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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ヒロ九クエスト 第46話 鴨池の風を読め――灰混じりの突風、ステージ幕を奪う

黒煙を吐きながら、ヒロ九ラッピングバスはついに鹿児島市内へ入った。


「ボボボボ……ゴホッ!」


鴨池の通りに、少しだけ黒い煙が流れる。


ひなたは窓に張りついた。


「鹿児島市じゃっど! ついに来たど!」


菜々子支配人は冷静に言う。


「叫ぶのは会場に着いてからにしてください」


目的地は、鴨池の市民ホール。


翌日に控えた戦隊ヒロインサミット鹿児島のリハーサル会場である。鴨池は鹿児島市の海風を感じるエリアで、体育施設や文化施設が集まり、桜島を望む鹿児島らしい場所だった。


今回は規模が大きい。


ヒロ九メンバーに加え、博多からスタイリスト兼ヒロインの浜崎莉央、小倉出身の黒崎茉莉花、都城市出身の迫田ツインズまで合流する。


菜々子が全員を見渡して言った。


「ついに、九州ヒロイン全員集合です」


香澄が笑う。


「これは大きかイベントになりますたい」


ひなたは胸を張る。


「鹿児島でやるなら大成功しかなか!」


リハーサルは順調だった。


香澄のMCは安定。

つばさの音声確認も完璧。

莉央は衣装の乱れを一瞬で直し、茉莉花は物販と楽屋周りをてきぱき整理。

迫田ツインズは、澄香と澪香で立ち位置確認まで無駄なくこなす。


みのりとひかりのグレースフォースは上品にステージを締め、伊織は全体進行を冷静に確認。彩芽は走り出しかけるたびに伊織に止められていた。


「彩芽、そこで止まる」


「はいだべさ!」


凪は会場導線を見て頷いた。


「安全確認、現時点では良好です」


真白もヒロ九バスを点検しながら言う。


「バスの水温も落ち着いてます」


菜々子は満足げだった。


「珍しく順調ですね」


その時だった。


外から、風が吹いた。


最初はただの海風だった。

だが次の瞬間、桜島方面から灰を含んだ突風が会場脇の仮設ステージへ吹き込む。


大型の鹿児島PR幕が大きく膨らんだ。


「幕が浮いてます!」


つばさが叫ぶ。


固定具が一つ外れ、幕が帆のように風を受ける。

そのまま倒れれば、翌日の観客導線側に直撃する位置だった。


凪の顔が変わる。


「全員、幕の下に入らないでください! 観客導線側を空けます!」


菜々子が即座に指示を飛ばす。


「全員で対応します。香澄さん、誘導。つばささん、館内放送。真白さん、固定具確認。莉央さん、衣装ラックを退避。茉莉花さん、物販側を下げてください!」


香澄の声が響く。


「皆さん、こちらへ下がってください! 押さずに、ゆっくり移動ですたい!」


つばさがマイクを取る。


「会場外ステージ付近は一時的に立ち入りを制限します。スタッフの指示に従ってください」


真白は工具を持って支柱側へ走る。


「固定点が足りません。風を受ける面積が大きすぎます」


凪が頷く。


「危険区域を設定します」


莉央は衣装ラックを素早く押し下げる。


「灰が衣装に入ったら終わりです。カバーかけて!」


茉莉花も物販箱をまとめながら叫ぶ。


「タオルとパンフレット、飛ばされる前に押さえるけん!」


迫田ツインズは無言で動いた。


澄香が右側の人の流れを止め、澪香が左側の退避導線を作る。

双子の動きは静かで速い。


ひかりは外を見て言った。


「桜島からの灰混じりの風ですね。視界と目の保護も必要です」


みのりは子ども連れの参加者にタオルを配る。


「目をこすらないでください。こちらで少し待ちましょう」


