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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ヒロ九クエスト第58話 鹿児島空港、足湯で解散式――黒煙バス、最後まで煙を吐く

鹿屋での別れは、ほとんど青春ドラマだった。


競走部の学生たちが校門前に並び、ヒロ九ラッピングバスを囲む。ひなたの後輩たちは涙ぐみながら「ひなた先輩、また来てください!」と叫び、ひなたも珍しく言葉に詰まっていた。


「また来るど。次に会う時は、もっと強くなっちょれ」


そう言って手を振った直後、バスは容赦なく黒煙を吐いた。


「ボボボボ……ゴホッ!」


青春の余韻を台無しにする音だった。


凪が淡々と記録する。


「感動的な別れの場面における黒煙発生。演出としては不適切」


真白は運転席近くで申し訳なさそうに言う。


「水温は安定しています。煙は……いつも通りです」


ひなたは笑いながら涙を拭いた。


「これもヒロ九じゃっど!」


ヒロ九ラッピングバスは鹿屋を後にし、鹿児島空港へ向かった。鹿児島遠征の締めくくり。そして、ここで非九州組とはお別れになる。


空港に着くと、菜々子支配人は全員を足湯へ案内した。


鹿児島空港名物の足湯。旅の最後に、靴を脱いで湯に足を浸ける。飛行機を待ちながら温泉で疲れを癒やせる、鹿児島らしい贅沢な場所だった。


彩芽は足を入れた瞬間、目を細めた。


「あぁ〜……もう帰りたくないべさ……」


伊織が即座に言う。


「帰ります」


「まだ何も言ってないべさ!」


「顔が言っています」


足湯に並ぶヒロインたちは、旅の疲れを少しずつほどいていった。


菜々子支配人が静かに口を開く。


「せっかくなので、鹿児島遠征の総括を一人ずつお願いします」


まず、みのりがひかりの手を取った。


「鹿児島は、土地の物語がとても濃い場所でした。知覧では歴史を学び、指宿では自然の恵みを感じ、桜島では火山と暮らす現実を見ました。ヒロ九の現場力もよく分かりました」


ひかりも頷く。


「明るい観光地だけでなく、重い記憶や自然の厳しさも含めて地域なんですね。鹿児島を通して、戦隊ヒロイン活動は“知ること”から始まるのだと思いました」


真白は足湯に浸かりながら、率直に言った。


「私は、無事故で終われたのが一番良かったです。峠道、フェリー、火山灰、黒煙、かなり攻めた行程でした。でも、みんな無事で良かったです」


菜々子は深く頷く。


「真白さんが車両を見てくれて本当に助かりました」


凪も真顔で続ける。


「黒煙以外は、おおむね安全運行でした」


真白は少し困った顔をした。


「黒煙も次回までに改善してほしいです」


彩芽は待ってましたとばかりに手を挙げた。


「鹿児島、なまら楽しかったべさ! そうめん流し、ヤギ、猫、火山灰、黒豚、足湯! あと伊織さんがずっと強かったべさ!」


伊織は静かに言う。


「感想が小学生の日記です」


「なまらひどいべさ!」


それでも彩芽の顔は晴れやかだった。


「でも、知覧ではちゃんと考えたべさ。私、ただ突っ込むだけじゃダメって分かったべさ」


伊織は少し微笑んだ。


「それは、大きな収穫です」


その伊織は、少し名残惜しそうに湯を見つめた。


「本当は、ヒロ九と一緒に熊本の拠点まで戻りたいです。現場に入る力がある、とても面白いチームでした」


菜々子が嬉しそうに顔を上げる。


「ぜひ来てください」


伊織は隣の彩芽を見る。


「ただ、私はこの人を東京まで送り届けなければなりません」


彩芽が即座に抗議する。


「私は一人で帰れるべさ!」


「信用していません」


「なまら保護者だべさ!」


香澄が笑った。


「伊織さん、完全に引率の先生ですたい」


ひなたは胸を張った。


「鹿児島編、最高じゃった。母校にも帰れたし、後輩にも会えた。知覧も、桜島も、指宿も、鹿屋も、全部うちの誇りじゃ」


少しだけ真面目な顔になる。


「ヒロ九で鹿児島を回れて、ほんとによかったど」


菜々子支配人は全員を見渡した。


「熊本城、人吉、えびの、霧島、鴨池、知覧、指宿、桜島、鹿屋。長い遠征でした。騒動も多かったですが、ヒロ九は確かに成長しました」


つばさが頷く。


「地域ごとに声の届き方が違いました。次はもっと連絡網を整えたいです」


凪も言う。


「安全基準の統一が必要です。飲酒管理、車両整備、火山灰対策、動物対応、彩芽対応」


彩芽が驚く。


「また私が項目に入ってるべさ!?」


「当然です」


香澄は穏やかに言った。


「でも、みんなで現場を回ったから見えたことばかりですたい。机の上では分からんことが多かったですね」


やがて搭乗時間が近づいた。


みのりとひかりは手を取り合って立ち上がる。


「また呼んでください。次も外から見た意見を伝えます」


「ヒロ九の力になれるなら、喜んで参加します」


真白は最後まで黒煙バスの方を見ている。


「次までに整備しておいてください」


菜々子は苦笑した。


「努力します」


彩芽は大きく手を振る。


「ヒロ九、また来るべさ! ヤギと猫にもよろしく言っといてほしいべさ!」


伊織は一礼する。


「沖縄と離島の件、よろしくお願いします」


菜々子支配人は真剣に頷いた。


「忘れません。離島展開は、必ず考えます」


非九州組を見送った後、菜々子は手帳を開いた。


そこには、もう次の文字が書かれていた。


沖縄離島展開案。


香澄が覗き込む。


「支配人、もう次ですか?」


菜々子は静かに笑う。


「ヒロ九は止まりません」


空港の外で、ヒロ九ラッピングバスがエンジンをかける。


「ボボボボ……ゴホッ!」


凪が最後にメモした。


鹿児島遠征:成功

非九州ヒロイン連携:良好

ひなた副支配人:母校効果で成長

彩芽:動物対応力あり、要管理

黒煙バス:最後まで黒煙


ひなたが拳を上げる。


「帰るど、熊本へ!」


香澄が笑った。


「帰るまでがヒロ九クエストですたい」


黒煙バスは鹿児島空港を後にする。


鹿児島編、完結。

しかし菜々子支配人の頭の中では、もう次の九州地図が広がっていた。

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