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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ヒロヒロクエスト第9話 通行料310円から始まる大騒動――ヒロヒロ、錦帯橋で本気になる

山口県岩国市の朝は、やけに澄んでいた。


前夜、岩国錦帯橋空港で安岡真帆と合流し、瓦そばを堪能したヒロヒロ一行は、いよいよ岩国観光の王道、錦帯橋へ向かった。


錦帯橋。

五連の木造アーチが錦川に架かる、日本屈指の名橋である。江戸時代から岩国の象徴として親しまれ、独特の反りと木組みの美しさは、ただの橋というより一つの芸術品だった。世界遺産登録も目指しており、岩国が誇る歴史と技術と景観の結晶である。


そんな場所で、ヒロヒロがやることは決まっていた。


ノムさんが胸を張る。


「今日は錦帯橋選手権じゃ!」


のどかは即座に顔をしかめた。


「世界遺産候補で何してるんですか」


配信タイトルは、


テレビじゃ見れないヒロヒロ劇場

第一回 錦帯橋五連アーチ完全制覇選手権


コメント欄は開始前から荒れていた。


また始まった

ヒロヒロが山口まで来た

錦帯橋で何する気だ

真帆さんがいるから少しは真面目になるはず


だが、最初に全員のテンションを下げたのは、イベント内容ではなかった。


通行料だった。


真帆が財布を取り出して言う。


「みんな、ちゃんと支払ってね~」


一同、固まる。


のどかが首をかしげた。


「え?」


ゆりえも目を丸くする。


「自腹ですか?」


沙羅はやや不満そう。


「経費ではありませんの?」


梨乃はぼんやり聞く。


「橋渡るのにお金いるん?」


ノムさんまで言う。


「ワシも?」


真帆は涼しい顔で、きっぱり言った。


「当然です。この通行料は、この美しい橋の景観維持に活用されます」


そして、当然のように自分の財布から三百十円を出した。


ヒロインたちは少し不満げだったが、真帆の言い方があまりに正論すぎて、誰も反論できない。


澪だけは、ぼーっと言った。


「まぁ、仕方ないか」


のどかが驚く。


「澪が一番大人じゃん」


コメント欄は好意的だった。


ちゃんと払うの偉い

通行料PRになってる

310円でこの景色なら安い

真帆さん正論

ノムさんも払え


ノムさんは渋々払った。


「ワシの分も経費で落ちんかのう」


真帆が即答する。


「落ちません」


こうして全員、ポケットマネーで通行料を払い、錦帯橋へ入った。


第一種目は、錦帯橋アーチ越え美しさ選手権。


五連アーチをいかに美しく渡るか。


ルールは曖昧。

採点基準も曖昧。

だが、ヒロヒロなので問題ない。


ゆりえはアイドルらしく笑顔で渡り、途中で手を振る。


「錦帯橋、きれいです!」


沙羅はモデルのようにゆっくり歩く。


「橋の曲線と私の歩幅、悪くありませんね」


梨乃は普通に歩いた。


「段差、ちょっとしんどい」


なぜか拍手が起きた。


コメント欄。


梨乃が一番自然

何もしてないのに面白い

沙羅、橋より自分見せてる


第二種目は、錦帯橋歴史クイズ。


ここでは、みーちゃんが強かった。

のどかも強い。

結衣も静かに正解する。


しかし梨乃は違った。


「錦帯橋を最初に架けた岩国藩主は?」


梨乃は自信満々に言った。


「橋の人」


のどかが叫ぶ。


「誰じゃ橋の人!」


第三種目は、錦帯橋を一番上手に描け選手権。


澪の絵は、五連アーチというより、眠そうなミミズだった。


「……たぶん橋」


沙羅は絵を見て言った。


「抽象画ですね」


ゆりえは優しい。


「かわいいです!」


コメント欄。


澪画伯

錦帯橋、溶けてる

これはこれで味がある


第四種目は、錦帯橋を見ながら岩国名物を語れ。


ここで真帆が本領発揮した。


「岩国には錦帯橋だけでなく、岩国城、錦川、岩国寿司、岩国れんこん、空港、基地、城下町文化があります。広島との結びつきも強く、山口県東部の玄関口として非常に面白い土地です」


完璧だった。


のどかが小声で言う。


「強い」


みーちゃんも頷く。


「地元補正がありますね」


第五種目は、五連アーチ完全制覇チャレンジ。


五つのアーチを渡りながら、岩国をPRする。


ゆりえは途中で笑い出す。

梨乃は観光客の犬に気を取られる。

のどかは観光客に話しかけられて脱線する。

結衣は声が小さすぎる。

沙羅は自分の髪を気にしすぎる。

澪は一言だけ。


「……いい橋」


そして真帆。


「岩国は、歴史と自然と産業が共存する町です。錦帯橋を渡ったら、ぜひ岩国城や城下町散策、地元グルメも楽しんでください。瓦そば、岩国寿司、れんこん料理もおすすめです」


完璧だった。


マッチコミッショナーを自認するノムさんが叫ぶ。


「優勝、安岡真帆!」


真帆はなぜか胸を張った。


「優勝は私です」


のどかと梨乃が、わざとらしくズッコケた。


「当然みたいに言うんじゃ!」


「真帆さん強いなぁ」


コメント欄は大爆笑。


真帆強すぎ

地元チート

優勝宣言草

ヒロヒロに染まってる

これぞヒロヒロクォリティ


優勝賞品として、ノムさんから岩国れんこんせんべいが手渡された。


真帆は受け取り、すぐにカメラ目線になった。


「これは視聴者の皆さんのお陰で獲得できたものなので、視聴者プレゼントにします。ご希望の方はブラックキャブプロダクションまで官製はがきで住所、氏名、電話番号を記載の上、番組の感想なども添えてお送りください。当選は賞品の発送をもってかえさせていただきます」


一同、固まった。


のどかが呟く。


「急に昭和の番組になった」


コメント欄はさらに荒れた。


今時官製ハガキで応募??

メールじゃないの草

これぞヒロヒロクォリティ

岩国れんこんせんべい美味しいよ

ブラックキャブにハガキ送るの怖い

住所氏名電話番号てガチすぎる


ノムさんは大喜び。


「ええぞ真帆! 分かっとるのう!」


一方、新橋ヒロ室。


遥室長と琴音は、配信を“監視”していた。


画面では真帆が、官製はがきでの応募を呼びかけている。


遥は静岡茶を持ったまま呆れる。


「真帆まで一緒になって何してるら……」


琴音が横から言う。


「笑っていますよ」


「笑ってないら」


しかし、口元は明らかに緩んでいた。


さらに梨乃が「官製はがきって食べられるん?」と言い出し、遥はついに吹き出した。


「……次元が低いら。でも、悔しいけど面白いだよ」


配信は大成功だった。


美しい錦帯橋。

全員自腹の通行料。

謎の五種目選手権。

真帆の地元チート優勝。

官製はがきプレゼント。


良くも悪くも、まさにヒロヒロだった。


そして後日、ブラックキャブプロダクションには本当に官製はがきが殺到したとか、しなかったとか。


ノムさんはしばらく、


「ワシの会社、昭和のテレビ局みたいになっとる」


と嬉しそうに語ったという。

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