その一方で、彩芽が幕へ向かって走り出そうとした。


「私が押さえるべさ!」


伊織が腕を掴む。


「正面から行ったら巻き込まれます」


「でも飛ぶべさ!」


「だから考えて動きます。彩芽、あちらの軽いパネルを寝かせて固定。持ち上げない。地面に倒す」


彩芽は目を輝かせた。


「分かったべさ!」


短く具体的な指示なら、彩芽は強い。


「パネルは寝かせるべさ! 飛ばさないべさ!」


一方、ひなたはすでに風下へ走っていた。


「鹿児島の風には負けんど!」


菜々子が叫ぶ。


「ひなたさん、話を聞いてから動いてください!」


だが、ひなたの脚は速い。

元実業団駅伝選手の勘で、幕が流される方向へ回り込む。


「こっちに来るっど!」


ひなたは幕の端を掴み、体重をかけて押さえ込んだ。


「ぐっ……桜島、元気すぎじゃ!」


凪が叫ぶ。


「正面から押さえないで、風下へ逃がしながら固定!」


真白が支柱を仮固定する。


「工具入ります!」


莉央が布をまとめる。


「幕、少し畳めば風を逃がせます!」


茉莉花が笑いながら叫ぶ。


「力仕事なら任せんしゃい!」


迫田ツインズが同時に幕の端を折り込み、つばさがスタッフへ追加ロープを指示する。


「ロープ二本、右側へ。固定点を増やします」


伊織は彩芽を見ていた。


「彩芽、次はその土嚢を二つ。無理なら一つずつ」


「二つ行けるべさ!」


「一つずつ」


「はいだべさ!」


数分後。


幕は無事に固定され、パネルも倒れず、観客導線側への被害は防がれた。


灰混じりの突風は、何事もなかったように弱まる。


ひなたは灰を払いながら笑った。


「桜島の灰も風も、鹿児島の挨拶じゃっど!」


菜々子は即座に言う。


「挨拶にしては強すぎます」


凪は記録を取る。


「大型幕の固定方法、要改善。灰混じり突風対策、追加。風速確認と退避導線、明日の本番前に再確認」


真白も頷く。


「固定点を増やせば大丈夫です。あとバスも風向きで黒煙が流れるので置き場所を変えた方がいいです」


香澄が笑う。


「鹿児島は自然も参加型ですたい」


ひかりが理知的にまとめる。


「土地ごとの自然条件を組み込んだ会場設計が必要ですね」


みのりも頷く。


「本番前に問題が分かって良かったです」


莉央は衣装を確認しながら言う。


「衣装は無事。灰対策のカバー、明日は増やすわ」


茉莉花は物販箱を叩く。


「こっちも無事たい。タオルはちょっと売れそうやけど」


迫田ツインズは静かに戻ってくる。


澄香が言う。


「右導線、問題なし」


澪香も続ける。


「左側も確保済み」


菜々子は全員を見渡した。


「これが、九州ヒロイン全員集合の力ですね」


ひなたは胸を張る。


「鹿児島クエスト、攻略じゃ!」


彩芽も拳を上げる。


「私も役に立ったべさ!」


伊織が少し笑う。


「今回は、指示通りに動けました」


「褒められたべさ!」


「少しです」


「少しでも嬉しいべさ!」


凪は最後に会場を見渡し、頷いた。


「本番に向けて安全確認済です」


菜々子支配人は、灰の残る空を見上げた。


「明日は本番です。桜島が絶好調でも、ヒロ九も負けません」


会場脇では、ヒロ九ラッピングバスが静かに待っていた。


風に乗って、少しだけ黒煙が横へ流れる。


真白がぼそりと言った。


「このバスも、鹿児島の風を読まないとですね」


こうして、鴨池の灰混じり突風クエストは、ヒロ九全員の連携で解決された。


翌日の戦隊ヒロインサミット鹿児島へ向けて、九州ヒロインたちはようやく一つのチームとして仕上がり始めていた。

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