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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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だべさとさーが敵を止める!――高城彩芽と金城伊織、渋川資材置き場で北南アタッカー初連携

群馬県渋川市。


赤城山、榛名山、利根川、吾妻川に囲まれ、古くから交通の要衝として栄えた街である。少し足を伸ばせば名湯・伊香保温泉。石段街には湯の香りが漂い、温泉まんじゅうと射的と旅情が似合う。だが、その郊外には、もう使われなくなった廃棄資材置き場もあった。


錆びた鉄骨、積み上げられた廃材、古いコンテナ、崩れかけた仮設フェンス。

昼間でもどこか陰気で、夜になればいかにも怪しい取引が行われそうな場所である。


そこに、ジェネラス・リンクの偽装搬送班が潜んでいるという情報が入った。


任務に参加したのは、高城彩芽、金城伊織、月島小春、水無瀬澪、南部沙羅、柏木理世、館山みのり、そして太田すみれコーチ。


全都道府県からヒロインを輩出した戦隊ヒロインプロジェクトにとって、最北の北海道代表・彩芽と、最南の沖縄代表・伊織が本格的に組む象徴的な任務でもあった。


理世は現場地図を広げ、淡々と説明する。


「今回の統括は私とみのりさんで行います。小春さんが敵を手前側へ追い込み、澪さんと沙羅さんで脇を固めます。最後は伊織さん、すみれコーチ、彩芽さんで制圧してください」


