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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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熱湯か、戦隊か――秋田美人と富山湾マーメイド、昼バラへ沈む・生放送編

日曜午後。

人気生放送番組『ハイパージョッキー』のスタジオは、始まる前から騒がしかった。


総合司会は、世界のキタノ。

足立区が生んだ毒舌芸人にして、世界的評価を受ける映画監督。笑いも映画も毒も一級品、テレビに座っているだけで空気を支配する男である。


その周囲では、キタノ軍団の面々が本番前から走り回っていた。


「押すなよ!」

「まだ押してねえよ!」

「だったら今押せよ!」


もう収拾がついていない。


そこへ、ブラックキャブプロダクションのノムさんが、阿部柚葉と氷見ゆりえを連れて入ってきた。


柚葉は秋田県にかほ市出身。

色白で端正な顔立ち、長い手足を持つ“規格外の秋田美人”。


ゆりえは十九歳のグラビア系戦隊ヒロイン。

富山湾のマーメイドと呼ばれる、明るく華のある人気者。


二人は写真集を抱えて、かなり真面目な顔をしていた。


ノムさんだけが異様に上機嫌だった。


「今日は売るでぇ!」


名物コーナー、熱湯PRタイムが始まる。


司会は、キタノ軍団古参のブーゲンビル・タカ。

軽妙な毒舌と段取りの良さで、混沌とした生放送をなぜか成立させるベテランである。


隣には、色気と笑いの間合いを心得た女性タレント。


ブーゲンビル・タカが笑顔で紹介する。


「本日の挑戦者は、戦隊ヒロインからグラビア写真集を出したお二人です!」


まずは柚葉の写真集。


『白嶺のヴィーナス――阿部柚葉、二十歳の透明衝撃』


タカがページをめくった瞬間、大げさにのけぞる。


「うわ、これはすごい! 鳥海山、にかほ、サイパン! 戦隊ヒロインってこういう仕事もするんですか!」


世界のキタノがぼそり。


「最近の戦隊は怪人より出版社と戦ってんだな、バカヤロー」


スタジオ爆笑。


続いて、ゆりえの写真集。


『潮騒のマーメイド――氷見ゆりえ、十九歳のきらめき』


女性司会者が感嘆する。


「透明感ありますねえ」


軍団の一人が茶々を入れる。


「透明感っていうか、富山湾が強いですね!」


キタノが即座に斬る。


「お前のコメントは浅瀬だよ」


さらに爆笑。


タカはノムさんへ振る。


「ノムさん、今度は何持ってきたんですか?」


ノムさんは胸を張る。


「規格外の秋田美人と富山湾のマーメイドじゃ! これは売れるでぇ!」


「社長が一番宣伝してますね」


そして熱湯ルーレット。


マスは、

柚葉だけ、ゆりえだけ、柚葉+ゆりえ、柚葉+ゆりえ+ノムさん、軍団、ダチョウ風三人衆、そして殿。


ノムさんが焦る。


「ちょい待ちぃや! ワシが熱湯に入るなんて聞いとらんぞ!」


タカは涼しい顔。


「全自動制御ですから。どこに止まるか分かりません」


キタノがニヤリ。


「分かんねえって顔して、全部分かってる顔だな」


ボタンを押すのは、ゆりえ。


「ストップ!」


止まった先は――


柚葉+ゆりえ+ノムさん


スタジオ大爆笑。


ノムさんは両手を広げる。


「おかしいじゃろ! このマスだけ妙に広かったぞ!」


キタノが毒づく。


「社長、自分で売りに来たんだから体も張れよ。テレビってのはそういう地獄だ」


次は名物の早着替え。


柚葉とゆりえ用の着替えボックス、ノムさん用のボックスが別々に用意される。


ところがノムさん、なぜか柚葉たちのボックスへ歩き出した。


「ワシもこっちで――」


瞬間、軍団が一斉に飛びかかる。


「社長! そっちじゃない!」

「退場!」

「ブーゲンビルさん、捕獲しました!」


キタノが冷静に言う。


「おい、誰か警察呼べ。いや、今のが一番数字取ったか」


スタジオ大爆笑。


柚葉とゆりえは練習通り早着替えに挑む。

ただしボックスが狭い。途中でタオルが投げ込まれ、女性司会者が必死にフォローする。


「大丈夫です! 見えてません! たぶん!」


タカが叫ぶ。


「たぶんって言うな!」


何とか成功。


柚葉とゆりえが水着姿で登場すると、スタジオから歓声が上がる。

二人とも写真集の宣伝としては完璧な華やかさだった。


そしてノムさんも登場。


意外にも体つきが悪くない。


タカが驚く。


「ノムさん、鍛えてますね!」


ノムさんは腹を引っ込めながら胸を張る。


「元俳優じゃけぇ!」


キタノがぼそり。


「元俳優って言えば何でも許されると思うなよ」


いよいよ熱湯風呂。


三人が恐る恐る足を入れた瞬間、顔色が変わる。


「熱っ!」


柚葉が跳ねる。

ゆりえも目を丸くする。

ノムさんは最初から逃げ腰。


そこへ軍団とダチョウ風三人衆がわらわら寄ってくる。


「押すなよ!」

「押すなよは押せってことだろ!」

「社長、戻って!」


ノムさん絶叫。


「熱い熱い熱い! ワシは聞いとらん!」


キタノが腕を組む。


「お前が一番うるせえじゃねえか。宣伝より悲鳴の方が長いぞ」


しかし、柚葉は粘った。


ゆりえも負けない。


ノムさんも、二人と軍団に挟まれてなぜか粘らされる。


結果、奇跡の三十秒達成。


PRタイム獲得。


柚葉は息を整えながら写真集を掲げる。


「阿部柚葉ファースト写真集、『白嶺のヴィーナス――阿部柚葉、二十歳の透明衝撃』、発売中です。にかほの風景もたくさん入っています。よろしくお願いします!」


ゆりえも続く。


「氷見ゆりえ二冊目写真集、『潮騒のマーメイド――氷見ゆりえ、十九歳のきらめき』、富山湾の魅力も詰まっています!」


最後にノムさんが割り込む。


「どっちも買うんじゃぁぁ!」


タカが締める。


「社長が一番うるさい!」


コーナーは大盛り上がりで終了した。


一方、港区の隼人補佐官の自宅。


テレビ前で隼人は腹を抱えて笑っていた。


「ノムさん最高だろこれ! 熱湯で一番うるさいの社長って!」


隣の遥室長は静岡茶を持ったまま、完全にオカンムリ。


「次元が低いだよ。あまりにも低いだよ」


「でも、写真集のタイトルは全国に流れたぞ」


「だから困るだよ」


隼人はまだ笑っている。


「柚葉もゆりえも頑張ってたし、宣伝としては大成功だろ」


遥はテレビを睨む。


「健全な青少年育成とは何だっただよ……」


それでも、画面の中の二人は確かに輝いていた。


秋田美人と富山湾マーメイドは、昼バラの熱湯に沈みながら、見事に写真集を宣伝しきったのである。

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