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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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913/1045

杜の都で女王修行――玲香、“自分だけ主役”をやめたら一番目立ってしまう

いわきでのお披露目イベント成功後、ノースフロントは少しだけ動き出した。


だが、新橋の準備室では相変わらず胡蝶蘭だけが絶好調で、組織本体は半開き。玲香と柚希の距離もまだ微妙。るみねぇは笑顔で走り回っているが、顔には少し疲れが出ていた。


そんな中、仙台の佐々木玲香が動いた。


「次は仙台です。北日本の中心都市で、きちんと見せるべきです」


仙台市青葉区。

杜の都と呼ばれる緑豊かな中心地。広瀬川の風、並木の美しさ、青葉城跡から見下ろす街並み、歴史と都会感が同居する東北屈指の華やかな舞台である。


玲香はローカルタレントとしての人脈を使い、地元イベント会社、スポンサー、商店会を一気に動かした。


企画書はすぐに完成した。


ただし、中身がひどかった。


タイトルからして、


「佐々木玲香 presents ノースフロント仙台スペシャル」


出演順トップ、玲香。

トーク、玲香。

写真中央、玲香。

締めの挨拶、玲香。

他県ヒロインは小さく「北日本の仲間たち」。


るみねぇは企画書を閉じた。


「玲香、これノースフロントじゃなくて、玲香の凱旋ショーだっぺ」


玲香は涼しい顔。


「仙台では私が一番知名度があります」


「仙台を盛り上げんのはいい。でも“仙台だけ”にすんなっぺ」


玲香は不満げだったが、るみねぇには逆らえない。


企画は大幅修正。


玲香は仙台代表として全体をつなぐ案内役。

柚希は岩手の民俗と盛岡紹介。

柚葉は秋田・にかほの地元PR。

乙実は庄内の農村と食文化。

紗耶は八戸港と朝市。

瑠璃は函館観光ガイド風MC。

彩芽は北海道代表の元気担当。


玲香は内心むくれていた。


そして当日。


青葉城跡近くの広場には、杜の都らしい爽やかな風が吹いていた。緑の木々、歴史の香り、街の洗練。仙台らしい上品な賑わいが会場を包む。


そこへ、またもや異様な一団が現れた。


にかほ市からの阿部一族応援団である。


前回に続いて貸切バス。

しかも今回は、柚葉の父や兄が勤める世界的電子部品メーカーの仁賀保工場関係者まで乗ってきた。


精密で尖った技術、世界に誇る電子部品、秋田のものづくり魂。

その従業員たちが、なぜか横断幕を持っている。


がんばれ柚葉!

にかほの誇り!

電子部品より熱い応援!


柚葉は顔を赤くした。


「来ねくていいって言ってらのに……ほんと、何やってらんだが……」


彩芽が目を丸くする。


「なまら応援すごいべさ……」


小春がいたら確実に実況していたレベルだった。


イベントは大盛況だった。


玲香は最初こそ「本来なら私が中心なのに」という顔をしていたが、マイクを握ると一瞬でプロの顔になる。


「本日は杜の都・仙台へようこそ。今日は、仙台だけではなく北日本全体の魅力をお届けします」


その言葉に、るみねぇが舞台袖で小さく頷いた。


柚希が岩手の民俗を語ると、観客は静かに聞き入った。

乙実が庄内弁で素朴に話すと、会場が温かくなった。

紗耶の八戸港トークでは魚の話で盛り上がり、瑠璃の函館案内は安定感抜群。

彩芽は「北海道から来たべさ!」と叫んで子どもたちに大人気。


そして柚葉の番になると、阿部一族と工場応援団が爆発した。


「柚葉ぁぁぁ!」

「秋田魂だぁぁ!」

「にかほから来たぞぉぉ!」


柚葉は苦笑しながらも、堂々と挨拶した。


「秋田も、にかほも、北日本の大事な仲間です。仙台の皆さんにも、少しでも知ってもらえたら嬉しいです」


大きな拍手。


玲香はそこで、ふと気づいた。


他のヒロインを紹介すると、観客が喜ぶ。

自分がうまく振ると、相手が輝く。

相手が輝くと、ステージ全体が華やかになる。

そして、全体が盛り上がると、自分の司会ぶりも評価される。


終盤、玲香は自然に柚希へ振った。


「柚希さん、北日本を一つにする上で、大切なことは何だと思いますか?」


柚希は少し驚き、穏やかに答えた。


「一つにする前に、違いをちゃんと知ることだべ。県ごとに違うから、面白いんです」


玲香は小さく頷いた。


「違いがあるから、ノースフロントは面白い。そういうことですね」


会場から拍手が起こった。


イベント後、るみねぇが玲香に声をかけた。


「今日は良かったっぺ」


玲香は少し照れた顔を隠すように言った。


「当然です。私は本番に強いので」


柚希が静かに笑う。


「でも、今日は人の話も聞けてたべ」


玲香はすぐに言い返す。


「あなたも、思ったより話が短くて助かりました」


「……そこですか」


まだ仲良しではない。

だが、少しだけ噛み合った。


新橋の準備室では、真帆が進捗表を更新した。


仙台イベント:成功

玲香・柚希連携:微改善

北方管区進捗:二歩前進

胡蝶蘭:依然として極めて良好


まさにゃんは胡蝶蘭に報告した。


「ノースちゃん、玲香ちゃんも少し咲いたで」


茉莉花が横から言った。


「まだ蕾たい」


それでも、ノースフロントは確かに前へ進んだ。


仙台の女王は、自分だけが輝くより、周りを輝かせた方が自分も目立つことを、ほんの少しだけ学んだのである。

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