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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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レースクイーン非常線――麗奈、聞いてないままサーキットで暴れる

森に囲まれた巨大サーキットは、午後になっても熱気が引かなかった。


戦隊ヒロインのイベントステージは大成功。塩原結花の「レーシング・ストライク講座」、唯奈と蒼牙2000・改の撮影会、そしてレースクイーン姿の大宮麗奈と森川美里の華やかな登壇。観客席からは、エンジン音より大きな歓声が何度も上がっていた。


だが、ステージ袖で金城伊織だけが笑っていなかった。


伊織は、関係者通路を何度も行き来する男を目で追っていた。工具ケースを持っている。関係者パスもある。だが、動線がおかしい。ピット側へ向かうはずの人間が、観客導線の裏、機材保管エリア、電源設備の近くを何度も回っている。


伊織は彩芽の腕を掴んだ。


「彩芽、走らないでください」


「まだ何もしてねぇべさ!」


「今にも走りそうな顔をしています」


伊織はすみれコーチと理世を呼び、ステージ裏の仮設テントで臨時の作戦会議を開いた。


理世は施設図を見ながら、すぐに状況を整理した。


「ジェネラス・リンクの工作員と見て間違いありません。狙いは機材破壊、または車両制御系統への干渉。観客の前で騒ぎを起こすのが目的でしょう」


すみれコーチは舌打ちした。


「面倒な場所でやりやがる。観客に気づかせるな。隠密に潰す」


結花、唯奈、澪、小春、真白、エミリー、彩芽、伊織に指示が飛ぶ。表向きはイベント続行。裏では警戒線を張る。理世が導線を切り、真白が搬入口を確認し、小春が人混みを読む。澪は眠そうに見えて、音の違和感を拾う。


「……あの工具ケース、重そうじゃない」


小春が眉を上げる。


「中身、工具じゃねぇな」


作戦は静かに進むはずだった。


だが、なぜかそこにレースクイーン姿の麗奈と美里が巻き込まれた。


麗奈は観客対応を終え、笑顔で戻ってきたところだった。長身、長い脚、華やかな衣装。完全に本職モードである。


「ちょっと……ナニコレ? 私、聞いてないんだけど??」


すみれコーチが短く言う。


「人手が足りない。頼む」


「頼むじゃないでしょ! 私、今レースクイーンなんだけど!」


美里は困ったように笑う。


「麗奈さん、もう巻き込まれてます」


その瞬間、工作員の一人が機材庫へ走った。


麗奈の目つきが変わった。


「……ああもう。衣装汚したら請求するからね!」


次の瞬間、麗奈は長い脚を振り抜いた。工作員の手元の装置が弾かれ、男は派手に転倒する。続けて、長い腕で相手の肩を押さえ、体勢を崩したところを軽く払い落とす。


観客の一部が偶然それを見て、拍手した。


「すげぇ!」


「レースクイーンのアクションショー!?」


麗奈はその歓声を聞くと、急に得意げになった。


「まあ、見せ場としては悪くないわね」


美里も成り行きで参戦する。派手さは麗奈ほどではないが、身のこなしは軽い。観客に笑顔を向けながら、逃げる工作員の進路を自然に塞ぐ。


「すみません、こちら関係者通路です」


そのまま肘で相手のバランスを崩す。


小春が呆れる。


「本職イベントコンパニオンって、あんな強ぇのかよ」


結花は微笑む。


「麗奈さん、レーンに立つと華がありますわ」


だが、麗奈は派手にやりすぎた。


工作員を蹴り飛ばした勢いで、横に置かれていた撮影用の照明スタンドが倒れる。さらに敵の装置を止めようとして、なぜか制御パネルの外装まで割った。


ガシャーン。


すみれコーチが天を仰ぐ。


「あー……また仕事が増える」


理世が淡々と言う。


「破損機材、三点。修理見積りが必要です」


真白はすでにメモを取っていた。


「後で梱包して運びます。太田の工場宛てでいいですか?」


すみれはため息をついた。


「頼む。うちの実家工場で直す」


麗奈はまったく悪びれない。


「壊れる方が悪いんじゃない?」


「悪いのは壊した奴だ!」


一方、主犯格の工作員がコース側へ逃げ込んだ。


理世が叫ぶ。


「唯奈さん、蒼牙2000・改、出番です。結花さん、同乗してください」


唯奈は運転席で笑った。


「待ってたっぺ!」


蒼牙の落ち着いた声が響く。


「唯奈さん、コース内では安全速度を厳守してください」


「分かってるっぺ!」


「そのお返事が最も不安です」


結花が乗り込む。


「蒼牙さん、よろしくお願いいたします」


「結花さん、こちらこそ。足元にご注意ください」


蒼牙2000・改がゆっくりとコースへ出る。観客席がざわめいた。さっきまで展示車両だった巨大な相棒が、今度は実際に動いている。


逃げる工作員はコース脇を走る。唯奈は進路を読み、蒼牙で逃走ラインを塞ぐ。


「そっちは通さねぇっぺ!」


結花は荷台側から制圧球を構えた。


「これは広いレーンですわね。けれど、逃げ筋は読めますの」


敵が横へ逃げる。

蒼牙が半歩進路を切る。

唯奈がタイミングを合わせる。


「結花、今だっぺ!」


「ストライクですわ」


結花の投てきがコース上を低く走り、工作員の足元を正確に崩した。男は転倒し、伊織と彩芽がすぐに確保する。


任務完了。


観客席から大拍手が起きた。事情を知らない観客には、まるで予定されたスペシャル演出に見えていた。


そして、なぜかそのままウイニングランのようになった。


唯奈が運転する蒼牙2000・改。

その横に立つ結花。

二人はゆっくりとコースを一周する。


観客が手を振る。


「結花さーん!」


「唯奈ー!」


「蒼牙かっこいい!」


結花は上品に手を振った。


「皆さま、ありがとうございました」


唯奈は満面の笑み。


「最高だっぺ!」


蒼牙も静かに言う。


「皆さまのご声援、光栄です」


麗奈は腕を組んで、それを眺めていた。


「最後だけ妙に感動的なの、ずるくない?」


美里が苦笑する。


「でも、絵になりますね」


その横で、すみれコーチは壊れた機材を見ていた。


「照明、パネル、支柱……あー、修理三日はかかるな」


麗奈は涼しい顔で言う。


「私のおかげで盛り上がったんだから、実質プラスでしょ」


すみれは静かに返した。


「そのプラスを直すのは私だ」


こうして、華やかなイベントの裏で起きたサーキット非常線は、観客にほとんど気づかれることなく完了した。


いや、少し気づかれていた。

だが観客は、それも含めて演出だと思っていた。


結花、唯奈、蒼牙2000・改の北関東ライン。

そして、聞いていないまま戦闘に巻き込まれたレースクイーン麗奈と美里。


サーキットの歓声は、最後まで止まらなかった。

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