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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ヒロ九クエスト第55話 鹿屋凱旋、母校は燃えている――ひなた先輩、後輩の大歓声で完全に仕上がる

桜島で灰まみれになったヒロ九ラッピングバスは、黒煙を吐きながら大隅半島へ渡り、ついに鹿屋市へ入った。


鹿屋は大隅半島の中心都市である。広い空、温暖な気候、海と山に近い土地柄。かつては鉄道が走り、大隅の交通と暮らしを支えた街でもある。いまも鹿児島県東部の拠点として、人と物と文化が集まる力強い町だった。


ひなたは窓に張りついていた。


「鹿屋じゃっど……帰ってきたど……!」


菜々子支配人が静かに言う。


「ひなたさん、まだ会場に着いていません」


「もう心は着いちょる!」


真白が計器を見ながら呟く。


「バスの水温も、なんとか着いてます」


今日の目的地は、ひなたの母校である国立体育大学の学園祭。ヒロ九はゲスト出演として招かれていた。


到着した瞬間、空気が違った。


体育大学の学生たちは、とにかく声が大きい。姿勢が良い。反応が速い。そしてなぜか全員、朝から競技前のように燃えている。


校門には、手書きの横断幕が掲げられていた。


有村ひなた先輩 お帰りなさい!

ヒロ九 鹿屋へようこそ!

大隅魂で歓迎します!


その文字を見た瞬間、ひなたの目が潤んだ。


さらに後輩たちが一斉に叫ぶ。


「ひなた先輩、お帰りなさい!」


その一言で、ひなたは完全にスイッチが入った。


「ただいまじゃっどぉぉぉ!」


菜々子は小声で言う。


「もう制御不能ですね」


凪が冷静にメモした。


副支配人、母校到着により興奮度最大。要監視。


学園祭ステージは、開始前から異様な熱気だった。


まず登場したのは、真白の天秤棒行商。


「ほやほや、寄ってってちょーよ! ヒロ九記念タオルに歯ブラシ、たわし、ゴム紐、遠征先でも役に立つ生活雑貨そろっとるでね!」


体育大学生たちは、なぜか大ウケだった。


「たわしください!」


「ゴム紐、部室で使えます!」


「真白さん、もう一回口上お願いします!」


真白は戸惑いながらも売り続け、生活雑貨はあっという間に完売した。


「体育大学、生活雑貨の吸収力が高いです」


菜々子が真顔で言った。


「意味は分かりませんが、売れたなら良いです」


続いて香澄の司会。


「皆さま、今日はヒロ九を温かく迎えていただき、ありがとうございますたい! そして、ひなた副支配人の母校凱旋でございます!」


学生たちが歓声を上げる。


「ひなた先輩ー!」


「鹿屋魂ー!」


香澄は笑顔で受ける。


「皆さん、声がよく通りますたい。マイクいらんかもしれませんね!」


会場は爆笑。


グレースフォースのみのり・ひかりは、安定のパフォーマンスを見せた。

知的で優雅な動き、整った立ち姿、落ち着いたコメント。体育大学生たちは意外にも真面目に見入っていた。


みのりが言う。


「身体表現は、競技にも通じるものがありますね」


ひかりも続ける。


「動きの美しさと機能性は、対立するものではありません」


学生たちから拍手が起こる。


「勉強になります!」


「グレースフォース、フォームがきれい!」


次に登場したのが、伊織と彩芽の南北凸凹コンビだった。


彩芽は元気いっぱい。


「北海道から来た高城彩芽だべさ! 鹿屋、なまら熱いべさ!」


学生たちはすぐ乗る。


「だべさー!」


彩芽は大喜び。


「反応いいべさ!」


伊織が横で冷静に言う。


「調子に乗りすぎない」


「はいだべさ!」


伊織の落ち着いた進行と、彩芽の突撃力。

この組み合わせが体育大学生に刺さった。


「伊織さん、かっこいい!」


「彩芽ちゃん、元気すぎる!」


「凸凹なのに噛み合ってる!」


ひなたは舞台袖で胸を張った。


「うちの後輩たちは見る目があるど!」


菜々子が小声で返す。


「あなたの後輩というより、体育大学全体です」


そして最後は、ひなたの挨拶だった。


ひなたはマイクを握り、しばらく黙った。


普段ならすぐ叫ぶ。

だが、この日は少し違った。


目の前には後輩たち。

かつて自分が走った場所。

泣いた日も、怒られた日も、限界まで走った日もある母校。


「……ただいま」


その一言に、会場が静かになった。


ひなたは笑った。


「ここで走って、ここで怒られて、ここで泣いて、ここで鍛えてもらった有村ひなたです。今はヒロ九の副支配人として、九州を走り回っちょります」


後輩たちがじっと聞いている。


「競技を続ける人も、辞める人も、別の道へ行く人もおる。でも、ここで身につけた体力と根性と、人に支えてもらった記憶は、どこへ行っても消えんど」


ひなたの声が少し熱くなる。


「うちは、ここで走ったことが今も力になっちょる。だから、みんなも今やっちょることを大事にせえ。きつい日も、無駄じゃなか!」


一瞬の静寂。


そして、大歓声。


「ひなた先輩ー!」


「お帰りなさい!」


「また来てください!」


ひなたは涙目で笑った。


「また来るど!」


ステージは大成功だった。


真白の行商は完売。

香澄の司会は完璧。

グレースフォースは品格を見せた。

伊織と彩芽は大人気。

そしてひなたは、母校で完全に主役だった。


終了後、後輩たちが次々に駆け寄ってくる。


「ひなた先輩、かっこよかったです!」


「ヒロ九、すごいですね!」


「私たちも地域に貢献できるようになりたいです!」


ひなたは一人一人に握手しながら、感無量の表情だった。


菜々子支配人はその姿を見て、少し微笑んだ。


「今日のひなたさんは、かなり良い副支配人でした」


凪が頷く。


「興奮度は高いですが、現場効果も高いです」


香澄が笑う。


「母校の力は大きかですね」


彩芽は羨ましそうに言った。


「私もいつか、札幌でこんなふうに迎えられたいべさ」


伊織が静かに返す。


「そのためには、積み重ねです」


ひなたは振り返り、母校のキャンパスを見た。


「鹿屋に帰ってきてよかったど」


ヒロ九ラッピングバスは、学園祭の熱気に見送られながら駐車場に停まっていた。


まだ少し灰をかぶり、少し黒煙を吐いている。


真白が呟く。


「バスも、今日は頑張りました」


ひなたは笑った。


「よう走ったな、黒煙バス!」


凪が即座に言った。


「褒める前に整備です」


大歓声と黒煙の中、ヒロ九鹿屋編はここから本番に入っていく。

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