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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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北の突撃妹、南の先生見習いに設計される――高城彩芽と金城伊織、だべさ作戦会議で噛み合う日

戦隊ヒロインプロジェクトは、ついに全都道府県からヒロインを輩出するところまでたどり着いた。


北は北海道。

南は沖縄。

日本列島の端から端まで、地域を背負ったヒロインたちが揃ったのである。


その記念すべき節目の後、新橋ヒロ室のミーティングスペースでは、次回任務の作戦会議が開かれていた。


参加者は、高城彩芽、金城伊織、月島小春、水無瀬澪、南部沙羅、柏木理世、館山みのり、そして太田すみれコーチ。


ホワイトボードの前に立つ理世は、淡々と説明する。


「次回任務では、彩芽さんと伊織さんに最終制圧を担当してもらいます」


彩芽は目を輝かせた。


「私が決めるんだべか!?」


伊織は静かに頷く。


「分かりました。任務内容と敵の配置を確認します」


この時点で、二人の差はすでに出ていた。


彩芽は拳を握って前のめり。

伊織は資料を見て、地形と導線を確認している。


同じアタッカータイプ。

だが、中身はまるで違う。


彩芽は、北の突撃妹。

小柄で色白、キュートな札幌弁を全開にしながら、勢いと根性で前へ出る。

考えるより先に足が動く。

すみれコーチに「待て」と言われる回数は、ヒロ室でもトップクラスである。


一方、伊織は沖縄代表の王道ヒロイン。

文武両道、状況判断もでき、将来は地元沖縄で教師を目指している。

攻撃力も高いが、突っ込む前に必ず見る。敵の動き、味方の位置、逃走経路、危険な死角。

同じ前線型でも、理論と観察で戦うタイプだった。


小春がにやにやしながら言う。


「北のドーンと南のスッと、って感じっすね」


彩芽が胸を張る。


「私はドーン担当だべさ!」


沙羅が呆れる。


「自分で認めるのね」


澪はぼんやり言った。


「ドーンって分かりやすいね」


伊織は真面目にメモを取りながら言う。


「彩芽の“ドーン”は、作戦用語としては少し曖昧ですね」


彩芽は驚いた顔をする。


「えっ、ドーンで通じないべか?」


理世は冷静に言う。


「通じません」


彩芽は軽くショックを受けた。


「札幌では通じるっしょ……たぶん」


すみれコーチが腕を組む。


「札幌にも謝れ」


理世は作戦図を指した。


「敵は廃棄資材置き場を拠点にしています。正面から入ると、左右から挟まれる可能性があります。そこで、伊織さんが敵の退路と誘導線を読み、彩芽さんの突破力を使う形にします」


