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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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971/1043

那須野倉庫ストライク作戦――結花、七番ピンの角度で逃走路を塞ぐ

栃木県那須塩原市。


那須連山を望み、温泉、高原リゾート、牧場、スキー場、そして幹線道路沿いの物流拠点まで揃った、栃木県北部の要所である。観光地としての爽やかさと、県北の交通・産業を支える実用性が同居する町。塩原結花にとっては、まさにお膝元だった。


その郊外にある大型物流倉庫で、ジェネラスリンク系の違法部品が動いているとの情報が入る。


投入されたのは、塩原結花、山口唯奈とドリームトラクター蒼牙2000・改、すみれコーチ、南部沙羅、水無瀬澪、柏木理世、高城彩芽、金城伊織。


作戦立案は理世だった。


理世は倉庫の見取り図を机に広げ、淡々と説明する。


「敵は中央通路から逃げます。理由は単純です。搬入口に近く、左右の棚で視界を切れるからです」


沙羅が髪を払う。


「ずいぶん断定しますね」


理世は表情を変えない。


「断定できる配置です。沙羅さんと澪さんは横導線を潰してください。彩芽さんと伊織さんは囮。唯奈さんは蒼牙で搬入口を塞ぎます。最後は結花さんです」


結花は静かに頷く。


普段の彼女は、高原のそよ風のような爽やかさを持つ“さわやか結花さん”である。シャンプーCMで風に髪をなびかせ、上品に微笑む令嬢ヒロイン。


だが、この日は違った。


地元・那須塩原で好き勝手をされた怒りが、じわりと滲んでいた。


「栃木では好き勝手させねぇ。こごはあんたらの遊び場じゃねぇんだわ」


沙羅が小声で言う。


「結花さん、口調がかなり怖いです」


すみれコーチは腕を組んで笑った。


「地元で火がついたな。いい顔してる」


任務開始。


彩芽が勢いよく倉庫内へ飛び込む。


「こっちだべさ! 捕まえられるもんなら捕まえてみろ!」


伊織は対照的に冷静だった。


「動線を読まれていることにも気づかないのですね」


二人の囮に反応し、敵が動く。


沙羅はパレットと空コンテナを利用して、さりげなく通路を絞る。


「こちらは通れません。美しくありませんから」


澪はぼーっと棚の陰に立っている。


「……たぶん、右」


その一言で、理世が目線を動かす。


「想定通りです」


唯奈の蒼牙2000・改が低く唸った。


「搬入口、塞ぐっぺ!」


巨大な車体が回り込み、敵の退路を完全に潰す。敵は慌てて横へ逃げようとした。


その瞬間、結花が前へ出る。


床を見た。


油膜。

わずかな傾斜。

フォークリフトのタイヤ跡。

棚の脚。

敵の足幅。

逃げる方向。


結花の目には、倉庫の床がボウリングレーンのように見えていた。


「少々、荒れたレーンですわね。けんど、読めねぇほどじゃねぇべ」


制圧球を構える。


低い助走。

乗馬とスキーで鍛えた足腰。

プロボウラーとして磨いたリリース。


「七番ピンを取る角度ですの。……逃がさねぇかんな」


球は床を滑るように走り、棚の脚に当たって角度を変えた。まるで計算されたスプリットメイクのように、敵の足元へ吸い込まれる。


一人が転倒。

二人目が巻き込まれる。

三人目が足を止める。


唯奈が蒼牙の運転席から叫ぶ。


「結花、今のエグいっぺ!」


結花は二投目を手にした。


「まだ残っておりますわ。スペアはきちんと拾いませんと」


最後の敵が反対方向へ走る。


澪がぼーっと指差す。


「……そっち、行き止まり」


伊織が静かに退路へ立つ。


「残念ですが、そこは終点です」


彩芽が横から飛び込む。


「逃がさねぇべさ!」


そして結花の二投目。


今度は真ん中。


「ストライクですわ」


球は一直線に走り、残った敵の足元をまとめて崩した。


任務完了。


倉庫内に静けさが戻る。


理世はタブレットに記録を入れながら、満足げに小さく頷いた。


「想定通りです」


のどかな顔ではない。

だが、かなり満足しているのは分かる。


すみれコーチが笑う。


「理世、嬉しそうだな」


「嬉しくはありません。計画が予定通りに機能しただけです」


沙羅が横から言う。


「それを嬉しいと言うのでは?」


理世は一瞬だけ黙った。


「……評価に値します」


すみれコーチはさらに笑った。


唯奈が蒼牙から身を乗り出す。


「結花、北関東ライン、効いてたっぺ!」


結花はまだ少し怒りの残った顔で言う。


「当然だべ。栃木と茨城、なめられたら困っからな」


だが数秒後。


結花は髪を整え、ふっと爽やかに微笑んだ。


「皆さま、お疲れさまでした。少々荒れたレーンでしたけれど、無事にストライクでございましたわ」


沙羅が呆れる。


「戻るのが早すぎます」


澪はぼーっと言う。


「……さわやか」


彩芽は目を輝かせる。


「結花さん、めっちゃ強ぇべさ!」


伊織も静かに頷く。


「優雅なのに、容赦がありませんね」


すみれコーチは腕を組んだ。


「これが結花の武器だな。唯奈との連携も悪くない。まだ荒いけど、北関東ライン、かなり使える」


結花は上品に一礼する。


「まあ。次はもっと綺麗なストライクにしてみせますわ」


翌日。


結花は何事もなかったようにイベントステージに立っていた。


「皆さま、ボウリングは力任せではございませんの。肩の力を抜いて、さわやかに参りましょう」


昨日、那須塩原の倉庫で敵をまとめて転がした女とは思えない爽やかさだった。


だが唯奈だけは、控室で小さく笑う。


「昨日の結花、怖かったっぺ」


結花はにこりと微笑む。


「何のことでございましょう?」


さわやか結花さんは、今日も完璧だった。

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