ヒロ九クエスト 第21話 声が主役の帰り道!? ― 奥阿蘇、“名物アナウンス消失事件”を笑顔で救え ―
満員御礼のヒロ九トロッコ列車――往路は、見事な大成功で終わった。
阿蘇の絶景に、香澄の匠の案内、真央の雑な解説、そして陽菜と大翔の“天然実況”。
乗客は笑い、驚き、そして満足しきった顔で終点に降りていった。
「いや〜、ほんっとによかイベントやったばい!」
奥阿蘇鉄道の偉い人――香澄とも顔なじみの、人の良さそうなおじさんが、満面の笑みで近づいてくる。
「ありがとうございます。皆さんのおかげです」
菜々子が丁寧に頭を下げる。
そのとき、おじさんが少しだけ困ったように頭をかいた。
「……実はな、もう一個頼みがあってな」
来た。
ヒロ九一同、自然と身構える。
「なんでしょうか」
菜々子が即応する。
おじさんは苦笑しながら言った。
「うちの名物の車内アナウンス担当の車掌さんがおってな――」
「はい」
「今日、休みなんよ」
「……はい?」
「孫の運動会たい」
平和すぎる理由。
一同、微妙な沈黙。
「そりゃ休んでください」
菜々子が真顔で言う。
「でな、復路のトロッコ列車、アナウンスがないんよ」
地味に問題。
阿蘇のトロッコ列車といえば、あの“素朴で味のある車内アナウンス”も含めて観光体験。
それがないとなると、やはり物足りない。
おじさんは申し訳なさそうに続ける。
「せっかくのお客さんばってん、ちょっと寂しかろ?」
菜々子、即決。
「……香澄さん、いけます?」
香澄は一瞬だけ考えて――
にっこり笑った。
「よかですよ」
即答。
「どうせなら」
ひなたが言う。
「みんなでやりません?」
「ええやん、それ!」
真央が食いつく。
「一人より全員の方が面白いがや!」
つばさも静かに頷く。
「役割分担すれば、対応できます」
決定。
ヒロ九全員による“車内アナウンスジャック”発動。
復路。
トロッコ列車が再び走り出す。
ガタン……ゴトン……
「みなさーん、お帰りの列車もよろしくお願いしますね〜」
香澄の声でスタート。
やはり安定感が違う。
「こちら左手に見えますのが、阿蘇の外輪山です」
つばさが丁寧に解説。
「でっかい山だで!」
真央がまとめる。
「雑です!!」
菜々子がツッコむ。
往復同じ流れ。
「今から揺れますよ〜気をつけてくださいね」
美紀が冷静に注意喚起。
「揺れるのも楽しかけんね〜!」
ひなたがフォロー。
「押さんでよ、ゆっくり行こ」
茉莉花がさりげなく統制。
全員がそれぞれの役割でアナウンスに参加。
そして――
やはりこの二人。
「うわああああ!!また来た!!」
陽菜
「すげええええ!!」
大翔
完全に実況席。
「……あの二人、マイクいらなくないですか?」
菜々子が言う。
香澄が笑う。
「一番伝わっとりますね〜」
実際、乗客は笑っていた。
つられて笑顔になる。
カメラを向ける人もいる。
「この列車、最高やね」
「行きも帰りも楽しいわ」
大盛り上がり。
終点に到着。
拍手が起きる。
おじさんと社員たち――十数名が並んで待っていた。
「……いやぁ」
おじさんが大きく息を吐く。
「助かったばい!!」
「こんな賑やかな復路、初めて見た!」
「お客さんもめちゃくちゃ喜んどった!」
社員たちも口々に言う。
「本当にありがとうございました!」
「またぜひお願いします!」
香澄が少し照れながら答える。
「いえいえ、みんなでやったけんですよ」
つばさも静かに頭を下げる。
「いい経験でした」
ひなたが笑う。
「楽しかったですねぇ」
陽菜と大翔はまだ興奮している。
「またやりたい!」
「やる!」
「もう決定事項になってますけど!?」
菜々子がツッコむ。
「……結局、主役は誰だったんですかね」
菜々子がぼそりと言う。
香澄が答える。
「お客さんと、あの二人ですたい」
和やかな空気の中、おじさんがふっと表情を引き締める。
「……実はな」
空気が少し変わる。
「もう一個、相談したかことがあってな」
ヒロ九一同、ピタッと動きを止める。
「まだ続きがあるみたいですねぇ」
つばさが静かに言う。
「対応しましょう」
菜々子が一歩前に出る。
「……内容、聞かせてください」
阿蘇の夕暮れ。
トロッコ列車の余韻が残るホームで――
ヒロ九の“次のクエスト”が、静かに始まろうとしていた。
■締め一言
「楽しいだけじゃ終わらない、それがヒロ九」




