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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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押せば押すほど沈んでいく――全部同じ答えなのに、クイズ女王が勝てない日

太平洋横断ジャンボクイズの国内予選会場として知られる、巨大エアドーム近くのイベントホール。

この日、そこでは戦隊ヒロインプロジェクトの特別ファンイベントが開かれていた。


出演は、一条知佳、月島小春、白石陽菜、松本美紀、館山みのり・杉山ひかりのグレースフォース、西里香澄、水無瀬澪、南部沙羅。

前半は通常の戦隊ヒロインイベントで、熊本弁バスガイドの西里香澄と江戸っ子ギャルの月島小春がWMCを務めた。


香澄が安定感抜群に進行する。


「皆さん、本日はよう来てくださいました。最後まで楽しんでいってはいよ」


小春がすぐにかぶせる。


「エアドーム前のみんなー! 今日もテンション上げてくぞー!」


会場は拍手と歓声に包まれた。


みのりとひかりのグレースフォースが登場すると、清楚で知的な雰囲気に客席から「かわいい」「品がある」と声が飛ぶ。

澪は静かに一礼し、沙羅はどこか高飛車に髪を払う。美紀は真面目に「皆さん、水分補給してくださいね」と注意喚起して、なぜか看護師枠として拍手をもらった。


そして白石陽菜が登場した瞬間、空気が変わる。


「陽菜ちゃーん!」


「かわいい〜!」


「こっち向いて!」


陽菜は驚いたように両手を振る。


「ありがとうございます……今日は転ばないように頑張ります」


小春が即座に突っ込む。


「最初の目標そこ!?」


会場は大爆笑。前半ステージは上々だった。


そして後半。

香澄がマイクを持ち、少し芝居がかった声で宣言する。


「さあ、ここからは本日の目玉企画ですたい。あの太平洋横断ジャンボクイズ、伝説のワシントン準決勝を、このエアドーム前で再現いたします!」


会場がどよめく。


小春が拳を突き上げる。


「出ました! 伝説再戦! コネチカットパイセン、今日こそ雪辱なるか!」


舞台袖から知佳が苦笑いで出てくる。


「雪辱って言わないでください」


続いて、森脇航平、高槻誠司、早乙女涼太が登場。

ジャンボクイズファンも多く来ていたらしく、客席から大きな拍手が起きる。


司会は香澄。

出題者は女子アナ志望の杉山ひかり。

ひかりは原稿カードを手に、落ち着いた美声でルールを説明した。


「今回の形式は、早押しダブルチャンスです。解答が出るまで何度でも押せます。正解で1ポイント。ただし、お手付き・誤答はマイナス1ポイントです」


知佳が頷く。


「つまり、分かったら何回でも攻められるんですね」


ひかりはにこりと笑った。


「はい。ただし、問題は最後までよく聞いてください」


その笑顔が少し怖かった。


高槻が腕を組む。


「これは罠がありますね」


航平も頷く。


「ひかりさん、かなり作ってきてますね」


涼太は軽い調子で笑う。


「俺、今日は焦らずいきます。豪華粗品狙いで」


香澄が説明を続ける。


「優勝者には、戦隊ヒロインプロジェクト推進室、略してヒロ推またはヒロ室から、豪華粗品が贈られます!」


航平が首を傾げる。


「豪華粗品?」


高槻が苦笑する。


「賞品ではなく粗品というあたり、非常にヒロ室らしい」


知佳は真剣な顔。


「中身より勝つことが大事です」


小春が横から言う。


「パイセン、粗品でも勝負になると目が怖い!」


そしてクイズ開始。


第1問。


ひかりの澄んだ声が会場に響く。


「アメリカ合衆国北東部、ニューイングランド地方に属し、州都をハートフォードに置く州はどこでしょう?」


知佳が即押し。


「コネチカット州!」


正解。


会場拍手。


小春が叫ぶ。


「さすがパイセン! 今日は押し勝った!」


知佳は満足そうに微笑む。


「これは落とせません」


第2問。


「1787年の合衆国憲法制定会議で、大州と小州の代表権問題を調整し、上院は各州同数、下院は人口比例とする二院制案を、提案した州名から何妥協というでしょう?」


航平が押す。


「コネチカット妥協」


正解。


知佳が小さく悔しそうに笑う。


「また航平くんに取られました」


会場から拍手と笑い。


第3問。


「通称“憲法州”とも呼ばれ、アメリカ建国史に深く関わる州は――」


高槻が押す。


「コネチカット」


正解。


ここまでは順調だった。

だが、ここからひかりの本領が発揮される。


第4問。


「アメリカの州で、ロードアイランド州の西、ニューヨーク州の東、マサチューセッツ州の南に位置する――」


知佳が押した。


「コネチカット!」


ひかりはにこりと笑う。


「問題は続きます。……その州を流れ、州名の由来にもなった川は何でしょう?」


知佳が固まる。


「えっ」


香澄が判定を見る。


「正解はコネチカット川。知佳さんの答えは州名のみなので不正解。マイナス1ポイントたい」


会場爆笑。


知佳は頭を抱えた。


「最後まで聞いてくださいって、そういう意味ですか!」


ひかりは美しい笑顔のまま言う。


「問題は最後まで聞いてください」


その一言に、客席がどっと沸いた。


第5問。


「アイビーリーグの名門イェール大学がある都市ニューヘイブンは、どの州にあるでしょう?」


高槻が押す。


「コネチカット州」


正解。


さすが社会人クイズ王。堅い。


第6問。


「アメリカ50州をアルファベット順に並べた時、Californiaの次に来る州は何でしょう?」


