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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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973/1043

蒼牙とストライク令嬢――北関東ライン、初の合同制圧任務

茨城県結城市。


茨城県西部に位置し、栃木県小山市と隣り合う県境の町である。古くから結城紬で知られ、城下町の落ち着いた風情を残しながら、北関東の交通と物流の結節点としても機能する。茨城でありながら栃木との距離感が近く、県境を越えた生活圏が自然に混ざり合う土地だった。


この町外れにある廃工場で、ジェネラス・リンク系の工作員が大型機材を搬出しようとしているとの情報が入った。


投入されたのは、塩原結花、山口唯奈とドリームトラクター蒼牙2000・改、すみれコーチ、館山みのりと杉山ひかりのグレースフォース、柏木理世、高城彩芽、金城伊織。


今回の作戦には、すみれコーチの狙いがあった。


「今日は唯奈と結花を組ませる。北関東ラインを実戦で使えるか見るぞ」


理世はすぐに図面を広げた。


「了解しました。彩芽さんと伊織さんで敵を動かし、グレースフォースが左右から追い込みます。最後に唯奈さんと蒼牙2000・改で搬入口を塞ぎ、結花さんが制圧します」


唯奈は運転席から身を乗り出す。


「よっしゃ、派手にいくっぺ!」


蒼牙の落ち着いた声が響いた。


「唯奈さん、そのお言葉を聞くたびに少々不安になります」


「蒼牙ぁ! 最初からそれはないっぺ!」


結花は上品に笑った。


「まあ、蒼牙さんは正直でいらっしゃいますのね」


「結花さん、本日の床面には油膜と金属片が確認されています。助走時は足元にご注意ください」


「ありがとうございます。心強いですわ」


唯奈がむくれる。


「わたしより結花の心配してねぇか?」


「唯奈さんは、多少の悪路でも前進されますので」


「褒めてるのか雑なのか分かんねぇっぺ!」


すみれコーチは笑いをこらえた。


「いいじゃねぇか。蒼牙は保護者みたいなもんだ」


一方、みのりとひかりは作戦前から妙に距離が近かった。


みのりが地図を指す。


「ひかり、ここで一歩だけ右を空けて。敵はそこへ流れるはず」


ひかりはにっこり頷く。


「うん。みのりが読むなら、私は合わせるよ」


彩芽が小声で言う。


「この二人、任務前からラブラブだべさ」


伊織が冷静に返す。


「見なかったことにしましょう。任務中です」


作戦開始。


彩芽が真っ先に飛び出した。


「おらぁ! こっちだべさ!」


伊織はその横で静かに圧をかける。


「逃げ道を選ばされていることにも気づかないのですね」


敵は挑発に乗り、中央通路へ動き出す。


そこへグレースフォースが入る。


みのりが鋭く読む。


「ひかり、今。左を塞いで、右へ流して」


「了解。みのりの読み、今日もきれいだね」


「そういうこと、任務中に言わないで」


「でも本当だもん」


彩芽がまた小声で言う。


「やっぱりラブラブだべ」


伊織はため息をついた。


「否定材料がありません」


敵は完全に誘導され、搬入口方面へ追い込まれていく。


理世はタブレットを確認しながら小さく頷いた。


「想定通りです」


そして、搬入口。


ドリームトラクター蒼牙2000・改が重々しく前へ出た。


唯奈が叫ぶ。


「ここは通さねぇっぺ!」


蒼牙が丁寧に告げる。


「搬入口の封鎖、完了しました。結花さん、どうぞ」


結花は軽く会釈した。


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えまして」


廃工場の床を、結花はレーンのように見た。


油染み。

金属片。

床の傾斜。

機械の脚。

敵の足幅。


「少々荒れたレーンですわね。けんど、読めねぇほどじゃねぇべ」


普段の爽やかな令嬢口調に、栃木弁が混じる。

彩芽が目を輝かせた。


「出た! 栃木モードだべさ!」


結花は制圧球を構えた。


低い助走。

美しい踏み込み。

しなやかなリリース。


球は床を低く走り、機械の脚に当たって角度を変えた。逃げる敵の足元へ吸い込まれ、一人、二人と転倒させる。


唯奈が大興奮する。


「結花、すげぇっぺ!」


蒼牙も落ち着いた声で続く。


「結花さん、お見事です。投球角度、極めて正確でした」


「まあ、ありがとうございます」


唯奈が叫ぶ。


「蒼牙、わたしも褒めろっぺ!」


「唯奈さんも、今回は前進距離が適切でした」


「今回はって何だっぺ!」


残った敵が横へ逃げる。


グレースフォースが再び動く。


ひかりが敵を軽やかに誘導し、みのりが一歩先を読む。


「その角度なら、結花の二投目に入る」


「さすがみのり。ぴったりだね」


「ひかりが合わせてくれるから」


彩芽が呟く。


「もう夫婦だべさ」


伊織が言った。


「彩芽さん、黙って追い込みましょう」


最後の敵が突破しようとした瞬間、唯奈が蒼牙を半歩前へ出す。


「止まれっぺ!」


蒼牙が即座に補足する。


「進路封鎖、維持します。結花さん、残り二名です」


結花は二投目を構えた。


「残りピンは、きちんと拾いますわ」


そして放つ。


球は一直線に伸び、床の溝をかすめて角度を変え、最後の敵二人の足元をまとめて崩した。


「ストライクですわ」


任務完了。


廃工場に静けさが戻った。


すみれコーチは満足げに腕を組む。


「いいじゃねぇか。唯奈、突っ込みすぎなかったな。結花もラインをよく読んだ」


理世も珍しく口元を緩めていた。


「作戦成功率は想定以上でした。彩芽さんと伊織さんの囮、グレースフォースの誘導、唯奈さんと蒼牙2000・改の封鎖、結花さんの制圧。連携としては高評価です」


すみれが笑う。


「理世、嬉しそうだな」


「嬉しくはありません。計画が機能しただけです」


「それを嬉しいって言うんだよ」


唯奈が結花へ駆け寄る。


「結花、やったっぺ!」


結花も微笑む。


「唯奈さんがきちんと塞いでくださったからですわ」


蒼牙が静かに言う。


「北関東ライン、連携良好です」


唯奈は車体をぽんと叩いた。


「蒼牙もそう言ってるっぺ!」


「ただし唯奈さん、次回は作戦開始前の掛け声をもう少し抑えてください。敵に意図が伝わります」


「最後に刺してくるっぺな!」


結花は髪を整え、すっといつもの爽やかな顔に戻った。


「皆さま、お疲れさまでした。少々荒れたレーンでしたけれど、無事にストライクでございましたわ」


彩芽が驚く。


「戻るの早ぇべさ!」


ひかりが笑う。


「さわやか結花さん、復活だね」


みのりも頷く。


「戦闘後の切り替えまで美しいです」


すみれコーチはうなずいた。


「北関東ライン、使えるな」


理世も静かに言った。


「次は、より複雑な現場でも試せます」


性格は正反対。

唯奈は勢い。結花は計算。

だが、同期入隊の同級生だからか、不思議と息が合う。


その間に立つ蒼牙2000・改は、丁寧で少し辛辣な執事のように二人を支える。


後に戦隊ヒロイン内で、この三者連携はこう呼ばれるようになる。


蒼牙とストライク令嬢。


荒削りだが、破壊力抜群。

北関東ラインの初陣は、結城市の廃工場で鮮やかに決まった。

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