ヒロ九クエスト 第19話 星より目立つ黒煙!? ― 高森町、“夜空イベント”で主役は誰だ ―
阿蘇をあとにしたヒロ九ラッピングバスは、今日も変わらず――いや、やや誇張気味に黒煙を上げながら走っていた。
ゴロロロロ……モクモク……
「……阿蘇の噴煙より主張強くないですか?」
菜々子支配人が淡々と言う。
「負けとらんですたい」
香澄が即答する。
「張り合う対象がおかしいです!!」
やってきたのは高森町。
阿蘇の南に位置するこの町は、豊かな自然に囲まれた静かな山あいの町――だが、それだけではない。
天文台のある“星の町”
空気が澄み、街灯も少なく、夜になれば空いっぱいに星が広がる。
観光客の間では「熊本で一番星がきれいに見える場所」として密かに人気を集めている。
「星、絶対すごいですねぇ」
ひなたが空を見上げる。
「昼間やけどな」
真央がすかさず言う。
「そのツッコミもういいです!」
今回のイベントは、その天文台を舞台にした変わり種。
天体ショー × ヒロ九ステージ
望遠鏡で星を観察しながら、ヒロ九メンバーがトークで盛り上げるという、誰が考えたのかよく分からないが面白そうな企画だった。
「これ、成功したらすごいですよ」
菜々子が真面目に言う。
「失敗したら何やっとるか分からんイベントですねぇ」
ひなたが笑う。
その通り。
夜。
高森の空は、想像以上だった。
「うわぁ……」
香澄が思わず声を漏らす。
満天の星。
まるで空そのものが発光しているような、圧倒的な光の数。
天文台スタッフの解説が始まる。
「こちらが○○星団で――」
観客も真剣に聞き入る。
そこへ――
「はい!ここでヒロ九トークです!」
急な切り替え。
一瞬戸惑う観客。
だが、香澄の柔らかい声がそれをつなぐ。
「星もヒロインも輝いとりますけんね〜」
うまい。
つばさも静かに続く。
「こうして星を見上げる時間って、いいですね」
いいこと言う。
だが真央がぶち壊す。
「でも肉眼が一番だで!」
全部台無し。
「望遠鏡の意味!!」
菜々子がツッコむ。
そんなカオスな空気の中で、真の主役が現れる。
陽菜と大翔だった。
「見て!すごい!」
陽菜が完全にテンションMAX。
望遠鏡を覗いては、
「わぁー!」「きれい!」「もう一回!」
無限ループ。
「すげー!!」
大翔も負けていない。
「もっと見る!」
無限増殖。
二人とも、完全にイベントを忘れている。
「……あの二人が一番楽しんでません?」
菜々子が冷静に言う。
美紀が即答。
「いいことです」
肯定。
茉莉花が苦笑する。
「子ども二人おるやん、もう」
だが不思議なことに――
観客は笑っていた。
つられて笑顔になる。
子どもたちも楽しそうにする。
大人たちも肩の力が抜ける。
「なんか……いいですね」
つばさがぽつりと言う。
計算ではなく、自然なリアクション。
それが一番、人の心を動かす。
結果――
イベントは大成功。
「こんなイベント初めて!」
「星も楽しいし、トークも面白い!」
謎の高評価。
天文台スタッフも満足そうだった。
「またぜひやりましょう」
菜々子が頭を下げる。
「こちらこそ、ありがとうございました」
帰り際。
スタッフたちが手を振る。
観客も笑顔で手を振る。
陽菜と大翔はまだテンションが下がっていない。
「また来たいね!」
「来る!」
ヒロ九バス、発進。
ゴロロロロ……モクモク……
「……やっぱり煙出るんですね」
菜々子が言う。
「星とコラボですたい」
香澄が言い切る。
「絶対違います!!」
笑い声の中、ヒロ九は次の目的地へと向かっていく。
まだ熊本。
だが、その先には新しい出会いと、新しいクエストが待っている。
■一言まとめ
「一番輝いていたのは、星でもヒロインでもなく、はしゃぐ二人だった」