涼太が少し遅れて押す。


「コネチカット!」


正解。


香澄が笑う。


「涼太さん、遅かったけど正解たい」


涼太は得意げ。


「焦らないのが勝負です」


知佳が少しムッとする。


「それ、勝負師っぽいですね」


「いや、ただ押せなかっただけです」


会場爆笑。


第7問。


ひかりが少し間を置く。


「日本語では“コネチカット”と表記されることが多いこの地名の語源は、先住民の言葉で“長い潮の川のそば”を意味するとされますが――」


知佳がまた押す。


「コネチカット!」


ひかりが待っていたように微笑む。


「……その語源となった川の名は何でしょう?」


知佳は机に突っ伏したくなる顔をした。


「また川!」


香澄。


「正解はコネチカット川。知佳さん、またマイナスたい」


小春が腹を抱える。


「全部コネチカットなのに、パイセンが負けに行ってる!」


陽菜が本気で心配する。


「知佳さん、大丈夫ですか?」


知佳は笑顔で答える。


「大丈夫じゃありません」


第8問。


「州略称CTで表される州は――」


航平、知佳、高槻が同時に押しかけた。

ランプは航平。


「コネチカット!」


ひかりは涼しい顔で続ける。


「……ではなく、医療分野でCTと略される画像診断法は何でしょう?」


航平が顔をしかめる。


「しまった」


香澄。


「航平さん、不正解でマイナスたい」


ここで高槻が押す。


「コンピュータ断層撮影」


正解。


美紀が客席側から感心する。


「医学系はそっちですね」


小春が笑う。


「出題者ひかり、怖すぎる!」


ひかりは再び言う。


「問題は最後まで聞いてください」


知佳が横から言う。


「ひかりさん、今日かなり楽しんでますよね?」


「はい」


即答だった。


第9問。


「アメリカ独立戦争時代に“憲法州”と呼ばれる歴史的背景を持ち、1662年の王領植民地憲章を独立後も長く用いた州はどこでしょう?」


知佳は今度こそ最後まで聞いた。


「コネチカット」


正解。


知佳が小さくガッツポーズ。


「今度は聞きました」


小春が拍手する。


「パイセン、ようやく学習!」


第10問。


ひかりは最後の問題カードを見て、少し嬉しそうにした。


「太平洋横断ジャンボクイズ、ワシントン準決勝で、一条知佳さんがコンマ数秒差で押し負けた伝説の一問。その答えは――」


知佳、航平、涼太が一斉に押す。


ランプは、まさかの涼太。


「コネチカット妥協!」


正解。


会場が一瞬止まる。


そして大爆笑。


香澄が得点を確認する。


「結果発表ですたい!」


得点表が映る。


知佳は攻めすぎてマイナスが膨らみ、航平もパターン外しに引っかかって沈み、高槻も堅く取りながら誤答が響いた。

一番解答数が少なく、押す回数も少なかった涼太だけが、マイナスを最小限に抑えていた。


香澄が高らかに宣言する。


「優勝は……早乙女涼太さんです!」


涼太が両手を上げる。


「やった! 俺、ついにコネチカットで勝ちました!」


知佳が素で驚く。


「えっ、私、また負けたんですか?」


航平が笑う。


「涼太が一番押してないからね」


高槻が真面目に頷く。


「押さない勇気が勝利を呼びましたね」


知佳は悔しそうに言う。


「それ、クイズとして正しいんですか?」


小春が即答。


「今日のルールでは正しいです!」


そこへ大会委員長という謎の役職でノムさんが登場する。

手には小さな紙袋。


「優勝者には、ヒロ室より豪華粗品じゃ!」


涼太が紙袋を受け取り、その場で中身を確認する。


麗奈ちゃんプリペイドカード2000円分。

戦隊ヒロイン手ぬぐい。

なぜか麗奈ちゃんクリアファイル。


涼太は思わず言った。


「ショボっ」


香澄が慌てる。


「豪華粗品ですけん!」


ノムさんも胸を張る。


「粗品に豪華を求めるな!」


すると涼太はすぐに切り替え、陽菜の方へ向かった。


「陽菜ちゃん、このクリアファイルにサインしてもらっていい?」


陽菜は驚きながらも笑顔でサインする。


「はい。ありがとうございます」


会場から、


「いいなぁ〜」


という本気のため息が漏れた。


涼太は満足げにクリアファイルを掲げる。


「これが本当の豪華粗品です」


小春が締める。


「答えがほぼ全部コネチカットなのに、コネチカットパイセンが勝てませんでした!」


知佳は笑いながら頭を下げた。


「次は問題を最後まで聞きます」


イベント後、控室で知佳はソファに座っていた。

悔しそうではある。だが、それ以上に満足げだった。


「楽しかった〜。こういうの好き」


ひかりが少し申し訳なさそうに言う。


「パターン外し、意地悪でしたか?」


知佳は笑って首を振る。


「最高でした。真剣なのに、ちゃんと笑える。みんなでステージを作ってる感じがして」


香澄も頷く。


「会場も盛り上がったけん、大成功たい」


陽菜は涼太にサインしたクリアファイルの話でまだ照れている。

澪は静かに微笑み、沙羅は「まあ、悪くない余興でしたわ」と高飛車に言う。

小春はもう次回企画を考えていた。


「次は全部“青海”が答えのクイズやろう!」


知佳は即答した。


「それは私が不利だから嫌です」


会場もヒロインたちも笑い、知佳も笑う。

勝ち負けはグダグダだった。

賞品も粗品だった。

しかし、全員で同じ方向を向いて、ひとつの楽しい場を作った。


それこそが、知佳が戦隊ヒロインに求めていたものだった。

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