次は個人戦や!――倍率ドン後夜祭、ヒロ室またテレビに浮かれる
『ダービークイズ 全国戦隊ヒロイン大会』の収録が終わった直後、楽屋はまだ妙な熱気に包まれていた。
まず一番ホクホクしていたのは、十万点を突破した館山みのりと杉山ひかりのグレースフォースである。番組スタッフから賞金十万円の目録を受け取ると、みのりは目を輝かせた。
「ひかり、十万円ですよ。どうします?」
ひかりは少し考えてから微笑む。
「二人でご当地イベント用の差し入れ買う? 千葉と静岡の名産を半分ずつ」
「じゃあ落花生とお茶ですね!」
「それ、かなり渋いね」
二人は勝者らしく穏やかに笑っていたが、使い道があまりにも堅実で、周囲からは「やっぱりグレースフォース」と妙に納得される。
一方、青チームの赤嶺美月と西川彩香は、収録後もまだ揉めていた。
「最後、うちが山里さん言うたのが悪かったんちゃう。彩香が途中で流れ止めたからや!」
「意味が分からん。序盤からガッツさんに全部行こうとしてた奴が何を言う」
「夢見て何が悪いねん!」
「悪い。財布が破裂する」
また小学生の口喧嘩である。
そこへ番組ディレクターがやって来た。
「いやあ、お二人、番組的には最高でしたよ。“仲悪いの?”に二人で“はい”って返したところ、スタジオ一番ウケてました」
美月と彩香は同時に黙った。
「……ほんま?」
「……あそこが?」
ディレクターは力強く頷く。
「はい。ぜひまたお願いします」
美月は少し照れ、彩香は苦い顔をした。
「褒められ方が納得いかん」
「でもウケたなら勝ちやな!」
「負けてる」
その横で、月島小春と白石陽菜は仲良く反省会をしていた。
「最後、竹内さんじゃなくて、はたさんだったねぇ」
「でも、竹内さんも惜しかったです」
「陽菜ちゃんのガッツさん1000点は良かったよ。あれ、かなり盛り上がった」
陽菜は少し恥ずかしそうに笑う。
「次はもっと勉強します。クイズって難しいけど、楽しいですね」
小春は頼もしげに頷いた。
「次は優勝狙おう。あと私、司会者の物真似をもっと磨く」
数日後。ヒロ室ではオンエア鑑賞会が開かれていた。
遥室長、真帆、琴音、隼人補佐官、そして出演ヒロインたちがテレビの前に集まっている。
番組が終わると、遥室長が満足そうに言った。
「ディレクターさんから、面白い回になったってお礼を言われただら」
真帆も資料を見ながら頷く。
「視聴者反応も良好です。グレースフォースの好感度、美月さんと彩香さんのケンカ芸、小春さんと陽菜さんの華やかさ。全部きれいに出ています」
琴音が冷静に追加する。
「特に“仲悪いの?”“はい”の場面は、繰り返し再生率が高いです」
美月は得意げに胸を張る。
「ほら、うちら人気やん!」
彩香は腕を組む。
「不本意や」
そこで彩香がふと呟いた。
「次はダウンアップクイズやな。あれは個人戦やから、アホツインテールと組まなくてええし」
美月が即座に噛みつく。
「誰がアホツインテールや!」
彩香は涼しい顔。
「誰とは言うてない。やっぱりオマエ、アホ認めてんやな」
「ぐぬぬ……!」
あまりにも低レベルな応酬に、隼人補佐官がこめかみを押さえる。
「全国放送に出た直後とは思えない会話だな」
すると小春が立ち上がり、急に品のいい司会者風の声を作った。
「さぁ、10問連続正解してハワイに行きましょう」
部屋が爆笑に包まれる。
陽菜は手を叩いて笑い、みのりは「小春さん、似てます」と感心し、ひかりは「次は本当に出そうだね」と笑った。
話題は次の番組へ移る。
候補は二つ。
一つは、ゴンドラに乗った解答者が正解するたび上へ進み、10問連続正解でハワイ旅行を獲得する『ダウンアップクイズ』。知識、集中力、連続正解の度胸が問われる個人戦で、美月と彩香が別々に戦えるのも大きい。
もう一つは、25枚のパネルを取り合う戦略型クイズ番組の『パネルクイズ』。早押しだけでなく、どのパネルを取るかの盤面感覚が問われ、知性がウリの綾乃、理世あたりが燃えそうな形式である。
真帆は静かに言った。
「今回の反応なら、次のオファーは来ます」
遥室長も頷く。
「戦隊ヒロイン大会、シリーズ化もありえるだら」
その時、美月が拳を握った。
「次こそガッツさんみたいな大穴で勝つ!」
彩香が即答する。
「個人戦なら勝手に沈め」
また二人が睨み合う。
小春は再び司会者の声で締めた。
「残念、赤嶺さん、お手つきです」
ヒロ室は笑いに包まれた。
そして後日、本当に新たな番組出演オファーが届く。
視聴者参加番組シリーズ、次なる全国戦隊ヒロイン大会へ。
ヒロインたちのテレビ向きすぎる騒動は、まだ終わりそうになかった。




