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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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徹マンこそ最高戦略会議!?――鬼怒川温泉の夜、ヒロ室は二つの作戦本部に分裂する

温泉ホテルの大宴会場で開催された**「戦隊ヒロイン大集合 in 鬼怒川温泉」**は、予想外の大盛況で幕を閉じた。


プロボウラー兼戦隊ヒロイン・塩原結花のボウリング講座、藤原詩織のご当地ソング、陽菜と美紀の癒やしコンビ、グレースフォースの優雅な観光PR、彩芽・伊織・すみれコーチの湯けむりトリオ漫談、そして隼人補佐官とまさにゃんが安っぽい黒マントで倒されるチープな戦隊ヒロインショー。


何が正解だったのかは分からない。

だが、客は笑った。

旅館関係者は喜んだ。

物産も売れた。

地元PRにもなった。

つまり、成功だった。


そして夕食と温泉を終えた夜、ヒロ室スタッフは旅館の大部屋に集まった。


名目は反省会である。


畳の上に座布団が並び、中央にはお茶と温泉まんじゅう。

遥室長、波田顧問、隼人補佐官、まさにゃん、真帆、琴音、佳乃、理沙、あかね、里奈、菜々子、そして一部ヒロインたちが顔をそろえる。


遥室長が真面目に切り出した。


「では、本日の『戦隊ヒロイン大集合 in 鬼怒川温泉』の反省会を始めるだよ」


波田顧問が湯上がりの顔で言う。


「よかったんじゃねぇか?」


隼人補佐官も頷く。


「観光PR、物産紹介、ステージ、地域交流。全部できました」


まさにゃんも続く。


「客も笑ってたし、旅館の人も喜んでたし、成功やろ」


佳乃が資料を見ながら言う。


「予算執行も想定内です。地酒試飲コーナーで一部怪しい動きはありましたが、自己負担処理済みです」


真帆が淡々とまとめる。


「大きなトラブルなし。地域振興イベントとして成立。以上です」


遥室長は一瞬、拍子抜けした。


「えっ、もう終わり?」


琴音が時計を見る。


「開始から五分ずら」


理沙が苦笑する。


「反省会、シャンシャンですね」


波田顧問は立ち上がった。


「よし、反省会終了!」


遥室長が呆れる。


「軽すぎるだよ……」


だが、全員温泉と夕食でほどよく眠くなっており、誰も反省会の延長を望まなかった。

こうして公式反省会は、五分で終了した。


しかし、その直後だった。


波田顧問、隼人補佐官、まさにゃん、そして太田すみれコーチが別室へ移動し始めた。


まさにゃんが小さな紙を襖に貼る。


戦隊ヒロイン最高戦略会議


遥室長が嫌な予感を覚えて中を覗くと、そこには麻雀卓があった。


波田顧問が袖をまくる。


「さあ、ここからが本番だ」


隼人補佐官は妙に真面目な顔で言う。


「長期戦略には集中力と判断力が必要です」


まさにゃんは牌を混ぜながら笑う。


「徹マンは最高のシミュレーションや」


すみれコーチは腕を鳴らした。


「勝負なら受ける」


遥室長は無言になった。


真帆も無言だった。


そして二人は、ほぼ同時に言った。


「勝手にどうぞ」


襖は静かに閉められた。


一方、遥室長の部屋では、まったく別の集まりが始まっていた。


遥室長、真帆、琴音、佳乃、理沙、あかね、里奈、菜々子といったフロント陣に加え、みのり、ひかり、伊織、沙羅、結花、美紀、エミリー、陽菜、詩織、小春、彩芽、澪などが自然と集まってくる。


