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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ヒロ九クエスト 第43話 黒煙バス、えびの高原へ――霧島連山と道の駅で、ひなたが鹿児島目前なのに寄り道で暴れる

人吉で球磨焼酎蔵とのコラボPRを終えたヒロ九一行は、黒煙を吐くラッピングバスでさらに南へ向かう。


目的地は鹿児島――のはずだが、途中で宮崎県えびの市へ立ち寄る予定になっていた。


それはもちろん、ひなたも知っている。


知っているのだが、問題は彼女が人吉で球磨焼酎を少々、いや本人基準では「文化理解」、菜々子支配人基準では「任務中の不適切な試飲」を済ませており、すでにかなり良い気分になっていることだった。


ひなたは車内で上機嫌に言う。


「えびのも良か! でも鹿屋が待っちょる! でもえびのも良か! 九州は全部良か!」


菜々子支配人は冷たい目で見た。


「ひなたさん、判断が完全に揺れています」


香澄は苦笑しながらなだめる。


「まあまあ、支配人。機嫌が悪いよりは良かですたい」


凪は即座にメモを取る。


副支配人:ほろ酔い。要監視。


えびの市は、熊本・宮崎・鹿児島の境に近い南九州の要衝。霧島連山を望み、えびの高原の雄大な自然、澄んだ空気、温泉、農産品に恵まれた土地である。山の稜線、高原の風、火山が作った地形の迫力。鹿児島目前の“寄り道”というには、あまりにも魅力が濃い場所だった。


ひかりは窓の外を見て、理知的に言う。


「霧島連山の景観は見事ですね。火山地形と高原の広がりが、南九州らしさを感じさせます」


みのりも頷く。


「鹿児島に入る前に、ここへ寄る意味はありますね」


ひなたは窓に張り付く。


「景色がよか! でも鹿屋も近い! でもえびのも良か!」


「さっきから同じことしか言ってません」


菜々子が切る。


一行は道の駅へ向かい、地元農産品PRイベントを手伝うことになった。


米、野菜、肉、加工品、地元の特産品が並び、観光客や家族連れでにぎわっている。ヒロ九メンバーは試食案内、呼び込み、導線整理に入る。


香澄は安定の案内役。


「こちら、えびのの農産品ですたい。新鮮で味が濃かですよ」


つばさは音声誘導を担当。


「試食コーナーは右側、撮影希望の方は左側へお願いします」


凪は足元と車両導線を確認。


「駐車場側の人流が少し危ないですね」


真白は黒煙バスの状態を見ている。


「登りで少し水温が上がりましたけど、今は落ち着いてます」


グレースフォースのみのりとひかりは、品よく農産品の魅力をPRする。


その中で、ひなたはやけに元気だった。


「この米、うまか! この野菜、元気がある! この肉、走れそうじゃ!」


菜々子が即座に言う。


「肉は走りません」


イベントは盛況のうちに終了する。


だが、その直後にクエストが発生した。


地元農産品の試食コーナーに子どもたちが集まりすぎ、さらにヒロ九ラッピングバスの写真を撮りたい観光客まで混ざって、列が崩れ始めたのである。駐車場の車両導線にも影響が出そうになり、凪の目が鋭くなる。


「人流分離が必要です。試食列と撮影列を分けます」


香澄もすぐに声を張る。


「試食の方はこちら、バスのお写真はあちらですたい!」


しかし人が多く、なかなか流れが整わない。


そこで、ほろ酔いのひなたが前へ出た。


「みんな、こっちじゃっど! 米は逃げん! バスも逃げん! でも車は来るから危なか!」


あまりにも分かりやすい大声だった。


子どもたちが一斉に振り向く。


ひなたはさらに続ける。


「一列! 二列! 鹿屋式整列じゃ!」


誰も鹿屋式整列が何なのか分からない。

しかし、勢いに押されてなぜか列が整い始める。


真白が呆れ気味に言う。


「理屈は分かりませんが、流れはできました」


凪も不本意ながら認める。


「安全上は改善しました」


ひなたは上機嫌で手を振る。


「よかよか! えびのも鹿屋も、みんな仲間じゃっど!」


菜々子支配人は複雑な顔で見ていた。


クエストは成功した。


試食列と撮影列は分かれ、道の駅の混雑も落ち着き、地元スタッフからは大いに感謝される。


「いやあ、助かりました。ひなたさん、声が通りますね」


ひなたは胸を張る。


「駅伝で鍛えた声じゃ!」


菜々子はすかさず言う。


「駅伝は関係ありません」


イベント後、菜々子支配人はひなたを呼び出した。


「ひなたさん」


「はい、支配人!」


「解決したことは評価します」


「じゃろ!」


「しかし、結果オーライではダメです」


ひなたの笑顔が少し固まる。


菜々子は淡々と続ける。


「任務中に球磨焼酎を飲み、ほろ酔いの勢いで人流整理に成功しただけです。再現性がありません」


凪も頷く。


「安全管理上、偶然成功した事例として記録します」


香澄がまあまあと間に入る。


「支配人、えびのの皆さんも喜んでいましたし、今回は良か方向に転びましたたい」


菜々子はため息をつく。


「だから困るのです。成功してしまったから叱りにくい」


ひなたはにこにこしている。


「えびの、また来るどー!」


反省は薄い。


こうして、えびの市でのヒロ九クエストは結果的に成功した。


凪の記録にはこう残る。


えびの市PR:成功

道の駅導線整理:成功

副支配人:ほろ酔いにつき要管理

結果オーライ度:高


黒煙バスは、夕方の空気の中、次の目的地へ向けて再びエンジンをかける。


「ボボボボ……ゴホッ!」


真白は計器を確認する。


「水温は落ち着いてます。もう少し走れます」


菜々子は静かに頷く。


「では、次へ向かいましょう」


行き先は、湯けむりが待つ山の方角。


ひなたは窓の外を見ながら言う。


「次こそ鹿児島じゃっど……たぶん!」


菜々子は即座に返した。


「“たぶん”では困ります」


黒煙バスはまた少し煙を吐き、南九州の夕暮れへ走っていった。

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