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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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倍率ドン! 全国戦隊ヒロイン大会――愛と度胸の十万点レース

ロット製薬の明るい提供アイキャッチが流れた。

白い鳩が、あの独特のCMソングに合わせて画面いっぱいに飛ぶ。


そしてファンファーレ。


「巨星の、ダービークイズ!」


拍手の中、大橋巨星が登場した。


「皆さんこんばんは。最近は戦隊ヒロインというのが大変人気だそうで、悪党と戦ったり、イベントステージに出たり、まあ忙しいようですが、今夜は全国から人気の戦隊ヒロイン三組にお集まりいただきました」


まず赤チーム。

千葉県千葉市の館山みのり、静岡県静岡市の杉山ひかり。人気派生ユニット、グレースフォースである。


「お二人、いつも一緒だそうですね」


ひかりが穏やかに答える。


「はい。よく一緒にいます」


みのりもにこにこしている。


「ひかりとは相棒です」


巨星はすかさず笑った。


「もうラブラブですね。今日は愛の力で十万点、いけるでしょうか」


みのりが照れ、ひかりが苦笑いする。客席は早くも温かい拍手。


続いて青チーム。

大阪府東大阪市の赤嶺美月、兵庫県姫路市の西川彩香。


「こちらは仲がよろしいんですか?」


美月と彩香は顔を見合わせ、即答した。


「いいえ」


スタジオ爆笑。


「普通そこは否定しないんですよ。いや、否定はしてるのか。仲がいいことを否定してるんですね」


美月は不満げに言う。


「うち、ほんまは綾乃かさつきと組みたかったんです」


彩香も涼しい顔。


「ウチも、こんなツインテールとは組みたくありませんでした」


「誰がこんなツインテールや!」


「見たままや」


巨星が手を叩く。


「はい、もう始まってます。まだ第一問も出してません」


三組目は緑チーム。

東京都江東区の月島小春と、神奈川県相模原市の白石陽菜。


陽菜が登場した瞬間、客席から「かわいい!」と声が飛ぶ。小春は余裕たっぷりに手を振った。


「小春さんは司会もお得意だそうで」


「今日は巨星さんの横取りをしないように気をつけます」


「お願いしますよ。『倍率ドン』は私の商売道具ですから」


客席がまた笑う。


解答者席には五人。

1枠、フランス文学の大学教授・篠原秀学。

2枠、ふてぶてしい新体操の女王・山里裕子。

3枠、博識漫画家・はたらいた。

4枠、お嫁さんにしたい女優No.1、三択の女王・竹内桂子。

5枠、ゲストの元プロボクサー・ガッツ岩松。


巨星がガッツを見る。


「ガッツさん、今日はどうですか」


「OK牧場。今日は当たるよ」


「根拠はありませんが、元気だけはあります」


客席拍手。


第一問。


「日本には『左党』という言葉があります。これはお酒好きの人を指しますが、もともとはある職人の仕事道具に由来するといわれています。さて、その職人とは何でしょう?」


巨星が右手を上げる。


「倍率ドン!」


篠原教授6倍、山里裕子8倍、はたらいた2倍、竹内桂子4倍、ガッツ岩松10倍。


赤チームはすぐ相談を終えた。


ひかりが穏やかに言う。


「はたさんに1000点お願いします」


みのりも頷く。


「まずは確実に行きます」


「赤チーム、はたさんに1000点。堅い。愛の力もまずは堅実です」


青チームは揉めていた。


美月が身を乗り出す。


「ガッツさんや! 10倍やで!」


彩香が即座に切る。


「初手で自爆するな」


「夢ないなあ!」


「夢で点は増えない」


「増えるかもしれへんやろ!」


「“かもしれへん”で賭けるな」


巨星が呆れる。


「青チーム、早くしてください。番組には時間があります」


結局、彩香が押し切る。


「竹内桂子さんに500点」


美月は不満そうに腕を組む。


「桂子さん、頼みますわ」


緑チームは小春が陽菜に確認し、


「はたさんに1000点でお願いします」


陽菜も小さく頷く。