最初はただのお茶会だった。


だが、話題はすぐに真面目な方向へ進んだ。


みのりが口を開く。


「今日のような温泉地イベントは、距離感が近い分、ヒロインの素の魅力が出やすいと思います。ただ、観光PRの事前学習はもう少し必要かもしれません」


ひかりも頷く。


「パンフレットを配るだけでなく、各ヒロインが一つずつ地域の魅力を自分の言葉で話せると良いですね」


伊織は真面目に続けた。


「子ども向けの紹介は、もう少し分かりやすい構成にできます。今日の彩芽のように、元気な言葉で入り、最後に説明役が補足する形は効果的でした」


彩芽は目を輝かせる。


「私、役に立ったべか?」


伊織が微笑む。


「うん。子どもたちは彩芽の話をよく聞いていました」


彩芽は満面の笑顔になる。


「なまら嬉しいべさ!」


小春も実践的な意見を出す。


「宴会場ステージは距離が近いんで、客席いじりが効くっす。ただ、音響が弱いと後ろの方に声が届きにくいんで、事前チェックした方がいいっすね」


結花は栃木代表として言う。


「観光PRは、地元ヒロインがいると強いですね。各県で同じ形ができると思います」


沙羅も意外と真面目だった。


「温泉旅館でも衣装と照明は大事よ。安っぽい場所ほど、見せ方で差が出るわ」


美紀は看護学生らしく、


「温泉イベントでは、長湯や飲酒後の入浴に注意する案内も必要だと思います」


と提案する。


真帆はそれをどんどんメモしていく。


佳乃も現実的に言った。


「物産紹介は利益率だけではなく、回転率と話題性も見た方がいいです。澪さんのレモン牛乳紹介のように、ゆるい言葉が刺さる場合もあります」


全員の視線が澪に向く。


澪はまだレモン牛乳を飲んでいた。


「これ、美味しいよ」


沙羅が呆れる。


「あなた、まだ飲んでるの?」


澪は沙羅に一本差し出した。


「飲む?」


沙羅は少し迷って受け取った。


「まあ、そこまで言うなら……」


一口飲む。


沙羅の表情が変わった。


「……これ、美味しいかも」


小春が爆笑する。


「沙羅さん、落ちた!」


澪は平然としている。


「でしょ」


遥室長は、部屋を見渡してしみじみ言った。


「絶対こっちの方が、戦隊ヒロイン最高戦略会議なのら」


一同が声をそろえた。


「絶対そう」


その頃、別室の本家“最高戦略会議”では、ジャラジャラと牌の音が鳴っていた。


波田顧問は上機嫌。

隼人補佐官は理詰めで打とうとしている。

まさにゃんは口だけは達者。

すみれコーチは黙って強い。


序盤から、すみれコーチが圧倒的だった。


まさにゃんが捨てた牌を見て、すみれが静かに言う。


「ロン。当たりぃ~」


「またかいな!」


まさにゃんが頭を抱える。


波田顧問は笑う。


「すみれちゃん、強ぇなぁ」


隼人補佐官は牌を見つめながら、ふと真面目な話を切り出した。


「実は、遥室長とは以前から話しているんですが、ヒロ九、ヒロヒロの成功に続いて、東北以北のテコ入れをしたいと考えています」


空気が少し変わった。


すみれは牌を並べながらも、真剣に聞く。


「確かに、次は北日本に力を入れたいね」


波田顧問も頷く。


「北日本かぁ。最近、ジェネラス・リンクの動きも北の方で怪しいって情報があるぞ」


まさにゃんも一応真面目な顔になる。


「東北支部みたいなん作るんか?」


隼人は続ける。


「中心人物が必要です。仙台の佐々木玲香は能力はありますが、自己主張が強すぎる。盛岡の中野柚希は知的ですが、少し地味かもしれない。秋田県にかほ市の阿部柚葉は魅力も実力もありますが、今は川崎在住です」


すみれは腕を組む。


「確かにねぇ。北日本は広いし、まとめ役は簡単じゃない」


珍しく、本当に戦略会議らしい議題になっていた。


しかし、次の瞬間。


まさにゃんが何気なく牌を切る。


すみれが即座に反応した。


「あっ、ロン。当たりぃ~」


「またワシかい!」


真剣な北日本戦略は、まさにゃんの振り込みによって一時中断された。


波田顧問は腹を抱えて笑う。


「まさにゃん、東北より先に自分の河を見ろよ!」


隼人補佐官は頭を抱える。


「せっかく建設的な話になりかけたのに……」


すみれは得点棒を受け取りながら言う。


「でも、北日本の話は続ける価値あるね」


そこだけは真面目だった。


だが、夜はどんどん深くなっていく。


深夜二時過ぎ。

麻雀部屋からはまだ、ジャラジャラ、ガラガラ、笑い声、まさにゃんの悲鳴が聞こえていた。


遥室長が布団から起き上がる。


「もう、うるさいのらぁ~!」


ついに怒鳴り込んだ。


襖を開けると、四人が一瞬で静まる。


波田顧問「いや、遥ちゃん、これは戦略会議で……」

遥「深夜二時の戦略会議で、なんで『ロン』って聞こえるだよ!」

まさにゃん「高度な意思決定や」

遥「高度な近所迷惑だよ!」


真帆も後ろから冷静に言う。


「明日の朝食時間は厳守です。遅れた場合、自己責任でお願いします」


一度は静かになった。


しかし、遥と真帆が部屋へ戻って数分後。


また、かすかに聞こえてくる。


ジャラ……。

ジャラジャラ……。


遥は無言で立ち上がった。


真帆も立ち上がった。


「もう一度注意しますか?」


遥はため息をつく。


「いや、もういいだよ。真帆さん、温泉行こ」


真帆は一瞬だけ考えた。


「賛成です」


二人は深夜の廊下を静かに歩き、再び温泉へ向かった。


そのころ、遥室長の部屋では、陽菜と詩織、彩芽と小春が、女子中学生の修学旅行の夜のようにはしゃいでいた。


「枕投げしますぅ?」

「ダメですぅ、旅館の備品ですぅ」

「彩芽ちゃん、温泉で泳がなかったの偉いっすね」

「伊織ちゃんとすみれコーチに見張られてたべさ!」


笑い声が小さく弾む。


鬼怒川温泉の夜は、こうして更けていった。


建設的な会議は遥室長の部屋で。

最高戦略会議という名の徹マンは別室で。

澪はレモン牛乳を飲み続け、沙羅はそれを認めてしまい、すみれコーチは圧勝し、まさにゃんは振り込み続ける。


地域振興イベントなのか。

慰安旅行なのか。

戦略会議なのか。

徹マンなのか。


もはや誰にも分からない。


ただ一つ確かなのは、鬼怒川温泉の夜は、ヒロ室らしく、無駄に濃く、そして妙に楽しかったということだった。

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