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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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宴会場の天井が低すぎる!――戦隊ヒロイン大集合 in 鬼怒川温泉、サミットとの違いは誰も知らない

夜の鬼怒川温泉ホテル大宴会場は、すでに妙な熱気に包まれていた。


昼間の足湯、観光PR、物産紹介を終えたヒロ室一行は、いよいよ本日の表向きの本命――**「戦隊ヒロイン大集合 in 鬼怒川温泉」**のステージに臨むことになった。


畳敷きの大宴会場。

壁際には金屏風。

天井には昭和の温泉ホテルらしい大きな照明。

ステージは仮設で、音響はそこそこ、照明はややチープ。だが、それが逆に温泉宴会の味になっていた。


開演前、真帆が小さくつぶやいた。


「ところで、“戦隊ヒロインサミット”と“戦隊ヒロイン大集合”の違いは何ですか?」


会場設営を確認していた隼人補佐官が固まる。


「ええと……サミットは……首脳会議感がありまして」


まさにゃんが助け舟を出す。


「大集合は、集まった感やな」


佳乃が冷たく言う。


「何も説明できていません」


波田顧問は腕を組み、堂々と言った。


「違いなんざ、客が楽しけりゃどうでもいいんだよ」


遥室長が即座に叱る。


「それを運営側が言っちゃだめだよ!」


結局、誰も明確には説明できなかった。

だが、客はそんなことを気にしていない。宿泊客、地元観光関係者、旅館組合、自治体関係者、そしてなぜか昼の物産展からそのまま流れてきた観光客たちが、座布団に座って開演を待っている。


