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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ヒロヒロクエスト第12話 当たった理由は本人も分からない――梨乃、徳山で高配当の女神になる

光市で「ご安全に」と声をそろえたヒロヒロ一行は、オンボロのあきでんバスに揺られ、さらに山口県内を進んだ。


次の目的地は、周南市。


瀬戸内海に面した周南市は、山口県東部を代表する工業都市である。徳山港を中心に発展し、石油化学コンビナートの迫力ある景観、夜景、港町らしい活気、そして市街地の利便性が同居する。硬派な産業の町でありながら、海も山も近い。働く町の力強さと、瀬戸内の穏やかさを併せ持つ、山口県でも存在感のある街だった。


のどかは車窓からコンビナートを見て言った。


「周南、ええ町じゃね。工場の迫力があるわ」


みーちゃんも頷く。


「工業都市としての厚みがありますね。港と物流と化学産業が一体になっている感じがします」


梨乃は窓の外を眺めながら言った。


「工場って、夜になったら光るん?」


「そこはまあ、合っとる」


今回の会場は、徳山ボートレース場。


瀬戸内の風を受ける水面、レース場らしい熱気、観客席の独特なざわめき。ボートレース徳山は、水面が比較的穏やかで、選手の技量やスタート勘が結果に反映されやすいとも言われる、ボートレースファンには知られた場所である。


主催者とヒロヒロの共同イベントとして用意された企画は、もちろん普通ではなかった。


ノムさんが高らかに宣言する。


「今日は、ヒロヒロ杯・艇王決定戦じゃ!」


のどかは眉をひそめる。


「また名前だけ立派なくだらん企画じゃろ」


その通りだった。


第一競技は、段ボールボート工作大会。


各メンバーが理想のボートを段ボールで作る。ゆりえはキラキラ飾りをつけた可愛いボートを作り、結衣はなぜか神殿のような静謐な船を作った。沙羅は金色の紙を貼り、「高級感が大事です」と言い張る。澪はただの四角い箱を作り、「……浮きそう」とだけ言った。


