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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ヒロ九クエスト 第48話 灰は降る、口上は飛ぶ、みのりは房総する――戦隊ヒロインサミット鹿児島、開幕

鴨池の市民ホール周辺には、朝からうっすら火山灰が舞っていた。


黒煙を吐きながら鹿児島市内へ到着したヒロ九ラッピングバスの屋根にも、細かな灰が積もっている。


彩芽は空を見上げて叫んだ。


「な、なんか降ってるべさ!」


ひなたは平然としていた。


「鹿児島では通常運転じゃっど」


凪が即座にメモを取る。


「火山灰、目と喉への影響あり。注意喚起必要」


菜々子支配人は、灰を払いつつため息をついた。


「桜島さん、歓迎が豪快ですね」


この日は、戦隊ヒロインサミット鹿児島本番。


ヒロ九全員集合という大きな節目であり、鴨池の市民ホールとその周辺には朝から多くの観客が集まっていた。


まず会場外で火をつけたのは、伊吹真白の天秤棒行商だった。


「ほやほや、寄ってってちょーよ! ヒロ九記念タオル、応援うちわ、歯ブラシ、たわし、ゴム紐まで揃っとるでね!」


鹿児島の客は最初、物珍しそうに見ていた。


だが、真白の美濃弁の口上には妙な吸引力があった。


「この子、なんか買いたくなるね」


「たわしまで売ってるのか」


「ヒロインイベントでゴム紐買うとは思わなかった」


気づけば、生活雑貨まで飛ぶように売れていた。


菜々子支配人は感心して言う。


「真白さん、完全に商いの人ですね」


真白は静かに頷いた。


「琴葉さんに鍛えられました」


その横で彩芽がタオルを振り回す。


「これ、なまら売れるべさ!」


伊織が即座に止める。


「商品で遊ばない」


本編の司会は、西里香澄。


元バスガイドらしい声の通りと、客席を包むような話術で、会場の空気を一瞬で掴んだ。


「皆さま、本日は戦隊ヒロインサミット鹿児島へようこそお越しくださいました! 桜島も絶好調で、火山灰までお祝いしてくれております。目はこすらず、心は熱くお願いいたしますたい!」


会場は大爆笑。


最初の企画は、各ヒロインのお国自慢だった。


まず菜々子支配人が佐賀を語る。


「佐賀は、控えめに見られがちです。でも、有田や伊万里の焼き物、嬉野や武雄の温泉、有明海の海苔、歴史ある城下町、地味と言われても底力があります。前に出すぎないけれど、暮らしに深く根づく強さが佐賀です」


香澄が笑って言う。


「支配人、佐賀愛が静かに熱かですね」


菜々子は真顔で返す。


「佐賀は静かに強いのです」


続いてひなた。


「鹿児島は言うまでもなく最強じゃっど! 桜島、霧島、黒豚、地鶏、きびなご、芋焼酎、そして鹿屋! 走ってよし、食べてよし、飲んでよし! 鹿児島は魂が太か!」


菜々子が小声で注意する。


「飲んでよしを強調しすぎないでください」


ひなたは聞いていない。


香澄は熊本を語る。


「熊本は水がよかです。阿蘇の恵み、熊本城の力強さ、城下町の人情、そしてどこへ行っても食べ物が美味しか。私は熊本県は全部フランチャイズと思っとりますたい」


つばさは佐世保を紹介する。


「長崎、特に佐世保は港の街です。坂があって、海があって、船があって、人の声が響く街。コールセンターで鍛えた私の声も、あの街の空気が作ってくれました」


凪は大分・佐賀関を静かに語る。


「佐賀関は、関サバ・関アジだけではありません。海と製錬所と、働く人の安全意識が町を支えています。私は大分代表として、今日もご安全に、を広めたいです」


莉央は福岡を軽やかに語る。


「福岡は、街が近いんです。買い物、食、音楽、ファッション、人との距離感。博多も天神も、気取らないのに華がある。スタイリストとしても、福岡のセンスは大事にしています」


