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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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那須の白湯の天使、ストライクを取りに行く――塩原結花、二刀流ヒロインとして立つ

塩原結花は、戦隊ヒロインの中でも明らかに変わり種だった。


栃木県那須塩原市在住。実家は那須高原のリゾート会社。上品なお嬢様で、立ち姿は清楚、笑顔は高原の朝風呂上がりのように爽やか。いつしか彼女は、仲間内でもファンからも**“那須の白湯の天使”**と呼ばれるようになっていた。


ただし、怒ると栃木弁が出る。


「栃木で好き勝手させねぇべ」


この一言が出た時の結花は、もう広告ポスターの爽やか令嬢ではない。敵の逃走経路を“レーン”として読み切り、容赦なく足元を崩す投てき型ヒロインになる。


加入当初の結花は、実は伸び悩んでいた。乗馬とスキーで鍛えた強靭な足腰、美しい姿勢、抜群の体幹、そして上品な容姿。素材は申し分ない。だが、戦隊ヒロインとしての決定打が足りなかった。


そこへ助言したのが、るみねぇだった。


「結花ちゃんよ、あんた足腰しっかりしてっぺ。だったら、誰もやってねぇことやってみっせ。ボウリングなんか向いてっかもしんねぇぞ」


結花は最初、きょとんとした。


「まあ、ボウリングですの? 少々、庶民的ではございますけれど……」


るみねぇは笑った。


「その“庶民的”って言い方がもうお嬢様なんだわ。でもな、ピンは正直だぞ。フォーム悪けりゃ倒れねぇ。逆に言えば、努力すりゃちゃんと返ってくる」


その言葉が、結花に刺さった。


練習を始めると、結花はみるみる上達した。下半身が強い。軸がぶれない。集中力がある。ボールを放つ瞬間の姿勢が美しい。まるで最初からレーンに立つために鍛えてきたようだった。


深夜の低視聴率番組**『スーパースターボウリング』**に出演した時、誰も大きな期待はしていなかった。だが結花は、番組史上初のパーフェクトを出してしまう。


そこから人生が一気に曲がった。

いや、結花らしく言えば、綺麗なカーブを描いた。


「さわやか結花さん」のキャッチコピーでシャンプーCMに起用され、艶やかな黒髪と高原のそよ風のような笑顔で人気爆発。さらにプロテストにも合格し、ついに現役女子プロボウラー兼戦隊ヒロインという前代未聞の二刀流が誕生した。


イベントステージでは、結花のボウリングワンポイントレッスンが大人気となる。


「皆さま、ボウリングは力任せではございませんの。大切なのは軸、目線、そして最後までボールを信じる心ですわ」


観客が頷く。


そこで結花は、ふっと栃木弁を混ぜる。


「そごで焦っちゃダメだべ。レーンをよう見ねぇと、曲がるもんも曲がんねぇんですの」


会場は笑う。

でも、なぜか分かりやすい。


すみれコーチも、結花の成長には目を細めていた。


「最初は綺麗だけど薄い子だと思ってた。でも今は違う。結花には“自分の型”がある。投げる前に現場を見る目、敵の動線を読む力、最後に決める度胸。これは本物だ」


るみねぇも誇らしげに言う。


「結花ちゃんはな、ちゃんと努力できるお嬢様なんだわ。口は上品でも、芯は強ぇ。あの子はもっと伸びっぞ。ボウリングでも、戦隊でもな」


戦闘任務での結花は、さらに異色だった。


倉庫では床の油膜を読む。

温泉街では湿った石畳を読む。

港では海風を読む。

川崎の河川敷では多摩川の風を読む。

清水港では茶箱の隙間を読む。


どんな場所でも、彼女はそこを“レーン”に変える。


「少々荒れたレーンですわね。けんど、読めねぇほどじゃございません」


そう言って放たれる制圧球は、敵の足元へ吸い込まれる。

一投目で崩し、二投目で残りを拾う。

まさにスペアメイク。


同期加入の山口唯奈との連携も、今では名物になった。茨城県常陸太田市出身の唯奈は、ドリームトラクター蒼牙2000・改を操る豪快なドライバー型ヒロイン。猪突猛進で、考えるより先に突っ込むタイプ。


対する結花は、上品で冷静な理論派。


普通なら合わない。

だが、意外とウマが合う。


「唯奈さん、前に出すぎますと私の投球ラインが塞がりますわ」


「分かってるっぺ!」


蒼牙2000・改が丁寧に告げる。


「唯奈さん、そのお返事が最も不安です」


「蒼牙ぁ!」


結花は微笑む。


「まあ、賑やかですこと」


この三者が揃うと、北関東ラインが完成する。

唯奈が塞ぎ、蒼牙が支え、結花が決める。

荒削りだが、破壊力は抜群だ。


結花の今後の目標は大きい。


プロボウラーとしては賞金女王。

戦隊ヒロインとしては世界平和。

そして、健全な青少年育成とボウリング普及。


本人はいたって真面目に言う。


「わたくし、賞金女王も世界平和も本気で狙っておりますの。そんで、子どもたちにもボウリングの楽しさを知ってほしいんだべ」


周囲は笑う。

でも、誰も否定しない。


塩原結花なら、本当にやりかねないからだ。


那須の白湯の天使。

さわやか結花さん。

ストライク令嬢。

プロボウラー兼戦隊ヒロイン。


肩書きは多い。

けれど、彼女の本質は一つ。


どんな荒れたレーンでも、最後まで見て、読んで、投げる。


今日も結花は、艶やかな黒髪を揺らしながらレーンに立つ。


「さあ、参りますわ。次も綺麗に倒してみせますの」


ピンも敵も、並んでいれば倒しやすい。

塩原結花の二刀流は、まだ始まったばかりである。

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