そして梨乃。


梨乃の段ボールボートは、船というよりただの箱だった。


のどかが聞く。


「梨乃、それ船なん?」


梨乃は自信満々に答えた。


「うん。乗れそうやろ?」


「沈むわ」


観客は大爆笑。配信コメントも流れる。


梨乃のやつ、ただの荷物

ヒロヒロらしすぎる

でも楽しそう

地上波では絶対無理


第二競技は、ボート選手モノマネ大会。


のどかが熱血実況を真似し、結月は元アスリートらしく選手のスタート姿勢を妙にリアルに再現した。ゆりえはアイドル風に手を振りながら「いきまーす!」と可愛くまとめる。


澪はぼーっと立っているだけだった。


「……水、速い」


なぜかウケた。


第三競技は、モーター音当てクイズ。


録音されたモーター音を聞いて、状態を予想する企画だったが、ヒロヒロメンバーは誰も分からない。


梨乃だけが真剣に耳を澄ませて言った。


「これは、元気そうな音」


不正解だった。


だが、客席は笑った。


主催者の担当者も苦笑する。


「内容は馬鹿馬鹿しいのに、なぜかお客さんが楽しんでいますね」


ノムさんは胸を張る。


「それがヒロヒロじゃ!」


のどかは呆れながらも、どこか楽しそうだった。


そして、メインイベント。


ヒロヒロメインレース予想検討会である。


ここだけは少し真面目だった。

少しだけ。


のどかは堅実派だった。


「やっぱりイン有利を基本に見るべきじゃね。展示も見た上で、無理な穴狙いはせん方がええ」


ゆりえも慎重に予想する。


「展示タイムが良い選手と、最近安定している選手を重視したいです。あまり冒険しすぎない方がいいと思います」


結月はアスリート視点だった。


「スタートの集中力、ターンの身体の使い方、近走の流れを見たいですね。勝負どころで前へ出られる選手かどうかが大事です」


真帆は資料を見て冷静。


「数字です。勝率、展示、モーター、枠番。感覚だけでは買いません」


結衣は静かに目を閉じた。


「今日は……三号艇が呼ばれている気がします」


のどかが聞く。


「呼ばれとるん?」


「はい。水の流れが、少し」


沙羅は腕を組んで言う。


「私は名前の響きが強そうな選手を選びます」


「それは予想なん?」


そして最後に、梨乃。


全員が少しだけ身構えた。


梨乃は出走表をじっと見ている。


見ているが、たぶん理解していない。


「梨乃、どう見るん?」


のどかが聞くと、梨乃は首を傾げながら言った。


「うーん……五号艇」


「根拠は?」


「色がきれい」


会場が静まる。


梨乃は続ける。


「あと二号艇」


「なんで?」


「なんか好き」


さらに。


「六号艇も」


のどかが頭を抱える。


「五、二、六? それ、かなり無茶苦茶じゃろ」


真帆が冷静に言う。


「買い目としてはかなり強引ですね」


結月も苦笑する。


「展開が相当荒れないと難しいです」


梨乃はにこにこしている。


「そうなん?」


本人は何も分かっていなかった。


コメント欄は盛り上がる。


梨乃予想、根拠ゼロ

色がきれいw

これは当たらん

でも梨乃だから怖い

逆に来たら神


レースが始まった。


スタート展示の雰囲気とは違い、本番はやや荒れた展開になった。

一号艇が少し遅れ、三号艇が攻める。そこへ五号艇が外から伸びる。


のどかが叫ぶ。


「ちょっと待って、五が来とる!」


結月も身を乗り出す。


「ターンが鋭い!」


二号艇が内を残す。

六号艇が大外から絡む。


実況が熱を帯びる。


「五号艇先頭! 二号艇続く! 六号艇が三番手争い!」


のどかは完全に固まった。


「まさか……」


ゴール。


着順は、五、二、六。


梨乃の予想が的中した。


しかも高配当。


会場が一瞬静まり、次の瞬間どよめいた。


「うそだろ!」


「梨乃ちゃん当てた!」


「高配当じゃないか!」


「先生!」


「梨乃先生!」


「女神!」


梨乃はきょとんとしている。


「え、何が?」


ノムさんは大興奮で梨乃の肩を掴んだ。


「梨乃! お前、ボートレースの仕事増えるぞー!」


梨乃は首を傾げる。


「仕事?」


「予想の仕事じゃ!」


「うち、予想したん?」


全員が突っ込んだ。


「したやろ!」


のどかは呆然としている。


「意味分からん予想が当たるとか、怖すぎるわ」


真帆も珍しく苦笑した。


「統計では説明しにくいですね」


結衣は静かに言う。


「水が呼んだのかもしれません」


「梨乃はたぶん呼ばれてない」


ゆりえは笑って拍手する。


「でもすごいです! 梨乃ちゃん、神様みたい!」


梨乃はようやく少し嬉しそうにした。


「じゃあ、ソフトクリーム食べてええ?」


「話が戻るの早い!」


ファンが梨乃の周りに集まり始めた。


「次の予想も教えて!」


「先生、お願いします!」


「梨乃神!」


梨乃は困った顔をする。


「えっと……次は、赤いの?」


のどかが慌てて止める。


「もうやめときんさい! ボートレースは自己責任で楽しむんよ!」


真帆もマイクを持つ。


「本日の梨乃さんの予想は、再現性がありません。絶対に参考にしすぎないでください」


コメント欄は止まらない。


再現性なしw

梨乃神爆誕

これは仕事来る

本人が一番分かってない

ヒロヒロ、また伝説作った


イベントは大成功だった。


ボートレース主催者も満面の笑みだった。


「いやあ、盛り上がりました。梨乃さん、またぜひ」


梨乃はにこにこしている。


「またソフトクリームある?」


ノムさんは上機嫌で言う。


「任せとけ。梨乃はボートレース場を回る仕事が増えるでぇ!」


のどかは頭を抱えた。


「また変な方向に広がる……」


徳山の空は晴れていた。


ヒロヒロ一行は、なぜか“高配当の女神”となった梨乃を乗せ、オンボロバスへ戻っていく。


次の目的地へ向かう道中、梨乃はまだ不思議そうにしていた。


「うち、何かすごいことしたん?」


澪がぼーっと答える。


「たぶん」


沙羅が言う。


「本人が分かっていないところが、一番怖いですね」


のどかは窓の外を見ながら呟いた。


「ヒロヒロ、どこまで行くんじゃろうね……」


オンボロバスは、また瀬戸内沿いを走り出す。


次の町でも、何かが起きる気配だけはあった。

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