「お願いします」


解答確認。


篠原教授は「左官職人」。


巨星が間髪入れずに言う。


「左だから左官。教授、それは言葉の勝利じゃなくて、ただの連想です」


教授は上品に微笑む。


「うーん、上品ですねえ」


「何が上品なんですか、あなた」


山里裕子は「酒屋さん」。


「そのまんまじゃねぇかよ」


山里はふてぶてしく笑う。


「お酒好きって言ったから」


「だから罠にかかるんです」


はたらいたは「大工さん」。


正解。


はたはさらりと解説する。


「昔の大工は右手に槌、左手にノミを持つ。左手、つまりノミ手から酒飲みの意味につながったという説ですね」


「さすが、はたさん。こういう語源問題、強い」


竹内桂子は「杜氏」。


「違うんですねえ」


竹内は青チームに向かって律儀に頭を下げる。


「ごめんなさい」


彩香は無言で軽く会釈し、美月は小声で「だからガッツさんや言うたのに」とぼやく。


ガッツ岩松は「左利き人」。


巨星は顔をしかめる。


「職人さんには右利きの人もいるんですけどねぇ」


「左党だから左利きかなって」


「かなって、で十倍を背負わないでください」


第一問終了。

赤チームと緑チームが加点。青チームは出遅れた。


第二問、第三問と番組は順調に進む。

グレースフォースはひかりが点数を計算し、みのりが時々「ここは勝負です」と言い出すのを、ひかりが「まだ早いよ」と制御する。

小春・陽菜チームは、陽菜の意外な勘が冴え、ガッツ岩松への小賭けを当ててスタジオを沸かせた。

青チームは相変わらずだった。美月が大穴、彩香が堅実。毎回揉める。巨星はそのたびに嬉しそうに拾う。


「青チームは、ベットより会議が面白いですね」


第四問は三択。


「江戸時代、『へそくり』の語源になったとされるものは、次のうちどれでしょう。

1、糸を巻く道具。

2、腹巻きに隠した小銭。

3、味噌樽の底に沈んだ銭」


倍率ドン。

篠原教授7倍、山里裕子6倍、はたらいた3倍、竹内桂子2倍、ガッツ岩松8倍。


赤チームは勝負に出た。


ひかりが言う。


「三択の女王、竹内桂子さんに2000点お願いします」


みのりも力強く頷く。


「ここで伸ばします」


青チームは、彩香が篠原教授に賭けると言い出した。


「ぜひフランス文学の講義に来てほしい篠原教授に1000点」


篠原教授は満面の笑顔。


「関学でしょ? 西宮の時計台まで講義行っちゃうよ」


巨星が笑う。


「教授、若い女性に褒められるとすぐ遠征する」


緑チームは陽菜が小声で言った。


「ガッツさん、なんとなく当たりそうな気がします」


小春が目を丸くする。


「陽菜ちゃん、本気?」


「はい。お願いします」


「じゃあ行こう。ガッツさんに1000点!」


ガッツは胸を張る。


「OK牧場」


答え合わせ。


巨星が全員のフリップを見て、客席に向き直る。


「糸を巻くが二人、腹巻きが一人、味噌樽が二人。いっぺんに開けましょう。せーの、ドン!」


正解は、糸を巻く道具。

竹内桂子とガッツ岩松が正解。


赤チームは大きく前進。

緑チームも陽菜の勝負勘で加点。

青チームは篠原教授が外し、美月が彩香に詰め寄る。


「ほら! 教授、時計台まで来る前に外してもうたやん!」


「今のは教授の問題だ」


「賭けたん彩香やろ!」


「うるさい」


巨星は満足そうに頷く。


「青チーム、いい感じに仲が悪いですね」


最終問題前。

得点は赤チーム26,000点、青チーム18,000点、緑チーム21,000点。

どのチームも十万点突破には最終問題で勝負が必要だった。


巨星が声を張る。


「さあ、最終問題。倍率ドン、さらに倍!」


篠原教授16倍。

山里裕子20倍。

はたらいた4倍。

竹内桂子8倍。

ガッツ岩松18倍。


問題は、野球の珍事件。


「プロ野球やメジャーリーグでは、時に信じ難い珍事件が起きます。1982年、アメリカのマイナーリーグの試合で、試合中に“ある動物”がグラウンドへ乱入。選手たちはプレーを中断しました。ところが、その動物を追い払おうとした球団マスコットが逆に返り討ちに遭い、球場が大爆笑に包まれました。さて、その乱入した動物とは何でしょう?」