そこへ、月島小春が飛び出した。


「鬼怒川温泉のみなさーん! 湯加減いかがっすかー! 今夜は温泉、観光、物産、そして戦隊ヒロイン! 全部まとめて大集合でございまーす!」


クラブDJのようなノリである。

大宴会場の畳とはまったく噛み合っていない。

だが、そのミスマッチが妙に面白い。


小春は続ける。


「まずは栃木代表! プロボウラー兼戦隊ヒロイン、塩原結花さんによる、ボウリング上達ワンポイントレッスンでーす!」


拍手の中、結花が登場した。


結花は上品に一礼する。


「皆さま、ごきげんよう。塩原結花でございます。今日は鬼怒川温泉にお越しいただき、誠にありがとうございます。では、ボウリングの基本を少しだけお話ししますね」


ここまではお嬢様である。


しかし、次の瞬間、栃木弁がにじむ。


「ボールは無理にぶん投げるんじゃなくて、すーっと転がす感じでいいんだべ。肩に力入れすぎると曲がっちゃうんだわ」


小春がすぐ拾う。


「出ました! お嬢様言葉と栃木弁のハイブリッド!」


結花は少し照れながらも、手首の使い方、助走の歩幅、ピンを狙いすぎないことなどを丁寧に説明する。温泉客の中には本気で頷く中高年もいて、意外と実用的だった。


続いて登場したのは、藤原詩織。


「今夜は、栃木の風景にちなんだ一曲をお届けします」


詩織が歌い始めると、宴会場の空気が変わった。

足利の古い橋、夕暮れの川辺、遠くへ行ってしまった青春を思わせる、どこか切なくて懐かしいメロディー。往年の名曲を思わせる情緒を、詩織は自分の声で丁寧に包んだ。


歌詞の中には、川のほとりで立ち止まる少女、遠くに見える山並み、帰れそうで帰れない思い出がにじむ。

温泉ホテルの大宴会場なのに、一瞬だけ小さな音楽ホールになった。


歌い終えると、会場は大拍手。


波田顧問も感心して言う。


「いやぁ、詩織ちゃんは本物だねぇ」


まさにゃんは横で頷く。


「これは地酒より沁みるわ」


佳乃がすかさず睨む。


「まだ飲む話をしないでください」


次は陽菜と美紀の仲良しコンビ。


陽菜は白いリボンを揺らしながら、少し緊張した顔で登場する。

美紀は看護学生らしく、緊張しつつも陽菜の隣でしっかり支える。


「鬼怒川温泉、すごく気持ちよかったですぅ」


陽菜がそう言うだけで、客席から「かわいい」と声が飛ぶ。


美紀は隣で、


「温泉は疲労回復にもよいですが、長湯しすぎると逆に疲れることもあります。水分補給も忘れないでください」


と真面目に補足する。


小春が笑う。


「陽菜さんが癒やし、美紀さんが健康管理! バランス最高っす!」


続いて、グレースフォースのみのりとひかりが登場した。


二人は並んで一礼し、昼間に続いて知的で優雅な観光PRを行う。

鬼怒川から日光、那須、塩原へ広がる栃木観光の魅力を、落ち着いた声で伝える。二人が話すだけで、宴会場の金屏風まで上品に見えるから不思議だった。


小春は袖で小声。


「畳の宴会場が、急に高級旅館の紹介番組になったっす」


その横で澪は、レモン牛乳を手にして立っていた。


出番である。

だが、特に何もしない。


小春が振る。


「澪さん、栃木物産の感想をどうぞ!」


澪はレモン牛乳の瓶を少し持ち上げて言った。


「これ、好き。川崎ではあんまり見ないから、帰りに買う」


会場がなぜか拍手した。


沙羅は隣に立っていたが、何となくいただけだった。

都会的で綺麗なので画面映えはする。だが、本人は特に積極的には動かない。


小春が言う。


「沙羅さんも何か一言!」


沙羅は少し考えてから、


「温泉ホテルの照明って、意外と肌が綺麗に見えるのね」


とだけ言った。


小春は爆笑した。


「観光PRじゃなくて美容コメント!」


そして、この日のコメディ枠が来た。


高城彩芽、金城伊織、太田すみれコーチの三人である。


小春が煽る。


「北の突撃妹、南の優等生、そして上州の鬼教官! 湯けむりトリオ漫談、いってみましょー!」


彩芽が元気いっぱいにマイクを持つ。


「鬼怒川温泉、なまら気持ちいいべさ! 私、最初は川全部が温泉かと思ったっしょ!」


伊織が即座に優しく訂正する。


「川は普通の川さ。温泉は旅館のお湯さ」


すみれコーチが低く言う。


「彩芽、お前は本当に川で泳ぎそうだから怖い」


彩芽は口を尖らせる。


「まだ泳いでないべさ!」


すみれが即答する。


「“まだ”って言うな」


会場は大笑い。


彩芽はさらに言う。


「でも、温泉ってすごいべさ。足だけ入れても気持ちいいし、全身入ったらもう人間が煮物になるべさ!」


伊織が笑いながら、


「煮物にはならないさ」


すみれが、


「お前が言うと本当に煮えそうで嫌なんだよ」


とツッコむ。


完全にトリオ漫談だった。

彩芽がボケ、伊織が優しく修正し、すみれが叩き落とす。

この三段構えが、宴会場の客に妙に刺さった。


そして最後は、チープな戦隊ヒロインショーである。


安っぽい黒マントを着た敵役が二人、ステージに現れた。

ひとりは隼人補佐官。

もうひとりはまさにゃん。


隼人は妙に真面目な声で言う。


「我ら、鬼怒川温泉の平和を乱す悪の観光妨害団!」


まさにゃんは関西弁丸出しで続ける。


「温泉まんじゅうも湯波も全部買い占めたるでぇ!」


小春が袖で叫ぶ。


「悪事がしょぼい!」


敵の衣装は安い。

動きも安い。

効果音も安い。

だが、一周回って面白かった。


彩芽が突撃しようとする。


「悪い奴らは許さないべさ!」


伊織が止める。


「彩芽、舞台の端に気をつけて」


すみれが言う。


「転んだら敵より恥ずかしいぞ」


グレースフォースが優雅に敵を追い込み、陽菜と美紀が応援し、詩織が妙に壮大な効果音風の歌声を入れる。澪はレモン牛乳を持ったまま、なぜか敵の逃げ道に立っていて、まさにゃんが本気で困る。


「何でそこにおるんや!」


澪は言った。


「なんとなく」


最後は彩芽と伊織が同時に決め、隼人とまさにゃんが大げさに倒れた。


「うわー、鬼怒川温泉の魅力に負けたー!」


あまりにも安い。

だが、客席は大爆笑と拍手。


波田顧問は腹を抱えて笑っている。


「いいじゃねぇか! こういうのでいいんだよ!」


遥室長は呆れながらも、少し笑っていた。


「悔しいけど、盛り上がってるだよ……」


こうして、**「戦隊ヒロイン大集合 in 鬼怒川温泉」**は、あっという間に終了した。


戦隊ヒロインサミットとの違いは、最後まで誰にも説明できなかった。

だが、観光PRも、物産紹介も、歌も、漫談も、チープなショーも、全部妙に噛み合った。


小春が締める。


「温泉も栃木も戦隊ヒロインも、まとめて楽しんでくれましたかー!」


会場は大拍手。


鬼怒川温泉の夜は、予定以上に温かく、予定以上に安っぽく、そして予定以上に楽しかった。

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