茉莉花は笑いながら続ける。


「福岡は人が濃か。中洲も小倉も、ええ意味で逃げ場がないくらい人情があるっちゃん。商売も会話も、まず勢い。うちはそこが好きたい」


迫田ツインズは、都城を静かに紹介した。


澄香が言う。


「都城は、宮崎でありながら鹿児島とも近い土地です。霧島を望み、肉も焼酎も強い」


澪香が続ける。


「派手ではありません。でも、境目の街だからこそ、いろいろな文化を受け止められる。私たちには合っています」


伊織は沖縄を語った。


「沖縄は海の美しさだけではありません。島ごとの文化、人のつながり、教育への思い、そして歴史の重みがあります。私は沖縄代表として、明るさだけでなく、背負うものも伝えていきたいです」


会場が静かに拍手した。


そこへ彩芽が元気よく手を挙げる。


「北海道も負けてないべさ! 札幌は静かだけど熱い街だべさ。大声出さなくても、応援パネルを高く掲げてくれる。雪も寒さもあるけど、人の心はなまらあったかいべさ!」


伊織が微笑む。


「今日はちゃんとまとまっていました」


彩芽は胸を張る。


「褒められたべさ!」


真白は大垣を語る。


「大垣は水の都って言われとるんやて。水がきれいで、ものづくりも物流も強い。目立つ街ではないかもしれんけど、支える力があるんやよ。私はそこが好きやで」


ひかりは静岡を上品に紹介した。


「静岡は、お茶、みかん、富士山、駿河湾。穏やかに見えるけれど、海も山もあり、東西の文化が交わる県です。派手に主張しすぎない豊かさがあると思います」


そして、館山みのりの番になった。


「千葉県はですね――」


会場の空気が変わった。


みのりの目に、明らかに火が入った。


「千葉は一言で語れません。房総半島の海、館山の温暖な気候、外房の力強い波、内房の穏やかな海、九十九里の広がり、成田の歴史、銚子の漁港、野田の醤油、落花生、梨、そして船橋」


菜々子が小声で言った。


「もう十分多いです」


だが、止まらない。


「船橋は、東京に近いだけではありません。生活感、交通の便利さ、湾岸部の歴史、市場、競馬場、そして人の勢い。千葉は首都圏の横にいるだけではなく、独自の強さを持っています」


本来なら司会の香澄が止める場面だった。


しかし香澄は、船橋在住でもある。


「私も船橋に住んどりますけど、確かに便利でよか街ですたい。暮らしやすさがありますもんね」


それが燃料だった。


みのりの目がさらに輝く。


「そうなんです! 船橋は暮らしの街でありながら、広域交通の結節点で――」


ひなたが腹を抱えて笑う。


「みのりちゃん、房総ならぬ暴走しちょる!」


香澄が慌てる。


「しまったですたい! 私が煽ってしまいました!」


みのりはまだ続けようとする。


「さらに南房総には――」


その瞬間、ひかりが静かに前へ出た。


「みのり、続きは千葉イベントで話しましょう」


「でも、まだ九十九里と館山の関係性が」


「ここは鹿児島です」


「船橋の市場の話も」


「鹿児島です」


「落花生の品種の話だけでも」


「鹿児島です」


会場は大爆笑。


みのりはようやく止まった。


「……少し長かったでしょうか」


ひかりは優しく答えた。


「少しではありません」


終盤はヒロ九全員による合同ステージ。


灰は降る。

口上は飛ぶ。

香澄の司会は冴える。

つばさの音響、凪の安全管理、莉央の衣装、茉莉花の物販、真白の行商、グレースフォースの華、彩芽の元気、伊織の安定感、ひなたの鹿児島愛。


全てが混ざって、鴨池の会場は異様な熱気に包まれた。


イベント後、真白が空の箱を見せた。


「天秤棒行商、完売です」


菜々子支配人は満足げに頷く。


「戦隊ヒロインサミット鹿児島、成功です」


その時、また桜島の灰がふわりと舞った。


彩芽が叫ぶ。


「また降ってきたべさ!」


ひなたは胸を張る。


「桜島がお祝いしちょる!」


凪が冷静に言った。


「お祝いなら、もう少し控えめでお願いします」


灰と笑いと郷土愛に包まれながら、戦隊ヒロインサミット鹿児島は無事に幕を閉じた。

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