赤チームは計算した。

はたらいた4倍に全額なら、104,000点。


ひかりが静かに言う。


「最後は、はたさん」


みのりも頷いた。


「信じます。はたさんに全部」


青チームはまた戦争だった。


美月は20倍の山里裕子。


「ここしかない! 大逆転や!」


彩香は竹内桂子。


「8倍でも十分届く。堅く行け」


「堅い堅い堅い! 彩香は金庫か!」


「美月は穴の空いた財布だ」


巨星が聞く。


「二人は本当に仲悪いの?」


二人は当然のように答える。


「はい」


客席、大爆笑。


結局、美月の勢いに彩香が折れ、山里裕子へ全部。


緑チームは小春が悩む。

陽菜は不安そうに竹内桂子を見る。


「竹内さんなら……」


「よし、陽菜ちゃんの直感を信じる。竹内桂子さんに全部!」


答え合わせ。


巨星がフリップを確認する。


「一番奇怪な答えは、やはりこの方でした」


篠原教授の答えは「ラクダ」。


「教授、シルクロードじゃないんですよ」


ガッツ岩松は「バッファロー」。


「アメリカっぽいんですけどねぇ。違います」


山里裕子は「野良犬」。


「野良犬ではクイズの問題にはならないなぁ」


青チームは沈黙。

美月も彩香も、もう互いを責める気力がない。


竹内桂子は「七面鳥」。


小春と陽菜が「あー」と声を漏らす。


「七面鳥。かなりアメリカですが、違います」


最後は、はたらいた。


巨星が一拍置く。


「はたさんができなかったら、お返しします。せーの、ドン!」


答えは――ガチョウ。


正解。


赤チーム、104,000点。

グレースフォース、十万点突破。


スタジオが拍手に包まれる。


巨星は解説を始める。


「アメリカ、特にマイナーリーグってのは、われわれの想像以上にのんびりしてましてね。1982年、試合中にこのガチョウ君が堂々とグラウンドへ乱入。選手はプレー中断。まあここまではよくある話です。ところがですよ。球団マスコットが“俺が追い払ってやる!”と勇ましく向かった。ところがガチョウ、意外に強い。羽をバーッと広げて逆襲!」


客席爆笑。


「マスコットのほうが逃げ回る始末で、球場は大爆笑。試合どころじゃない。アメリカらしい、おおらかな珍事件ですねぇ」


そしてはたらいたを見る。


「さすが、はたさん。こういう雑学、強い!」


最終結果。

赤チーム、グレースフォースが104,000点。

青チーム、美月・彩香は0点。

緑チーム、小春・陽菜も0点。


巨星はグレースフォースを祝福する。


「十万点突破は、館山みのりさん、杉山ひかりさん、グレースフォースのお二人。なお、十万円を超えた分はカンガルー募金へ寄付されます」


みのりとひかりは、並んで深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


巨星は青チームを見る。


「美月さん、彩香さん。二人、仲良くしてね」


美月と彩香は同時に答えた。


「努力します」


「無理です」


「今ので、全部分かりました」


スタジオ爆笑。


最後に小春と陽菜。


「小春さん、陽菜さん。竹内さんでも惜しかったですが、はたさんに行っても十万点突破したんですよねぇ。残念」


陽菜は悔しそうに笑う。


「次はもっと勉強します」


小春は拳を握る。


「次は倍率ドンの読みを鍛えます」


巨星はカメラへ向き直る。


「本日の戦隊ヒロイン大会は、グレースフォースが十万点突破しました。また来週」

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