打ちをかける。


「知佳は統計学専攻だけど、統計は大丈夫か?」


知佳は真顔で返した。


「統計は大丈夫です。湖がだめだっただけです」


高槻も航平も笑いをこらえきれない。


福原アナが言う。


「知佳さん、やっぱり愉快な人だねぇ」


「褒めてます?」


「強くて面白い。最高じゃないか」


知佳は少しだけ嬉しそうに笑った。


次は航平の番だった。


福原アナが聞く。


「航平くん、決勝は高槻さんとの対決だったね。どうだった?」


航平は背筋を伸ばす。


「高槻さんは大学の大先輩です。学生時代から目標でした。だから、決勝で戦えたのは嬉しかったです」


高槻が穏やかに微笑む。


「私はもう古い世代ですから」


「そんなことないです。でも……正直、やりづらかったです。よく知っている先輩だから」


高槻は笑った。


「でも勝った。だから世代交代ですよ」


航平は首を振る。


「まだ早いです」


「いや、もう十分です」


会場から温かい拍手が起きる。


そこで福原アナが、待ってましたとばかりに切り込む。


「で、知佳さんとは決勝でやりたかった?」


航平は少し照れた。


「本音を言うと、やりたかったです」


知佳も自然に答える。


「私もやりたかったです」


二人の声が重なった。


客席が「おおー」と沸く。


福原アナがにやける。


「いいねぇ。ロマンスか?」


二人は即座に言った。


「違います」


「違います」


福原アナは指を鳴らす。


「息ぴったりじゃないか」


涼太が横から茶々を入れる。


「怪しいですねぇ」


高槻もわざと真面目に頷く。


「怪しいですね」


知佳が少しむくれる。


「高槻さんまで」


航平は苦笑い。


「本当に違います」


福原アナはさらに煽る。


「航平くん、準決勝後の知佳さんのコメントが力になったんだって?」


航平は表情を少し真面目にした。


「はい。『決勝、勝ってください』って言われて、勝たなきゃいけないと思いました。知佳さんに勝った以上、決勝で負けられないと」


福原アナがすかさず言う。


「愛の力?」


航平は完全に照れ笑い。


「違いますって」


知佳も笑う。


「違います」


福原アナは客席へ向かって両手を広げる。


「二人で否定するほど、こっちは楽しくなるんだよ!」


会場は大爆笑。


話題は再び知佳へ戻った。


「知佳さんは、誰と決勝で当たると思ってた?」


知佳は迷わず答えた。


「高槻さんか航平くんです」


そして少し間を置く。


「涼太くんだけはないかなと思ってました。ごめんなさい」


会場爆笑。


涼太が叫ぶ。


「また僕ですか!」


知佳は悪びれずに微笑む。


「でも、涼太くんが通過席に来た時は本当に焦りましたよ」


「それ、褒めてます?」


「半分は」


「半分だけ!」


知佳は当時を振り返る。


「高槻さんの通過クイズを私が阻止して、私の通過クイズを航平くんが阻止して、三つ巴になると思っていたんです。そこへ急に涼太くんが来たから」


福原アナが笑う。


「随分言うねぇ」


知佳は上品に頭を下げる。


「ごめんなさい」


涼太は嘆く。


「この人、謝る時が一番危険なんですよ」


高槻が頷く。


「通せんぼクイズでもそうでしたね」


航平も笑う。


「ごめんなさいって言ってから落としに来る」


知佳は真顔で言う。


「勝負ですから」


会場がまた笑った。


最後に、福原アナが少し声を落とした。


「知佳さん。決勝へ行けなかったのは、悔しい?」


知佳は少しだけ考えた。


「悔しいです」


その声は素直だった。


「それは本当に悔しいです。今でも、あの一問は覚えています。押した感覚も、ランプを見た瞬間も」


少し静かになる。


だが知佳はすぐに笑った。


「でも、すごく楽しかったんです」


「みんなで同じ方向を向いて、ヒリヒリするような緊張感を味わえました。この三人と戦えたのが嬉しかった。もちろん、涼太くんとも」


涼太がすかさず言う。


「今の“もちろん”遅くなかったですか?」


「少しだけ」


「認めた!」


客席が笑う。


知佳は続けた。


「今は戦隊ヒロインとして活動していますけど、皆さん、たまにイベントステージを見に来てくれるんです。この前は四人で準決勝の再現クイズをしました」


福原アナが興味深そうに聞く。


「結果は?」


知佳は苦笑した。


「涼太くんが優勝しました」


福原アナが目を丸くする。


「涼太が?」


涼太は胸を張る。


「そうです。実力です」


高槻が穏やかに言う。


「押さない実力ですね」


航平も頷く。


「マイナスを避けた勝利」


知佳がにこやかに締める。


「涼太くんらしい勝ち方でした」


「また馬鹿にしてますよね?」


「少しだけ」


「少しだけならいいか……いや、よくない!」


会場はこの日一番の笑いに包まれた。


福原アナは四人を見回した。


「ワシントン準決勝が今でも語られる理由、よく分かった気がします。強かった。面白かった。そして、仲が良かった」


高槻が頷く。


「本気で戦ったから、今も笑って話せるんだと思います」


航平が続ける。


「僕にとっても、あの一問がなければ優勝はありませんでした」


涼太は少し照れながら言う。


「僕も、ワシントンまで行けたことは誇りです。運だけって言われますけど」


知佳がすぐに言う。


「運だけじゃないですよ」


涼太がぱっと顔を上げる。


「知佳さん……」


「芸能問題は強かったです」


「そこ限定!」


客席が笑う。


知佳は最後に、あの愛嬌のある笑顔で言った。


「また四人でクイズしたいですね」


客席から大きな拍手が起こる。


ワシントンの勝負は終わった。

けれど、あの日のヒリヒリした緊張感と、そこから生まれた関係は今も続いている。


一条知佳にとって、あの敗北は終わりではなかった。


戦隊ヒロインとして再び本気になれる場所を見つけた今も、彼女の原点はあの日のワシントンにある。


そして福原アナは、最後にいつもの調子で締めた。


「いやぁ、いい座談会でした。では最後に一言。知佳さん、来年は?」


知佳は迷わず笑った。


「もちろん、勝ちに行きます」


涼太が横で小さく言う。


「僕も」


福原アナは即座に返した。


「君はまず、押すタイミングを覚えなさい」


スタジオは、最後まで笑いに包まれていた。

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