澪はぼんやりと資材置き場を見ていた。


「私、脇を固めるんだ」


沙羅が腕を組む。


「あなた、ちゃんと固められるの?」


澪は少し考えてから言った。


「いるだけならできる」


「それ、役に立ってるのかしら」


理世は真顔で言う。


「澪さんは存在感が薄いため、敵の意識外に置けます。十分有効です」


澪は納得したように頷いた。


「じゃあ、薄くいるね」


小春が吹き出す。


「澪さん、戦術用語が独特すぎますね」


一方、彩芽はすでに前のめりだった。


「私、最後にドーンと行くべさ!」


すみれコーチが即座に肩を押さえる。


「合図まで待て」


「分かってるべさ! 伊織ちゃんが“今だよ”って言うまで、足を地面に接着しとくっしょ!」


伊織は真面目に頷いた。


「はい。それで大丈夫です」


沙羅が小声で言う。


「本当にそれで通じてるのね……」


伊織は、沖縄代表らしい穏やかな声で彩芽に確認した。


「彩芽、敵が見えてもすぐ走らないでね。焦らなくていいさ」


彩芽は胸を張る。


「焦ってないべさ!」


伊織は彩芽の足元を見た。


「でも、もう右足が前に出てるさ」


彩芽は自分の足を見て驚いた。


「ほんとだべさ!」


すみれが頭を抱えた。


「自分の足くらい自分で管理しろ」


作戦開始。


理世とみのりが高台から全体を見て、小春が正面側へ回る。小春は軽いステップで資材の間を抜け、敵の注意を引きつけた。


「はいはい、こっちですよー! 怪しい搬送班の皆さーん、川崎でも渋川でも悪事は映えませんよー!」


敵が小春に反応して動く。


みのりの声がインカムに入った。


「小春さん、右へ二歩。敵が中央へ寄ります」


「了解っす!」


みのりは普段は温厚だが、戦闘になると目が変わる。廃材の配置、敵の視線、退路を冷静に読み、小春の動きを細かく修正していく。


理世も短く指示を出す。


「沙羅さん、左側フェンス前。澪さん、コンテナ横で待機」


沙羅は不満げに言った。


「待機って、地味ね」


澪は素直に言う。


「私は得意」


「あなたと一緒にしないで」


それでも二人は脇を固めた。沙羅は高飛車な声で敵の注意を引き、澪は存在感を消して、逃げ道の先に自然に立つ。


敵は小春に追われ、沙羅を避け、澪を見落としたまま、中央の空き地へ追い込まれていく。


その時、彩芽の目が輝いた。


「今なら行けるべさ!」


伊織が手を横に出す。


「まだ」


「でも、敵がこっち向いてないっしょ!」


「だからまだ。後ろにもう一人いるさ」


彩芽が目を凝らす。


廃材の影から、確かに別の敵が動いた。


「伊織ちゃん、なまら見えてるべさ!」


「見る前に走ったら挟まれるさ」


「私、挟まれるところだったべか!?」


すみれが低く言う。


「いつもだ」


小春が敵の前でわざと派手に手を振る。


「はい、こっちこっち! 北と南の最終便、まもなく発車しまーす!」


敵が苛立つ。


「何なんだこいつらは!」


そこへ、彩芽が思わず叫んだ。


「私たちは戦隊ヒロインだべさ!」


伊織が落ち着いて続ける。


「逃げても無駄さ。もう囲んでる」


敵が二人を見る。


「だべさ……? さ……?」


別の敵も困惑した。


「北なのか南なのか、どっちなんだ!」


彩芽が胸を張る。


「北だべさ!」


伊織が微笑む。


「南さ」


小春が横から叫ぶ。


「そして真ん中で小春ちゃんでーす!」


敵は完全に混乱した。


「何なんだ、この方言の包囲網は!」


伊織はその一瞬を逃さなかった。


「彩芽、今」


彩芽の顔がぱっと明るくなる。


「待ってたべさ!」


雪国の突撃妹が、地面を蹴った。

小柄な体が、廃材の間を一直線に抜ける。だが、今回は闇雲ではない。伊織が示した進路。みのりが読んだ敵の誘導。すみれが後ろで押さえた安全圏。その中を、彩芽は迷わず走った。


「ここまでだべさ!」


敵が反応しようとした瞬間、伊織が反対側から静かに踏み込む。

彩芽の勢いと、伊織の正確さ。北と南のアタッカーが、同時に敵の動きを止めた。


すみれコーチが最後に一歩出る。


「よし、終わりだ」


任務完了。


理世はタブレットを閉じた。


「想定通りです。彩芽さんの突破タイミング、伊織さんの判断、いずれも有効でした」


みのりも穏やかに頷く。


「彩芽さん、今回は合図まで待てましたね」


彩芽は胸を張った。


「私、足を地面に接着してたべさ!」


沙羅が呆れる。


「普通はそれを“待機”って言うのよ」


澪はぼんやり拍手した。


「薄く役に立てたね」


小春が笑う。


「澪さん、それ自己評価として新しいっす」


任務後、一行は伊香保温泉へ移動した。


石段街を見上げながら、小春が楽しげに言う。


「いやー、今日の任務、北のだべさと南のさーで敵が混乱してましたね」


彩芽は不満そうに頬を膨らませる。


「私の札幌弁は標準語だべさ!」


伊織は穏やかに笑う。


「彩芽、それはたぶん違うさ」


「伊織ちゃんまで!?」


すみれは温泉まんじゅうを手に取りながら言った。


「でも、今日は良かった。伊織の合図で彩芽が動けた。これは大きい」


彩芽は嬉しそうに伊織を見る。


「伊織ちゃん、私ちゃんと待てたべか?」


「うん。ちゃんと待てた。突破も良かった」


「なまら嬉しいべさ!」


伊織は少しだけ照れながら言った。


「彩芽の勢いは、使う場所を間違えなければすごく強いです」


彩芽は目を輝かせた。


「つまり、私はドーンの使いどころが大事だべさ!」


理世が静かに頷く。


「かなり雑ですが、結論は合っています」


小春が吹き出す。


「彩芽ちゃん、また雑に正解した!」


沙羅は温泉街を眺めながら、少しだけ笑った。


「北と南、案外いいコンビじゃない」


澪も頷く。


「うん。方言がにぎやかで、敵が困ってた」


すみれは伊織を見た。


「伊織、彩芽をよく止めたな。助かった」


伊織は姿勢を正す。


「彩芽は止めるだけではなく、良いタイミングで出す方が強いと思います」


すみれは感心したように笑う。


「教師向きだな」


彩芽が横から言う。


「伊織先生だべさ!」


伊織は少し困ったように笑った。


「まだ先生ではないさ」


小春が両手を広げる。


「じゃあ今日の結論! 北の突撃妹と南の優等生、コンビ継続でいいんじゃないっすか?」


彩芽は元気よく手を上げる。


「私は賛成だべさ!」


伊織も静かに頷いた。


「私も。彩芽となら、うまくできそうです」


伊香保の石段に、夕方の柔らかい光が差していた。


全都道府県からヒロインを輩出した戦隊ヒロインプロジェクト。

その最北と最南のアタッカーは、まるで違うタイプだった。


雪国の勢い。

南国の理性。

だべさとさー。

ドーンとスッ。


違いすぎるから、かえって噛み合う。


彩芽は伊織の隣で、にっと笑った。


「次もよろしく頼むべさ、伊織ちゃん!」


伊織も笑って返す。


「こちらこそ。次も合図まで待ってね、彩芽」


「……三秒くらいなら!」


すみれが即座に言った。


「短い!」


伊香保温泉の石段街に、全員の笑い声が響いた。

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