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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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922/1043

北の花はまだ半開き――ノースフロント、笑って揉めて一度立ち止まる

ノースフロントは、ようやく一周した。


いわき、仙台、盛岡、にかほ、山形、八戸、函館、札幌。

見切り発車で始まったヒロ室北方管区は、各ヒロインの地元を巡りながら、どうにか「組織らしい形」になり始めていた。


いわきでは、るみねぇが地元人脈と営業力で初のお披露目を成功させた。

仙台では、玲香が“自分だけのステージ”を少しだけ卒業した。

盛岡では、柚希が地味な民俗学トークで会場を制した。

にかほでは、阿部一族が町ごと押し寄せ、柚葉より彩芽が担がれた。

山形では、乙実が静かな拍手の中で胸を張った。

八戸では、紗耶がせんべい汁で空気をほどいた。

函館では、瑠璃が港町を上品に案内した。

札幌では、彩芽がようやく地元の静かな熱を受け止めた。


こう並べると立派な遠征記録である。


ただし、現場は毎回まあまあ大変だった。


玲香と柚希は、相変わらず噛み合わない。


玲香は華がある。集客力もある。マイクを持てば場を作れる。

だが、油断するとすぐ「仙台を中心に」と言い出す。


柚希は地域理解が深い。実務も堅い。言葉に重みがある。

だが、油断すると話が民俗学講座になり、タイトルが長くなる。


るみねぇはそのたびに笑って止めていた。


「玲香、仙台だけで北日本じゃねぇっぺ」

「柚希、話はいいけど、時間守るっぺ」


一方、紗耶は潤滑油として働いた。


玲香が尖れば、柔らかく受ける。

柚希が考え込みすぎれば、話をほぐす。

彩芽が突っ走れば、笑って止める。

八戸で見せた“空気をほどく力”は、その後も地味に効いていた。


乙実は大人しいが、慰問や地域密着企画では誰よりも静かに強かった。

瑠璃は函館仕込みの落ち着いた進行で、ノースフロントを少し上品に見せた。

柚葉は、阿部一族という移動式応援団を連れてくるたびに頭を抱えた。


「来ねくていいって言っても来るんだよね……」


そして彩芽は、どこへ行っても元気だった。


にかほでは担がれ、函館では初函館に大騒ぎし、札幌ではようやく地元に受け入れられた。まだ未熟で、考えるより先に体が動く。だが、その真っ直ぐさが、ノースフロントの空気を何度も明るくした。


形にはなってきた。


しかし、るみねぇの負担は明らかに増えていた。


本業のトロピカルダンサー。

他地区ヒロインへのダンスレッスン。

ノースフロントの現場調整。

スポンサー対応。

玲香と柚希の仲裁。

彩芽の制御。


いつも笑っていたるみねぇの笑顔が、少し減った。


ある会議で、るみねぇが珍しく黙った。


玲香と柚希が言い合う中、いつもなら即座に「まあまあ」と入るはずの彼女が、資料を見たまま動かなかった。


遥室長はそれを見逃さなかった。


「るみねぇ、一人に背負わせすぎただよ」


真帆も淡々と頷く。


「暫定フィールドマネジャーに集中している業務量としては過負荷です。体制の再設計が必要です」


るみねぇは苦笑した。


「あたし、ワンポイントのつもりだったんだけどな」


その言葉に、会議室が少し静かになった。


ノースフロントは、るみねぇの笑顔に甘えすぎていた。


遥室長はその場で大きなことは言わなかった。

だが、水面下で動き始める。


るみねぇを支え、玲香と柚希を活かし、北日本を外へ出せる新しい柱が必要だった。


まだ誰とは言わない。

だが、次の一手は探られ始めていた。


一方、北方管区準備室では、相変わらず胡蝶蘭だけが異様に元気だった。


ノムさんから贈られた祝い花である。

まさにゃんと黒崎茉莉花の二人三脚による管理で、二度目の開花を迎え、今や準備室の象徴のようになっていた。


そこへ再び、真帆がかつて仕えた与党の超大物代議士が訪れる。


元建設族の重鎮は、資料より先に胡蝶蘭を見た。


「ほう……また良く咲かせているな。葛城、黒崎、これは見事だ」


まさにゃんは目を輝かせた。


「センセイ、また褒めてくれはった!」


茉莉花は笑う。


「花の世話でここまで喜ぶ中年、なかなかおらんたい」


代議士は真面目な顔で言う。


「花を枯らさない者は、細部を見る。組織も同じだ」


まさにゃんは感動していた。


「センセイ……ワシ、組織も育てられる男ですか」


真帆が即座に言う。


「そこまでは言われていません」


茉莉花も続ける。


「まさにゃんさんは、とりあえず花担当たい」


「なんでや!」


しかし、その言葉は妙に会議室に刺さった。


花は、環境を整えれば咲く。

水をやりすぎてもいけない。

放置してもいけない。

日差しも風も見なければならない。


ノースフロントも同じだった。


玲香を押さえつけすぎれば華が消える。

柚希を放置すれば後ろに下がる。

彩芽を自由にしすぎれば突っ走る。

乙実を急かせば萎縮する。

紗耶や瑠璃のような支え役も見落としてはいけない。

そして、るみねぇ一人に水やりを任せてはいけない。


まさにゃんは胡蝶蘭の前でしみじみ言った。


「ノースちゃんも、最初はただの祝い花やった。でも世話したら、また咲いた。北方管区も、そのうち咲くやろ」


茉莉花がすぐ返す。


「そのうち、がリアルたい」


るみねぇは少し疲れた顔で笑った。


「でも、今はそれでいいっぺ」


真帆は進捗表を更新した。


ご当地巡業:一周完了

玲香・柚希連携:改善傾向だが不安定

紗耶:潤滑油として有効

乙実・瑠璃:支援役として安定

彩芽:成長著しいが要制御

るみねぇ負荷:高、要対策

次期体制:水面下で検討開始

阿部一族:制御不能

胡蝶蘭:極めて良好


遥室長はそれを見て、小さく息を吐く。


「いったん中締めだよ。ここまで、よくやっただよ」


玲香は腕を組む。


「まだ課題は多いですが、形にはなりましたね」


柚希も頷く。


「完璧じゃねぇけど、根は張り始めたべ」


彩芽は明るく言う。


「次もけっぱるべさ!」


るみねぇは、その言葉に少しだけ笑顔を戻した。


「頼むから、けっぱる前に一回考えろ」


笑いが起こる。


ノースフロントはまだ未完成。

北の花は、まだ半開き。


だが、枯れてはいない。

むしろ、根は確かに張り始めている。


次に必要なのは、新しい支え。

るみねぇの笑顔を戻し、玲香と柚希を活かし、北日本をさらに広げる存在。


ノースフロントは、一度立ち止まる。


そして準備室の入口では、胡蝶蘭だけが今日も堂々と咲いていた。

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