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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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四十七の風、ついに揃う ― ヒロ室、悲願達成の祝賀会は今日も少し騒がしい ―

新橋のヒロ室が、その日ばかりは妙に浮き足立っていた。


理由は簡単である。

沖縄県出身の金城伊織の加入により、ついに四十七都道府県すべてから戦隊ヒロインが揃った。


長かった。

いや、正確には長いだけでなく、だいぶ遠回りも多かった。

途中で広島が暴走し、九州は黒煙を吐くバスで縦断され、埼玉ではふとん屋が妙なセールを打ち続け、群馬では鬼教官が機材を叩き直し、各地で大なり小なり騒ぎがあった。


それでも、揃ったのである。


ヒロ室の中央に置かれた日本地図には、とうとう空白がなかった。

その地図を前に、波田顧問が腕を組む。


「よう、ここまで来たじゃねえか」


べらんめぇ口調はいつも通りだが、少しだけ声が柔らかい。


その隣で遥室長も静かに笑っていた。


「はい。やっと、ですね」


地域創生を掲げて戦隊ヒロインプロジェクトを立ち上げた波田顧問。

その趣旨に本気で賛同し、現場の責任者として泥臭く走り続けてきた遥室長。

この二人にとって、四十七都道府県制覇はただの数字ではなかった。


――だが、そのしみじみした空気を真正面からぶち壊す男が一人いた。


隼人補佐官である。


「これは単なる通過点です!」


妙にいい声で言い切った。


「どこかの物置のCMではありませんが、100人乗っても大丈夫な組織を作ります!」


部屋が一瞬静かになる。


「いや、乗らんでください」


菜々子支配人が即ツッコむ。


「誰がどこに100人乗るんですか」


真帆も呆れる。


「精神論として!」


「精神論ならなおさら危険です」


だが、なぜか拍手は起きる。

そういう男なのである。


祝賀会は、ヒロ室らしく“ちゃんとしているようで全然ちゃんとしていない”形式で始まった。

紙コップのお茶、やけに高そうな和菓子、誰が持ってきたか分からない地方土産、そして妙に多いビデオメッセージ。


まずは王道のトリオから。


美月

「全国制覇や! ここまで来たら次は世界やろ! いや宇宙でもええで!」


彩香

「よう集めたな、ほんまに。ここまで来たらもう意地やな」


綾乃

「ようやっと、やらはりましたなぁ。ここから先の方が、よろしゅうおすえ」


この三人だけで、祝辞なのか前夜祭なのか分からない。


続いて、グレースフォースの二人。


みのり

「全国制覇って、なんだか戦国武将みたいで素敵ですね」


ひかり

「一人ずつ丁寧につないできた結果だと思います。すごいことです」


この二人が言うと、急にちゃんとした組織に見えてくる。


広島からは当然、ノムさんが乱入。


「いやあ、やっぱり広島支部の派手な成功体験が全国展開の礎になりましたね!」


その背後で、のどかが即座に言う。


「なってません」


梨乃も続く。


「いや、ちょっとはなってるかもしれんけど、だいぶノイズが多いです」


みーちゃんは笑いながら手を振り、結衣は「でもお祝いは本当です」ときれいにまとめる。

ヒロヒロは最後までヒロヒロである。


九州勢からは、香澄が熊本弁でしみじみ語り、ひなたが「九州、これからもっと熱くしますよ」と元気よく締める。

大分市佐賀関の首藤凪はまだ加入前だが、すでに“次の戦力”として存在感を放っている。


盛岡の柚希、神戸の玲奈、新潟の美雪、群馬のすみれ、浜松の美音、相模原の陽菜――。

コメントは続々と届く。


陽菜はカメラに向かってにこにこしながら、

「四十七、すごいね。なんか、全部にお友達がいるって感じで嬉しい」

と、ふわっとしたことを言う。

だが、これが不思議と一番沁みた。


「陽菜ちゃん、結局そういう一言が強いのよ」


真帆がぽつりと言う。


そして、埼玉方面からも祝辞が来る。


大宮ふとん店。


「祝・戦隊ヒロイン全国制覇」


と手書きされた、妙に昭和っぽいのぼりが立ち、店先ではなぜかセールが始まっていた。


ただし、この店は


大創業祭

新生活応援フェア

円高差益還元セール

閉店覚悟の大感謝祭

在庫一掃っぽい何か


など、意味不明なセールを年中開催している。

つまり今回もいつものことである。


「結局何のセールなんだよ」


隼人補佐官が画面越しにツッコむ。


「その辺は雰囲気だそうです」


琴音が真顔で答える。


さらに上尾の地域猫、クロじいからもコメントが届く。


「にゃあ」


これを通訳するのは、大宮麗奈の母である。


「“割と凄い”とのことです」


「情報量少なっ!」


菜々子が思わず言う。


だが波田顧問は真面目に頷いた。


「クロじいがそう言うなら大したもんだ」


「基準が分からないです」


そして最後。

騒がしかった祝賀ムードをすっと引き締めるように、遥室長が立ち上がる。


部屋が自然に静かになる。


「四十七都道府県、すべてからヒロインが揃いました」


その言葉には、重みがあった。


「でも、ここが終わりではありません」


遥室長は、まっすぐ前を見た。


「100人、それ以上のヒロインを目指します」


隼人補佐官が横で妙に誇らしげな顔をする。


「地域創生。健全な青少年育成。そして、世界平和」


「大きく出たなぁ」


波田顧問が笑う。


「でも、それくらいでちょうどいいだよ」


遥室長も笑った。


「せっかくここまで来たんですから」


新橋のヒロ室は、その言葉でまた少しだけ拍手に包まれる。


大げさで、騒がしくて、でもちゃんと前を向いている。

それが、戦隊ヒロインプロジェクトだった。


四十七の風は、ついに揃った。

そしてその風は、ここからまた、もっと大きく吹き始めるのだった。

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