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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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最後のピースは南の風 ― 金城伊織、“完成されすぎた新人”のすべて ―

沖縄県出身の金城伊織が加入したことで、ついに戦隊ヒロインプロジェクトは四十七都道府県すべてからヒロインが揃った。

その最後の一人が、よりによって“完成されすぎた新人”だったのだから、ヒロ室フロントがざわつくのも無理はない。


金城伊織、二十歳。

沖縄県那覇市出身。

現在は横浜市鶴見区に在住し、横浜市内の大学へ通う女子大生である。

自称ハマのプリンセス・南部沙羅の同級生にして友人。

そして、沖縄代表の最後のピース。


横浜市鶴見区といえば、沖縄出身者のコミュニティが今も色濃く残る土地だ。

食堂の空気、町の匂い、どこかにじむ“なんくるないさ”の感覚。

都会の真ん中にありながら、少しだけ南国情緒が漂う。

伊織もその空気に自然と馴染み、故郷の面影を感じながら、大学生活を送っている。


「鶴見は、どこか安心するんです」


と伊織は言う。

その言い方からして、もうちゃんとしている。


両親は共に教師。

伊織自身も教師を目指しており、卒業後は沖縄へ戻るつもりだ。

つまり戦隊ヒロイン活動は、大学時代限定の“青春の一ページ”に過ぎない。

だが、その一ページに手を抜く気は一切ない。


「ここで得た経験は、きっと子どもたちにも返せると思うんです」


そんなふうに言えてしまう時点で、もう強い。


見た目もまた、分かりやすく強かった。


ぱっちりとした目元。

彫りの深い南方系の整った顔立ち。

華やかなのに下品さはなく、やや派手なロングヘアですら上品に見える。

いわゆる“典型的な沖縄美人”なのだが、そこに教師志望らしい堂々とした立ち居振る舞いが加わるので、隙がない。


初めて面談室に入ってきた時点で、真帆は心の中で採用を決めていたし、琴音に至っては「10点満点中100点ずら」と早々に言い出しかけていた。

いや、実際に言った。


「……完成度が高すぎません?」


菜々子支配人が面談後にぽつりと言ったほどだ。


そしてその評価は、国家特務戦隊ヒロイン中央研修複合学習センター富士川分室でさらに確信へと変わる。


学科。

満点に近い。


体力測定。

高水準。


接近戦訓練。

そこで伊織は、静かに言った。


「琉球空手を少しやっていました」


“少し”の基準が違った。


教官が手本を見せる前に、伊織は綺麗な型と鋭い踏み込みを見せ、周囲を黙らせた。

動きに無駄がない。

しかも力任せではなく、理にかなっている。


「……何も教えることがないな」


教官の一人が本気で言った。


「いえ、まだまだです」


伊織はすぐに謙遜する。


だが、その“まだまだ”が周囲をさらにざわつかせる。


「これでまだまだって、他の新人どうすればいいの」


陽菜が小声で言う。


「安心してください。陽菜さんには陽菜さんの役割があります」


つばさが静かにフォローした。


「何その優しい言い方」


だが、そんな完成度の高い伊織にも弱点はあった。

しかも、けっこう分かりやすい。


まず一つ目。


何でも一人で背負いすぎる。


資料整理、振り返り、補講、復習、連絡。

頼まれていなくても、気づけば全部引き受けている。


「伊織、それ私もやるよ」


沙羅が言っても、


「ううん、大丈夫。もう少しで終わるから」


と笑って受け流す。


結果、夜遅くまで一人で残る。


「真面目すぎるねぇ」


陽菜が言う。


「真面目っていうか、抱え込みすぎですね」


菜々子が真顔で評価した。


二つ目。


酒豪すぎる。


これは発覚した時、ヒロ室が一番ざわついた弱点だった。


歓迎会の席。

皆がほどほどに飲んでいる中、伊織だけが顔色一つ変えない。


一杯。

二杯。

三杯。


「……まだ飲むの?」


沙羅がさすがに聞く。


「え、これからだよ?」


怖い。


しかも酔って乱れるタイプではない。

むしろやたら丁寧になり、故郷の話と教育論と地域創生を延々語り始める。


「沖縄の離島教育というのはですね――」


「始まったがや」


真央が呆れる。


「止まらないですねぇ」


ひなたも笑う。


最終的に、周囲が先に潰れる。

伊織だけが最後まで姿勢正しく座っている。


強すぎる。


三つ目。


機械に少し弱い。


これがまた、絶妙に可愛い。


学業優秀、接近戦最強、受け答え完璧。

なのにコピー機の前では少しだけ固まる。


「……紙が、出てきません」


「詰まってるだけだがや」


真央が横から直してしまう。


「このアプリ、どうやって開くの?」


「そこからですか?」


美紀が絶句する。


本人は真剣だ。

だから余計に面白い。


「機械だけは、なぜか私に厳しいんです」


と、やたら納得した顔で言うのもまたずるい。


「琉球空手の達人なのに、プリンターには勝てないのね」


陽菜が笑う。


「……たしかに」


伊織はそこは素直に認めた。


つまり金城伊織とは、

完成されすぎた王道ヒロインでありながら、

人に頼るのが少し下手で、

酒にやたら強く、

機械の前だけ少し不器用になる、

そういう人だった。


完璧すぎるように見えて、ちゃんと人間味がある。

強すぎるように見えて、少しだけ危なっかしい。


だからこそ、ヒロ室フロントは彼女に期待する。

最後のピースは、ただ最後の一人ではない。

全国制覇を締めくくるのにふさわしい、南の風のような新人だった。

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