彩芽が手を挙げる。


「つまり、私がドーンだべさ?」


伊織が少し考えてから言った。


「……最終的には、そうです」


小春が吹き出した。


「伊織さん、だいたい認めた!」


みのりは穏やかに微笑む。


「でも、彩芽さんの突破力をどこで使うかが大事ですね」


伊織も頷く。


「はい。彩芽は勢いがあります。それを最初から出すと危ないですが、敵の注意を引きつけた後なら大きな武器になります」


彩芽はきょとんとする。


「伊織ちゃん、それ私のこと褒めてるべか?」


伊織は正直に答えた。


「褒めています。ただ、管理も必要です」


沙羅が笑いをこらえる。


「褒めながら管理されてるわ」


すみれコーチは伊織を見た。


「伊織、彩芽を頼めるか」


その一言に、会議室の空気が少し変わった。


すみれにとって、彩芽は特別だった。

黎明期に共に活動し、殉職した高城彩世の妹。

彩芽の危なっかしさを見るたび、すみれは彩世を思い出す。

だから厳しく叱る。

だから簡単には任せない。


伊織は、その重みを感じ取って静かに姿勢を正した。


「はい。彩芽の長所を殺さずに、危険な方向へ行かないようにします」


すみれは小さく頷いた。


「頼む。こいつは止めるだけだと腐る。でも、好きに走らせると危ない」


彩芽が口を尖らせる。


「私、そんな危なくないべさ」


小春が即答する。


「危ないっす」


澪もぼんやり言う。


「たぶん危ないね」


沙羅まで言う。


「危ないわ」


みのりも少し困った顔で、


「元気がありすぎる時は……少し」


と続けた。


彩芽は周囲を見回して叫ぶ。


「全員一致だべさ!?」


伊織はくすっと笑った。


「でも、それだけ前へ出る力があるということです」


彩芽の顔がぱっと明るくなる。


「伊織ちゃん、やっぱり優しいっしょ!」


「優しいだけではありません。任務中は止める時は止めます」


「はいっ!」


返事だけはいい。

すみれコーチは、その返事を何度も聞いてきたので信用していない顔だった。


作戦会議は続く。


伊織はホワイトボードに簡単な図を書き始めた。


「彩芽は最初、ここで待機。私が敵の左側を押さえて、みのりさんが右側から圧をかけます。敵が中央へ動いたところで、彩芽が一気に突破します」


彩芽は眉間にしわを寄せる。


「つまり、私が我慢して、伊織ちゃんが考えて、みのりさんがギュッとして、最後に私がドーンだべさ?」


会議室が静まる。


理世が少し考える。


「表現は雑ですが、構造は合っています」


小春が笑い転げる。


「彩芽ちゃん、作戦要約の才能あるんすかね。雑だけど伝わる!」


沙羅は呆れながらも認める。


「悔しいけど、分かりやすいわ」


澪も頷く。


「ドーンのタイミングだけ間違えなければ大丈夫そう」


伊織は彩芽に向き直った。


「一番大事なのは、合図まで待つことです」


彩芽は真剣な顔で頷いた。


「待つべさ」


すみれが低く言う。


「本当だな?」


「待つっしょ!」


「何秒待てる?」


「……三秒?」


「短い!」


小春が腹を抱える。


「札幌妹、カップ麺も作れないっす!」


伊織は笑いながらも、柔らかく言った。


「じゃあ、三秒から始めましょう。三秒待てたら、次は五秒。任務では私の合図まで待つ」


彩芽は目を輝かせた。


「伊織ちゃん、先生みたいだべさ!」


「教師を目指していますから」


「なまら向いてるっしょ!」


すみれコーチは、そのやり取りを見て少しだけ安心した。

彩芽は叱られると反発する時がある。

だが、伊織のように真っ直ぐ認めて、理由を説明して、段階的に導く相手には素直だった。


みのりが静かに言う。


「伊織さんは、彩芽さんの勢いを否定していませんね」


理世も頷く。


「そこが有効です。彩芽さんは、抑え込むより運用した方が戦力になります」


沙羅がぼそっと言う。


「兵器みたいな言い方ね」


小春がすかさず乗る。


「北の突撃妹、運用開始っすね」


彩芽はなぜか喜んだ。


「運用されるべさ!」


すみれが頭を抱える。


「喜ぶところじゃない」


会議の終盤、理世は作戦をまとめた。


「今回の要点は、伊織さんが彩芽さんの突破タイミングを管理すること。彩芽さんは合図まで待つこと。みのりさんは補助制圧。澪さんは地元感を出して配置。沙羅さんと小春さんは誘導と支援。すみれコーチは全体監督です」


澪が首をかしげる。


「地元感って何?」


理世は淡々と答える。


「現場に自然にいる感じです」


澪は納得した。


「それならできる」


沙羅が小声で言う。


「澪って、本当に謎の才能があるわね」


彩芽は伊織の隣に立ち、拳を握った。


「伊織ちゃん、私、ちゃんと待つべさ。合図が来たら、なまらドーンと行くっしょ!」


伊織は頷いた。


「うん。彩芽のドーンは、最後に取っておこう」


小春がマイクを持っているわけでもないのに叫ぶ。


「北のドーン、南のスッ、コンビ結成っす!」


すみれが言う。


「ふざけた名前だが、意外と合ってるな」


彩芽はうれしそうに伊織を見る。


「私たち、最北最南アタッカーコンビだべさ!」


伊織も少し照れながら笑った。


「そうですね。北と南で、ちゃんと決めましょう」


その姿を見て、みのりは穏やかに微笑み、理世は作戦書に修正を入れ、沙羅は「騒がしいけど悪くないわ」とつぶやいた。

澪は相変わらずぼんやりしていたが、なぜか場に馴染んでいた。


すみれコーチは、最後に彩芽へ言った。


「彩芽。伊織の言うことを聞け」


「はい!」


「突っ走るな」


「はい!」


「合図まで待て」


「はい!」


「本当に分かってるか?」


彩芽は少し考えた。


「伊織ちゃんが“今だよ”って言うまで、足を地面に接着しとくべさ!」


小春が爆笑する。


「言い方が小学生!」


伊織は真面目に頷いた。


「それでいいです」


すみれは呆れながらも笑った。


「伊織、お前すごいな。彩芽語を翻訳できてる」


伊織は少し照れた。


「教師を目指すなら、相手に合わせて伝えることも大事ですから」


その一言に、会議室は少しだけ温かい空気になった。


全都道府県からヒロインが揃った戦隊ヒロインプロジェクト。

最北の彩芽と、最南の伊織。


二人は同じアタッカーでも、まったく違う。


勢いで前へ出る彩芽。

見て、考えて、正確に動く伊織。


だが、この違いは弱点ではない。

組み合わせれば、強みになる。


作戦会議の最後、彩芽は伊織に向かって元気よく言った。


「伊織ちゃん、私、ちゃんと待つから、合図よろしく頼むべさ!」


伊織は微笑んだ。


「任せて。彩芽が一番強く出られるタイミングで合図します」


小春がにやっと笑う。


「これは次回、面白くなりますね」


すみれコーチも腕を組み、少しだけ目尻を下げた。


「彩芽を扱える若手が出てきたかもしれねえな」


彩芽はよく分かっていないまま胸を張った。


「私、扱われるべさ!」


会議室は笑いに包まれた。


北の突撃妹と、南の優等生。

温度差だらけの二人は、案外いいコンビになりそうだった。

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