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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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ヒロ九クエスト 第38話 片づけの朝に決まる未来 ― 佐賀関、保安の女は“ヒロイン代表”を選ぶ ―

「戦隊ヒロインサミット佐賀関」の翌朝。

前日まであれだけ派手に盛り上がっていた会場は、朝の港風の中で妙に現実的な顔をしていた。


ステージは解体待ち。

柵はまだ残り、案内板は斜めに立ち、電源ケーブルはまるで巨大なうどんのように地面を這っている。

祭りのあと、というより工事現場の朝である。


「……楽しい時間は一瞬ですけど、片づけは現実ですね」


菜々子支配人が腕を組んで言う。


「それがイベントですたい」


香澄がやけに達観した声で返す。


「言い方がベテランすぎます」


つばさが静かに言う。


今回の佐賀関サミットは大規模だった。

太平洋鉱業佐賀関精錬所の全面協力もあり、機材も人員も多い。

当然、撤収作業も大がかりになる。


ヒロ九だけでは足りず、ヒロヒロののどか、梨乃、みーちゃん、結衣まで巻き込まれていた。


「なんで広島支部が鉄骨運んどるんですか」


のどかが言う。


「イベントの縁やて」


真央が適当に返す。


「縁で鉄骨運ばされたくないです」


だが、文句を言いつつも皆やる。

それが戦隊ヒロインプロジェクトである。


ひなたはひたすら運ぶ。


「これ、どこですかー!」


「そっちじゃないです!」


菜々子の指示が飛ぶ。


香澄は全体を見ながら現場を回し、

つばさは搬出ルートの詰まりをほどき、

真央は工具を片づけながら「これ誰がこんな雑にまとめたがや」と一人で怒っている。

美紀は、朝から無理して動きすぎる人がいないか見て回る。


そして陽菜と大翔は――


一応、いる。


「わあ、昨日のステージなくなるんだね」


「なくなる!」


感想係。


「……この二人、いつもながら戦力外の位置にいるのに空気だけ柔らかくするんですよね」


つばさが言う。


「それが強いんです」


菜々子はもう認めていた。


そんな中、一番落ち着いて動いていたのが、太平洋鉱業佐賀関精錬所・保安課勤務の首藤凪だった。


作業員の導線、搬出車両、立入禁止ライン。

イベントが終わっても、最後まで安全確認を怠らない。

その立ち姿は、もはや“イベント協力者”というより完全に現場の統括だった。


「やっぱりこの人、いいですね」


菜々子がぽつりと言う。


「めちゃくちゃいいですねぇ」


ひなたも即答する。


「昨日の時点でほぼ決まってたんじゃないですか?」


つばさが静かに聞く。


菜々子は少しだけ笑った。


「ええ、ほぼ」


撤収が一段落した頃、

菜々子とひなたは、凪に改めて声をかけた。


港の風が少し強い。

会場の向こうでは、お化け煙突が朝日に照らされている。


「少し、お時間いいですか」


菜々子が言う。


凪はすぐに察したようだった。


「……勧誘、ですよね」


「はい」


ひなたがにっこり笑う。


「正式にです」


菜々子はまっすぐ言った。


「ヒロ九に来てください」


凪はすぐには答えない。

視線を少しだけ海の方へ逃がし、それからゆっくり戻した。


「ありがたい話です」


そこまでは、前日と同じだった。


「でも、仕事があります」


保安課。

工場。

現場。

全部、簡単に置いてこれるものではない。


「分かっています」


菜々子は頷く。


「だから、急ぎません」


凪は少し意外そうな顔をした。


「こちらから会社に話を通すこともできます」


「ですが、今の業務をきちんと引き継いで、落ち着いてから来てください」


「……そんな都合のいい話が」


「都合よくするのが支配人の仕事です」


言い切った。


凪の口元が、ほんの少しだけ動く。


だが、まだ決めきれない。

仕事だけではない。

町がある。

この場所への思いがある。


その迷いを見抜いたように、菜々子が最後の一手を出した。


「大分代表で来てください」


凪の表情が、はっきり変わった。


その言葉は強かった。

ただのイベント要員ではない。

ただ引き抜かれるのでもない。


大分の町を背負って来る。

佐賀関も、別府も、由布院も、竹田も、豊後大野も――この遠征で見てきたすべてを背負う。


凪はしばらく黙っていた。


それから小さく息を吐く。


「……その言い方は、ずるいです」


ひなたが笑う。


「効きましたねぇ」


凪は苦笑して、でもちゃんと前を向いて言った。


「分かりました」


「参加します」


首藤凪、ヒロイン加入決定。


その瞬間、一番大きく反応したのは唯奈だった。


「やったべ!!」


全員が振り向く。


唯奈は目を輝かせていた。


「保安管理のスペシャリストが来れば、これから変な機材の被験者にされる時、危ないもんはきっと止めてくれるべ!」


一拍。


「つまり、爆発することが減るべ!!」


真央が吹き出す。


「それはそうだがや!」


陽菜も笑いが止まらない。


「たしかに唯奈ちゃん、よく爆発してるもんね!」


美紀まで肩を震わせている。


「納得感が強すぎます」


つばさが静かに言う。


凪はやや引きながら聞いていた。


「……そういう現場なんですか」


菜々子は遠い目をした。


「たまにです」


「いや、もっと多いがや」


真央が即修正する。


「言わなくていいです!!」


だが、笑い声は止まらなかった。


笑いが落ち着いたあと、凪は改めて頭を下げた。


「落ち着いたら行きます」


「その時は、よろしくお願いします」


菜々子も短く頭を下げる。


「待っています」


ひなたはにっと笑う。


「大分代表、確保ですねぇ」


陽菜は嬉しそうに手を振り、大翔はなぜか敬礼した。


港の風が吹く。

昨日までの祭りの熱気は消えたが、その場所には確かに“次の始まり”があった。


片づけの朝に決まった未来は、思ったより明るかった。

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